日本円にして時価総額1兆円の自動運転業界における超有力ベンチャーが、事業を閉鎖することがこのほど明らかになった。米Argo AIだ。米メディアが報じた。
同社はフォードとVW(フォルクスワーゲン)から資金調達を行っていたが、追加支援を受けられなくなったことが事業閉鎖の直接の原因のようだ。約2,000人と推定される従業員の多くは、フォードかVWへの転職か、もしくは解雇されるという。
Argo AIが解体される形となるが、フォードとVWという大手OEM(完成車メーカー)側からみれば、自動運転開発を外部企業(=ここでいうArgo AI)に任せるのではなく、Argo AIの従業員を取り込むことで内製化につながりそうだ。
ちなみにArgo AIに関しては、すでに2022年初めから一部従業員が解雇されていたことが知られている。米調査会社のCBインサイツによれば、同社の時価総額は2022年10月30日時点で72億5,000万ドル(約1兆円)となっている。
【参考】関連記事としては「自動運転新興の米Argo AI、150人解雇 従業員の7〜8%に相当か」も参照。
■投資に見合う結果が得られずに・・・
フォードは2017年に、Argo AIへ5年間で10億ドル投資することを発表した。同社はArgo AIの株式の過半数を取得したものの、子会社化することはせずに、Argo AIが独立して活動ができるようにしていた。VWも2020年にArgo AIへ26億ドルを出資することを発表した。
報道によれば、2021年が期限だったロボットタクシー製品の商用展開にArgo AIが間に合わなかったため、責任を負わせる流れとなったようだ。
ちなみにVWに関しては、同社の自動運転ソフトウェア子会社であるCARIADに注力することを述べている。同社CEO(最高経営責任者)のOliver Bloom氏は声明で、「我々の目標は、可能な限り早い時期に最も強力な機能を顧客に提供すること」と述べている。
■IPOもうわさにとどまり、実施されず
Argo AIはGoogleの自動運転車開発チーム出身であるブライアン・サレスキー氏と、Uber Technologiesの自動運転開発部門においてリーダーだったピーター・ランダー氏が2016年に設立した。同社は、業界ではかなりの有力ベンチャーと見られていた。
2021年7月に配車サービス大手の米Lyftのプラットフォームで、自動運転車を年内に導入する計画を発表した。2021年後半にマイアミで導入、2022年にオースティンで導入とサービスを拡大していくという計画だ。
さらに、米小売大手ウォルマートとのパートナーシップのもとで、自動運転車によるラストマイル配送サービスをマイアミやオースティン、テキサス、ワシントンDCで開始することも発表していた。
IPO(新規株式公開)のうわさもあったが、IPOはうわさにとどまり、実施されなかった。
【参考】関連記事としては「Argo AI、自動運転の年表」も参照。
■同じ道を辿る新興企業が相次ぐのか
順調に歩んできたように見えたArgo AIが事業閉鎖することになった。米国では最近、景気後退(リセッション)の到来を危惧する声も強まっており、各社がベンチャーやスタートアップへの支援を絞れば、Argo AIと同じような道を辿る新興企業が相次ぐとも限らない。
【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧(2022年最新版)」も参照。