トヨタWoven City、「独自決済システム」導入へ TOYOTA Pay誕生か?

ウーブン・バイ・トヨタが多彩な人材募集中



出典:Woven City公式Facebookページ(https://www.facebook.com/WovenCity.JP/)

トヨタ子会社のウーブン・バイ・トヨタ (Woven by Toyota)の求人情報から、まだ見ぬウーブン・シティ(Woven City)の一斑が見えてきた。

自動運転開発などモビリティに直結する技術はもちろんとして、決済システムの開発や物流センターの開設に向けた人材なども募集している。独自決済システムとして、「TOYOTA Pay」といった名称のシステムがゼロから開発される可能性もありそうだ。


先端技術開発を担うトヨタ直系子会社としては異色の求人案件だが、Woven City内ではこれらのサービスやインフラを活用した新たな取り組みが行われる……ということだろう。

求人内容とともに、Woven Cityで実施されるだろう取り組みに触れていく。

■決済システム関連

Assistant Manager, Payment, Inventor Success

Woven Inventor Garage部署に所属し、Woven City内で活用する決済サービスの企画・開発・導入から導入後のオペレーションまでを担うアシスタントマネージャー職だ。Woven Inventor Garage部署に所属する。

決済システム・サービスの提供を通じてシティ内の購買データを分析し、都市生活の基盤インフラとしてさまざまな発明家の活動を加速させる支援を行っていく。


決済サービスを個人ユーザーや店舗、インベンターにとってより良いサービスへと進化させていくため、エンジニアチームとシステム構築を検討したり、セキュリティーチームやオペレーションチームと緊密に連携したりしながら業務を遂行する。

小売業者向けの製品やサービス、システム開発における 経験や、モバイル決済やPOSシステム開発などの商品・サービス・システム開発におけるプロジェクトマネジメント経験、基本的なAPI仕様の理解能力などが求められる。

▼Woven by Toyota – Assistant Manager, Payment, Inventor Success
https://jobs.lever.co/woven-by-toyota/eba1b6b2-67e4-4eb8-b447-32636f70212d

シティ内は完全キャッシュレス?

憶測だが、シティ内は完全キャッシュレス決済を目指しているのかもしれない。その上で独自の決済システムを構築すれば、シティ内の金銭の動きを全て把握することができる。そのデータを有効活用し、研究開発活動や生活全般の質向上を図っていくものと思われる。


スマートシティに通じる取り組みと言えそうだ。重要なのは、「〇×ペイ」といった新たな決済システムの構築そのものではなく、決済システム・サービスを通じていかに利用者の利便性や社会の質全般の向上を図っていくか……といった観点なのだろう。

出典:Woven City公式YouTube動画

■ロジスティクス関連

City Operation, Assistant Manager, Logistics Ops

都市運営チームやエンジニアリングチームなどとともに、シティ内における物流サービスや業務の企画・立ち上げを行う物流業務企画チームのアシスタントマネージャー職だ。

シティ内の物流センターの開設をはじめ、各部署のチームと連携しながらシティ外の複数の物流サービスを拡大し、新しい物流サービスの実装を主導する。オペレーションプランニングにおける実務経験などが問われる。

▼Woven by Toyota – City Operation, Assistant Manager, Logistics Ops
https://jobs.lever.co/woven-by-toyota/b6273c4f-58a3-414a-ba36-ec16c54f9119

Project Manager, Customer Development, Smart Logistics Biz&UX

配送ロボットを活用した新しい物流製品の事業企画を担うマネージャー職だ。配送ロボットを活用した新たな物流製品の企画・検証をはじめ、製品のビジネス要件を技術チームに提案する。

また、開発した製品をシティに実装するためのプロジェクトマネジメントや、BtoB顧客のアカウント管理、プロジェクトの事業性設計、販売から納品までのプロジェクトマネジメントなども担う。

▼Woven by Toyota – Project Manager, Customer Development, Smart Logistics Biz&UX
https://jobs.lever.co/woven-by-toyota/08b26c20-18f2-49b0-aa7a-e93522eee23c

ダイバーストリート構想との関係にも注目

物流センターの開設や配送ロボットの効果的な運用などを通じて、ロジスティクス全体のスマート化を図っていくものと思われる。

当初計画では、地下に物流専用道をつくる構想が明かされていた。地下道を通じて無人搬送車・ロボットが各戸に荷物を運ぶ仕組みだ。トヨタのオウンドメディ「トヨタイムズ」では、モノを運ぶ自動運転ロボット「S-Palette」の存在にも触れられていた。

出典:トヨタイムズ公式YouTube動画で登場するS-Palette

トヨタがどこまでの構想を練っているかは不明だが、ただ単純にロボットでラストマイル配送を無人化するだけに留まらないはずだ。

物流センター、倉庫の自動化・無人化をはじめ、荷物の受け渡しの自動化・無人化なども視野に入れているはずだ。配送ロボットとスマートポスト・ロッカーシステムを連動させることで、荷物の受け取り、発送なども自動化するのではないだろうか。

地下道に関しては、Woven Cityでの取り組みとは別に豊田中央研究所と未来創生センター、大林組が、地上の道路と地下の道路が一体となった次世代の道路構想「ダイバーストリート」を発表している。

地下空間は無人搬送車(AGV)などによる高度な物流システムを導入可能としており、地上道路は自動運転における路車間通信(V2I)や走行中給電を可能にする機能を持たせるという。

この構想がそのまま、あるいは何らかの形でWoven Cityに導入される可能性が考えられる。今のところWoven Cityの開発パートナーとして大林組は名を連ねていないが、Woven Cityの第1期工事は大林組が担っている。

地下道による物流システムは、次世代道路の在り方を示す一端となるのかもしれない。

【参考】ダイバーストリート構想については「「トヨタの街」に、地上と地下が一体の次世代道路!?自動運転も想定」も参照。

■居住者関連

Tenant Relations (Resident), Assistant Manager, City Operation

入居から退去に至るまで、居住者のライフサイクルの各段階においてエクスペリエンスを向上させるための対策を策定する。

居住者は、先進的な製品やサービスを体験し、発明者とコミュニケーションをとることで発明者にインスピレーションを与え、その開発速度を加速させる上で重要な役割を果たす。これをコミットメントとして評価し、シティが掲げるビジョン「すべての人の幸福」の達成を支援する。

どうすればより良い住環境となるか、またどうすれば実証参加意欲が増すか、発明者と仲良くできるかなど、賃貸借契約や住民間イベントなどのツールやサービスを使ってデザインする。

居住者のためのコミュニケーションハブとなる役割で、例として、物流の管理や情報セッション、賃貸契約書の署名と記入、物件ツアーの開催などが挙げられている。

また、顧客満足度やPoC参加率向上のための企画・イベントを担当するほか、居住者の退去フェーズにおいても、居住者との「卒業生ネットワーク」を形成してシティへの継続的な関与の維持を図る。

▼Woven by Toyota – Tenant Relations (Resident), Assistant Manager, City Operation
https://jobs.lever.co/woven-by-toyota/5c326a36-bd6e-4cf8-9aab-f4ee1fa97ab5

一般居住者も立派なパートナー

ウーブンシティでは、その場で実施される実証やサービスを含め、まちそのものが生活空間として高評価されてこそ本物の価値が生まれる。

その価値を見定める重要な役割を担うのが一般居住者だ。シティには、トヨタ関係者をはじめ開発パートナーとなる企業や発明家、そこで生み出される製品やサービスを体験する一般人が居住する予定だ。

入居の前段階で一般居住者には実証への積極参加が条件として付されるものと思われるが、義務としてではなく好奇心を持って前向きに参加してもらったほうがより良いフィードバックを得ることができる。

また、居住者、開発者ともに定期的に入れ替わるものと思われるが、シティを離れた後も関わりを持てるような関係性の構築も重要だ。

一般居住者とのパートナーシップをどのように形成し、どのように実証効果を高めていくかが問われる職種となりそうだ。

出典:トヨタプレスリリース

■電力関連

Power Middle Office, Assistant Manager, Regional Power Supply Operation, City Operationなど

電力関連では、電気事業法に基づいてシティ内の電力安定供給計画をサポートする役割や、電力調達計画の策定や電力調達交渉を行う役割、安定した電力供給の計画と実行を担う役割など、複数職種が募集されている。

エネルギー面では水素の活用が計画されているが、これを含め再生可能エネルギーでどのようなポートフォリオを組み、持続可能な社会づくりを進めていくかが問われる職種となりそうだ。

▼Woven by Toyota – Power Middle Office, Assistant Manager, Regional Power Supply Operation, City Operation
https://jobs.lever.co/woven-by-toyota/c46dd8d0-8dae-421a-b3fc-e33c1122f86e

■都市設計関連

Urban & Building Planning Project Management, Assistant Manager

シティが掲げるコンセプト(Living Laboratory、Human-Centered City、Ever-Evolving City)実現に向け、都市計画や都市デザイン、建築計画、建築など各プロジェクトを推進するためのチーム方針の提示や体制構築を行うマネジメント役だ。

都市開発や建築、不動産などの知見が試される職種となりそうだ。都市再開発を行うディベロッパー的なイメージだが、既成概念にとらわれない都市設計が可能であり、非常にやりがいのある仕事となりそうだ。

▼Woven by Toyota – Urban & Building Planning Project Management, Assistant Manager
https://jobs.lever.co/woven-by-toyota/e0d825ed-82e1-4523-80ac-529a174a8c24

■Woven Cityの概要

研究領域は12分野、決済や物流にも注力

静岡県裾野市で建設が進められているWoven Cityは、自動運転をはじめとしたモビリティのテストコースとしての役割を軸に、社会や人の生活にイノベーションをもたらすようなさまざまな取り組みを行う「実証都市」として設計される。

研究者には、トヨタの最先端のハードウェアとソフトウェアの技術を活用した開発サポートをはじめ、多様なデータや潜在的ユーザーからのフィードバックを取り入れた研究など、共創活動のサポートも提供する。

2024年に第一期工事を完了し、2025年に一部の実証を開始する予定で、初期は居住者360人規模のまちとなる。

シティが掲げる研究領域は、モビリティ・トランスポーテーション、エネルギー、物流、農業・食品、IoT(データ・ICTインフラ)、ヘルスケア、教育、エンターテインメント・小売り・アーティスト、金融・決済、セーフティ・セキュリティ、スマートホーム、住宅・オフィスの12分野にまたがる。

求人案件で触れた決済や物流、エネルギーも研究領域に設定されているのだ。基本的には外部の研究者がこれらの分野の開発を担うこととなるが、各研究をサポートするため、あるいはトヨタとして拡張していくためにもトヨタ自らが専門的な技術や知識を養っていかなければならない。

Woven Cityは都市を一から設計し、さまざまな取り組みを進めていく大きな挑戦だ。ゆえに多種多様な人材が求められているのだろう。

【参考】Woven Cityの動向については「トヨタWoven City、準備整い次第「訪問者」を募集へ」も参照。

■【まとめ】Woven Cityはトヨタの未来の象徴?

ウーブン・バイ・トヨタは自動運転技術やソフトウェアプラットフォーム「Arene」開発などを手掛ける先鋭集団だが、今後はより多彩な人材が集まる組織となりそうだ。

これは、モビリティカンパニーへの変革を進めるトヨタの象徴とも言える姿ではないだろうか。クルマ作りに終始する時代は終わった。これまで築き上げてきた分厚い殻を破り、次の時代に向けてどのように脱皮していくのか。

そのトヨタの未来の姿が垣間見えるのがWoven Cityだ。実証都市としての位置づけのみならず、トヨタの未来の姿を象徴する取り組みとして、引き続き注目したい。

【参考】関連記事としては「Woven City、ついに入居開始へ!トヨタ関係者から段階的に」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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