Amazon子会社、自動運転事業で人員16%増 強気姿勢で株主反発か

レイオフ相次ぐ中、我が道をいく



出典:Zooxプレスリリース

インフレに伴う世界的な経済不安もあり、2022年は自動運転業界でもレイオフ(一時解雇)のニュースが飛び交った。しかし、ある企業は最近、むしろ従業員を増員したという。米Amazon傘下の自動運転開発企業Zoox(ズークス)だ。

米メディアによれば、16%の増員を行ったという。これによりZooxの従業員数は、2023年始めの1,900人から約2,200人へと増えたようだ。


自動運転事業で各社が人員を減らしたのは、経済不安の中で事業コストの削減圧力をかけている各社の株主の存在も一つの理由となっている。そんな中で我が道をいくZoox。Zoox並びに親会社のAmazonの株主からは反発も起きそうだが、果たして…。

■実証実験の実施・拡大に積極的
出典:Zoox公式サイト

Zooxに関しては、実証実験の実施・拡大などのニュースが今年に入って相次いで報道されている。

Zooxは自動運転車の公道での走行テストに注力しており、2023年2月から開始したカリフォルニア州フォスターシティに続き、6月16日からはネバダ州ラスベガスの公道で自動運転タクシー(ロボタクシー)の走行テストを開始した。

ネバダ州での走行テストは、同州自動車局からドライバーレスのテスト許可を得たことにより可能になった。実証ではハンドルもペダルも無い自動運転車が使用され、同社によれば、こうしたハンドルもペダルも無い自動運転車がネバダ州の公道で走行するのは初のことであるという。


まずはラスベガスの南西地域にある同社の施設がある周辺1マイル(約1.6キロ)を周回するルートから開始するが、今後数カ月でエリアを拡大する予定のようだ。実証では特に、歩行者などや周囲のクルマと混在する道路での走行が可能かどうかなどについて検証する。

ちなみに使用する車両は4人乗りで、最高時速は35マイル(約56キロ)となっている。複数台の自動運転車が稼働し、まずはZooxの従業員の移動に利用するようだ。

■ラスベガスの拠点を大幅拡張で事業加速へ

このように積極的に事業拡大に努めるZooxは、自動運転のテスト車両のサポートのため、2020年にラスベガスにオフィスと車両基地を開設している。さらに現在は、自動運転事業の拡大のため、約1万8,000平方メートルの敷地にオフィスや倉庫を増設しているという。

今回増員した従業員のうち、ラスベガスで採用した人材の多くは、車両のメンテナンスと充電を担当する「mission readiness(ミッション準備)」チームでの勤務になるようだ。要は実証実験の拡大のための要員といえる。


なおネバダ州は、カリフォルニア州よりも自動運転車の走行テストの実施のハードルがはるかに容易な州だという。ネバダ州での走行テストは、全ての自動運転レベルで公道走行が可能で、陸運局での車両のテストや認証は必要ないとされている。

WaymoCruiseに続く有償サービス展開企業に?

ZooxはAmazonの独立系子会社として、2014年に設立された。2023年4月には、同社開発のドライバーレスのロボタクシー専用車両がカリフォルニア州の公道で乗客を乗せての走行に成功したことを発表している。同社によると、ロボタクシー専用として設計・製造された車両が乗客を乗せて公道を走行したのは世界初のことだという。

ちなみに同社のロボタクシーは「pod」(ポッド型)などと呼ばれ、対面式のモビリティとなっている。

ドライバーレスのロボタクシーに関しては、すでに米Google系Waymoや米GM傘下のCruise
が有償でのサービスを開始しているが、この2社に続くのはZooxになるのか。勢いを増す同社に今後も注目していきたい。

▼Zoox公式サイト
https://www.zoox.com/

【参考】関連記事としては「Amazon子会社Zoox、「自動運転専用」ポッドで乗客送迎に成功」を参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事