ビジネス視点で「自動運転」や「MaaS」を解説する書籍『自動運転&MaaSビジネス参入ガイド〜周辺ビジネスから事業参入まで』が、いよいよ2020年11月5日に翔泳社から出版される。
自動運転の技術そのものや技術の活用方法、将来の産業像についての書籍はこれまでもあったが、この新著では具体的にどのように自動運転領域やMaaS領域に参入するかに焦点を当て、具体的なビジネス事例などを紹介しつつさまざまなヒントを読者に提供している。
この記事では、著者である下山哲平氏(株式会社ストロボ・代表取締役)へのインタビュー内容をお届けする。下山氏は自動運転専門メディア「自動運転ラボ」の発行人であり、変わりゆく自動車業界を最前線で見つめてきた。新著はそうした知見をまとめた一冊だ。
▼自動運転&MaaSビジネス参入ガイド 周辺ビジネスから事業参入まで|下山 哲平(自動運転ラボ発行人)|本|通販|Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4798163090
記事の目次
■ほぼすべての産業が「関係者」になりえる「自動運転ビジネス」
Q 書籍の想定読者層は?出版に際しての著者としての思いは?
ターゲット層は、まさに「自動運転ビジネス」にかかわる可能性のあるすべての方です。そしてこの「自動運転ビジネス」とは、「車が自動で動くようになった時にその上に乗るMaaSなどさまざまなサービスのことも含めたもの」のことです。
自動運転は「移動」「交通」がテーマとしてとらえられがちですが、実際には「小売」「金融」「医療」「広告」「エンターテインメント」などあらゆるサービス業をも巻き込むもので、ほぼすべての産業が自動運転の「関係者」になりえるとも言えます。
そういう巨大産業になる可能性を秘めており、かつ、自動運転を活用することで既存の巨大産業においても「ゲームチェンジャー」になれる可能性がある・・・という点が、この「自動運転ビジネス」に熱狂すべき大きな理由と思っています。
ちなみにこうした「自動運転ビジネス」市場は近い将来、ゆうに700兆円を超える規模に急拡大していくとも言われています。2020年は、新型コロナウィルスの影響で「コンタクトレス」という視点から自動運転への注目がさらに高まり、ビジネスチャンスが拡大したと言えます。
この書籍では「自動運転ビジネス」の全容について、最新動向を交えて分かりやすく解説しており、「自動運転ビジネス」を強力に推進するビジネスパーソンが1人でも多く生まれることを期待しております。
Q 自動運転ビジネスに対する日本企業の「嗅覚」についてどうお考えか?
そのような観点では正直捉えている「業界人」が少ない印象です。やはり自動車業界の企業や交通事業者など、直接的に自動運転の「波」が押し寄せる業界の方が中心に熱量があがってきている印象です。もちろん、自動車業界の企業や交通事業者の間で熱量があがってきていること自体は非常に良いことではあります。
ただ一方で、やはり自動車業界や交通業界以外では、まだまだ先の話という風にとらえられがちです。私が定義している「自動運転ビジネス」はあくまでも「車が自動で動くようになったときに生まれるビジネス」であるため、長期的戦略投資という話になるので、仕方ない部分もあると感じています。
ただ、先んじてゲームチェンジャーとなって新しい大きな産業や市場を形成し、その後のトッププレーヤーになる会社は、周りから鼻で笑われるような時代からビジネスを創ってきた会社です。このことは歴史が証明しています。
例えばアマゾン。今では時価総額100兆円を超えるアマゾンですが、当初、本をEC(電子商取引)で売り始めたころ、本をインターネットでは買う人なんていない、と多くの人が否定的でしたよね。
■考え方のコツや感覚をつかんで頂くきっかけに
Q 読者にはどう書籍を役立ててもらいたいか?
自動運転ビジネスというのは正解がなく、各社各様に、未来を想像して取り組むものです。今回の書籍では少しでもイマジネーションがわきやすいように、自動運転ビジネスを考えるうえでの切り口など、具体例を多く挙げるように心掛けましたが、その各論を読んでもらいたいだけではありません。
「自動運転ビジネスというのはこういう考え方やこういう切り口があるんだ」といった、考え方のコツや感覚をつかんで頂くきっかけにしていただければ、と考えています。ですから、今から自動運転ビジネスにチャレンジしようと思っているすべてのビジネスパーソンに読んで頂きたいと考えています。
そして特に、ハードウェアではなく、自動運転のうえにのっかる「サービス」を描こうとしている方に読んでもらいたいという思いがあります。
Q 本著の巻頭インタビューでは、自動運転EV「VISION-S」を発表したソニーと、Intelグループのイスラエル企業Mobileyeから話を聞いています。巻頭インタビューを通じて感じたことは?
ソニーは「センシングデバイス」「AI」「エンタメ・コンテンツ」「クラウド」「セキュリティ」などでも強みがある企業です。そんなソニーへのインタビューでは、自社の強みを活かすための自動運転との長期的な関わり方を模索するために、自動運転車を実際に作ってしまうという意思決定をしたことが見事だと感じました。
この動きはまさに、 「車が自動で動くようになった時にその上に乗るMaaSなどさまざまなサービスのことも含めたもの」 といった「自動運転ビジネス」のマーケットの可能性を理解しているからこそのものです。そしてソニーは、もっとも先行投資性が高く、その金額的規模も、難易度的規模も大きな、「車両をまずは作ってしまう」という離れ業をやってのけたのです。
合理的な試算や投資回収計画など、「大企業的な意思決定材料」を揃えないといけないような状態であれば、このプロジェクトは進まないことは容易に想像がつきます。そういう意味で、誰よりも自動運転ビジネスの未来を明るくとらえているんだな、と感じました。
またモービルアイ社につきましては技術力もさることながら、自動運転ビジネスの一つとしてデータビジネスも見据えて早くから動き出し、結果、データビジネス(=プラットフォーマー)として、世界的に強固なポジションを持つインテル社傘下に入る意思決定をしている、という点でも先見性を感じました。
ソニーとモービルアイ、いずれも自動運転ビジネスの「巨大さ」を理解している企業が、結果として、自動運転ビジネスで勝っていけるようになるんだと、改めて実感いたしました。
【参考】関連記事としては「ソニーの自動運転車「VISION-S」の担当役員に直撃インタビュー!新刊『自動運転&MaaSビジネス参入ガイド』」も参照。
ソニーの自動運転車「VISION-S」の担当役員に直撃インタビュー!新刊『自動運転&MaaSビジネス参入ガイド』 https://t.co/51JmjoYKcm @jidountenlab #自動運転 #MaaS #インタビュー
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 24, 2020
■ライフスタイルがどう変わるかイメージを
Q 自動運転時代には具体的にはどのような変化が起きるのか?
レベル4以上の自動運転車では人は運転から完全に解放されることから、それまで運転していた時間が「可処分時間」へと変わり、移動時間は好きなことに集中できるようになります。そのため車内という快適なプライベート空間で映画や音楽などの有料コンテンツやショッピングなどを楽しめるようになり、こうした消費活動だけでも大きな市場になることは容易に想像できるでしょう。
また、無人ビークルが荷物を配送したり、自動運転タクシーが人を運んだりするようになると、配送や移動のコストは今の1/10以下になるといわれています。今では生鮮食品のネギを1本だけ配送するというのはコストに見合わないですが、配送コストが1/10以下になればこうしたビジネスもあり得ます。
自動運転ビジネスは、これまで存在しなかったまったく新しいビジネスなので、アイデアや柔軟な発想力が重要な鍵を握ります。自動運転が実用化されると社会がどう変わるか、ライフスタイルがどう変わるかをイメージできれば、いくらでもアイデアは思いつくはずです。
■出版日は2020年11月5日、書籍版と電子版で発売
書籍『自動運転&MaaSビジネス参入ガイド』は304ページで税込2,420円。Amazon.comでは以下のURLから購入予約が可能となっている。出版日は2020年11月5日で、書籍版と電子版で発売される。
▼自動運転&MaaSビジネス参入ガイド 周辺ビジネスから事業参入まで|下山 哲平(自動運転ラボ発行人)|本|通販|Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4798163090
【参考】関連記事としては「『自動運転&MaaSビジネス参入ガイド』予約受付スタート!自動運転ラボ発行人・下山哲平による最新刊」も参照。