デジタル人材育成機関である株式会社デジタルカレッジKAGA(本社:石川県加賀市/代表者:齋藤和紀)は2023年11月7日までに、ゴミ収集車の自動運転化に向けた地域課題プロジェクト「KAGA ecomobi」のコンセプトデザインを公開した。
まさに「自動運転ゴミ収集車」とも言えそうなモビリティデザインとなっており、注目を集めそうだ。
■地方のゴミ収集問題を自動運転で解決!
デジタルカレッジKAGAは、運営コンソーシアムや事務局機能を持つ複合的な組織で、2022年4月に設立された。「世界情勢と最先端技術を俯瞰し、新産業の担い手となるデジタル人財が育つ環境を継続的に提供する 以って北陸の地に新たな社会の礎を築く」を理念に、スタートアッププログラムなどを提供している。
KAGA ecomobiは、地方におけるゴミ収集についての課題を自動運転車などの最先端技術によって解決していくという発想から始まったプロジェクトだ。
現在、過疎化により地域のゴミ回収所は統廃合され、住民は遠くの回収所までゴミを運ぶ必要が出てきている。この状況は人口減少と高齢化により悪化していくと考えられている。そこで、デジタルカレッジKAGAはこの問題を自動運転技術で解決することを考えている。自動運転車が巡回して回収するという内容だ。
■「KAGA ecomobi」コンセプトデザインとは?
今回発表されたコンセプトデザインによると、ゴミ収集の自動化は「エコモビ車両」と「インテリジェントゴミ箱」、「ゴミ箱の搬送システム」、「車両基地」、「アプリ&指令システム」により実現する予定のようだ。
エコモビ車両は、軽自動車の規格に収まるサイズを想定している。自動運転ソフトウェア開発企業の英Oxa(旧:Oxbotica)などによる市販の自動運転車をカスタマイズして利用するようだ。また車輪などは、降雪地帯や悪路を走行することを想定しているという。
インテリジェントゴミ箱は、各住宅内で使用し、そのままエコモビに搭載可能な仕組みになっている。住宅内で充電を行い、「見守りサービス」にも利用する。電力はエコモビが回収し、走行に利用するという。
エコモビ車両、インテリジェントゴミ箱ともに、降雪時や夜間、視覚障がい者にも見やすい視認性に配慮した配色となっている。
またゴミの搬送システムは、ゴミ集積所にて規格統一化されたゴミ箱を自動搬送する仕組みになっており、規格統一された定形物だけを乗せることによる効率化が見込まれる。住民は、「ゴミを詰める作業」や「集積所まで持ち込む労働」から解放されることを想定しているという。
車両基地は、長期的には旧北鉄電車線の線路・車両基地跡地を利用することを想定している。また、この基地が各地域間をつなぐインフラとなり、過疎地における夜間巡回点検を行うことなども予定しているようだ。
■2024年から実証実験を開始予定
今後のスケジュールとして、2024年に実証実験を開始、2028年から加賀市内で限定的に運用を開始する予定だ。2030年からは車両の製造・運行に係る各種許可の取得や産業用地の取得などを行い、同市内での自動運転車組み立てを目標にしている。
実証実験については、最初は昭和40年代に全線廃止となった初旧北陸鉄道加南線を活用するようだ。かつて生活鉄道軌道があったことで、元々の生活圏をつなげていることや道幅が広いこと、駅跡に基地を作りやすいことなど多くの利点があるという。
なおインテリジェントゴミ箱の自動搬送に関する特許と、降雪地域特有の道路設備を自動運転への活用に関する特許を現在申請中だ。
■地域住民の負担軽減に大きく寄与
地方では、公共交通機関の減少などによる移動の問題が深刻化しており、その解決のため自動運転車を用いた取り組みを行っている自治体が増えてきた。しかし、特に過疎地でのゴミ収集問題のため自動運転を活用するといった今回のようなプロジェクトは、ほぼ耳にしたことがない。
デジタルカレッジKAGAのこのプロジェクトが実用化された場合、地域住民の負担軽減に大きく寄与しそうだ。まずは来年の実証実験の成果に注目したい。
【参考】関連記事としては「「ゴミ収集」を自動運転化!?国が支援を決めた2つの新事業」も参照。