国土交通省は「空港制限区域内における自動走行の実現に向けた検討委員会」を設立し、2018年から同委員会を開催している。
2023年10月5日に第15回委員会が開催され、「令和4、5年度 自動運転トーイングトラクター実証実験 結果・計画」が発表された。その中で、日本航空(JAL)は自動運転トーイングトラクターのレベル4に向けた実証実験について報告している。
そもそもトーイングトラクターとは、コンテナを牽引(けんいん)する車両のことで、報告によると、人間介入頻度が大幅に減少したという。具体的には前回の実証と比べ、人間介入頻度は「4.5キロに1回」から「12.2キロに1回」まで減ったようだ。
▼令和4、5年度 自動運転トーイングトラクター実証実験 結果・計画
https://www.mlit.go.jp:8088/koku/content/001634473.pdf
■検討委員会の趣旨
国内の空港では、2030年の訪日旅客6,000万人の目標達成に向けて積極的な機能強化が進められている一方、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足が顕在化しており、供給面での制約が懸念されている。そのため航空局は、官民一体となってAI(人工知能)や自動運転技術などを活用する取り組みを推進する「航空イノベーション推進官民連絡会」を2018年1月に立ち上げた。
特に労働力不足が深刻化している地上支援業務については、省力化・自動化が必要になってきていることから、同局は2025年までに空港内における自動運転レベル4相当の導入を目標にしている。そこで、空港の制限区域内において自動運転の実証実験を実施することにした。
実証実験に係る実施内容の検討及び結果の評価について、委員から意見を聴取して実証実験を的確に実施するとともに、導入に向けた課題を抽出することを目的として設置されたのが、「空港制限区域内における自動走行の実現に向けた検討委員会」だ。
■JALの2回の実証実験内容
JALは、2022年度における実証実験の実施内容を発表した。使用したのは自律運転EVけん引車(トーイングトラクター)「TractEasy」だ。LiDARやGPSアンテナ、IMU(慣性計測装置)を搭載しており、成田国際空港第2旅客ターミナル本館南ソーティング〜サテライトターミナルソーティング間の約1.2キロを、自動運転レベル3相当で走行した。
第1回の実証実験は2022年4〜6月に行われ、総走行回数は196往復、総走行時間33時間48分、総走行距離約235キロであった。添乗者による介入回数は52回で、4.5キロに1回介入するという割合になる。1走行あたりだと0.26回だ。
第2回の実証実験は、2023年2〜3月に行われた。総走行回数は71.5往復、総走行時間10時間25分、総走行距離約86キロであった。添乗者による介入回数は7回で、12.2キロに1回、1走行あたりでは0.09回という計算になる。
添乗者による介入というのは、緊急停止操作による走行停止を指す。第2回の実証実験では、介入割合の大幅削減に成功したということになる。そのほか、交差点における他車両の認識範囲やカーブ走行時の速度も第1回を上回り、目標値を達成している。
■トーイングトラクターとは?
冒頭でも触れたが、トーイングトラクターとは貨物を搭載したコンテナをけん引する車両のことで、手荷物などを運ぶ役割を果たす。
トーイングトラクターの自動化については、全日本空輸(ANA)も2022年度に豊田自動織機製の自動運転トーイングトラクターを用いて羽田空港の制限区域内で実証実験を行うなど、各社が技術開発に取り組んでいる状況だ。
なお今回の第15回委員会では、丸紅とZMPの合弁会社であるAiROによる羽田空港での自動運転トーイングトラクターの実証実験計画も発表されており、2023年11月にレベル3で自動走行する予定となっている。
■レベル4での実用化に期待
JALは2022年度の実証実験総括として、第2回はソフトウェアのバージョンアップにより、全体的に走行品質の向上ができているが、レベル4実現に向けては、実用性を踏まえさらなる向上が求められるとしている。交通量の多い時間帯や夜間、雨天時などの走行の精度についてのようだ。
また交差点における他車両の認識範囲やカーブ走行時の速度、交差点での一旦停止後の再加速については、設定していた目標を達成することができた。今後は安定走行の実現に向けてさらに安全品質の向上を行っていくという。
同社は2022年6月に、日本の航空会社で初めて手荷物搬送用の自動運転トーイングトラクターを導入し、成田国際空港で運用を開始している。特定条件下において無人運転が可能になるレベル4での運用はいつになるか。今後の進捗にも注目だ。
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【参考】関連記事としては「自動運転と空港」も参照。