自動運転のリーダー職、日米で「年収格差3倍」状態 トヨタでさえ800万円台

類似ポジションをGM Cruiseと比較



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

トヨタ自動車は、自動運転MaaS向け新規ビジネスの企画・開発のチームリーダーを担う人材を募集している。予定年収は765万~891万円とされており、最終的な給与は経験・能力を考慮の上で決定すると説明されている。

将来の有望性に注目が集まる自動運転領域。Googleなどの海外の世界的大手企業を含めて同領域でビジネスを展開する企業が増える中、トヨタも優秀な人材の確保で自動運転ビジネスの強化に努めているものとみられる。


ただし、詳しくは後述するが、765万~891万円という年収は、海外の自動運転企業と比べるとかなり低いと言わざるを得ない。たとえばGM傘下のCruiseの場合、似たようなポジションを年収2,000万〜3,000万円ほどで募集している。ざっくり3倍ほどの差がある。

■トヨタが提唱する「Autono-MaaS

トヨタは自動運転MaaS(Autono-MaaS)実現に向け、車両だけでなく周辺モビリティサービスの構築が不可欠と考えている。

「Autono-MaaS」は、「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)」を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語だ。

MaaSを自動車や飛行機、電車などあらゆる交通手段による移動サービスとして捉え、検索から決済までを効率化しシームレスな移動を実現しようというビジョンで、その中核を担うのが自動運転車だとしている。


2018年1月開催の技術見本市「CES 2018」で、MaaS専用次世代EV(電気自動車)「e-Palette Concept(イーパレット・コンセプト)」が初公開された。その際のプレスカンファレンスのスピーチで豊田章男前社長が「イーパレットはAutono-MaaSビジネスアプリケーションに対するトヨタのビジョンを示した一例」と述べており、これがAutono-MaaSというワードの初出と思われる。

■業務内容や勤務地、年収は?

今回募集している求人の業務内容は「Autono-MaaS車両の事業面でのプロジェクトマネージメント」のほか、「社外とAutono-MaaS車両の新規運用・プロセス構築」、「Autono-MaaS車両の新規事業化に向けた企画」となっている。

配属されるのは、2021年に新設された組織となる。顧客にスピーディに価値提供や貢献していくことを目指し、車載器やクラウド開発の垣根を越えて、ソフトウェア・ファースト、UX・ファーストで開発を進めているという。

応募には、事業・商品・サービス企画の実務経験や、新しい領域にも積極的に取り組み問題解決に向けて主体的に行動できる能力、社内外のさまざまな関係者との円滑なコミュニケーション能力、顧客に貢献するサービスの創出や実現に強い意欲、チャレンジ精神を有することが必須となっている。また歓迎条件として、新規ビジネス・事業企画経験や、企画から立ち上げまでのプロジェクトリーダー経験、ビジネスレベルの英語力が挙げられている。

勤務地は、愛知県の名古屋オフィスと東京都文京区の東京本社の2拠点で、出社やリモートワークを活用してコミュニケーションを取っているという。転勤の可能性もあるようだ。予定年収は冒頭触れた通り、765万~891万円となっている。

■米Cruiseは年収2,000〜3,000万円ほどで人材を募集

一方、アメリカの自動運転企業はどれくらいの想定年収で人材を募集しているのだろうか。GM傘下で自動運転タクシー事業を展開(※現在はサービス提供を停止中)しているCruiseを例に、トヨタの今回の求人と比較的似た募集案件を紹介しよう。

Cruiseは、サービス需要予測の策定や企業としての目標達成に向けて取り組む「Senior Lifecycle Analyst」の場合、年収レンジは11万5,400〜16万9,700ドルとなっている。日本円にすると1,749万〜2,572万円だ。

▼Senior Lifecycle Analyst II
https://getcruise.com/careers/jobs/2649465/

ビジネスデザインやプロダクト評価などを担当する「Staff Business Product Manager」の場合は、年収レンジは14万800〜20万7,100ドルとなっている。日本円にすると2,134万〜3,138万円だ。

▼Staff Business Product Manager
https://getcruise.com/careers/jobs/2706417/

予定年収が765万~891万円の今回のトヨタの案件とは、ざっくり3倍ほどの差があるのが現状だ。

■海外の自動運転企業に挑戦する選択肢も

今回のトヨタの求人案件は、ビジネス領域や技術領域など、事業の垣根を越えて多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まる部門での勤務となる。日本を代表する企業であるトヨタが力を入れている、自動運転・MaaS領域に携わることができるチャンスと言える。

一方、より自分のスキル・ポテンシャルを高く買ってくれる企業を探すなら、Cruiseのような海外企業の門を叩くことに挑戦するのも、十分に価値があることと言える。英語能力なども求められてくるが、しっかりと成果を残せたとすれば、日本企業で働くよりはリッチになれるはずだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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