世界の3000社以上と契約した自動運転業界屈指の英傑が来日した。2010年に起業し、研究開発向け自動運転車の提供で世界的に注目を集める米オートノマスタッフ(Autonomoustuff)社のロバート・ハンブリック最高経営責任者(CEO)だ。
同氏は2018年9月5日から7日にかけて開催された名古屋オートモーティブワールドに合わせて来日。オートノマスタッフ社は日本の半導体・技術商社の株式会社マクニカ(本社:神奈川県横浜市/代表取締役社長:中島潔)と代理店契約を結んでおり、イベント中はマクニカ社のブースでオートノマスタッフ社の車両も展示した。
オートノマスタッフ社は欧州や中国、日本での事業展開を加速しており、月100台以上のペースで自動運転実証車両のプラットフォームを提供している。来日したハンブリックCEOが語る来日の理由や自社事業、マクニカ社との協業、今後の戦略とは?
■マクニカとの日本での活動強化をPR
マクニカとオートノマスタッフは2018年2月に代理店契約を締結したことを発表している。その目的の一つが、オートノマスタッフの自動運転プラットフォーム搭載実証車両を販売開始することだった。世界の各国市場で事業展開を行うロバート・ハンブリックCEOが今回来日したのは、日本でのPRをより一層高める目的もある。
ロバート・ハンブリックCEO (名古屋オートモーティブワールドと併催された)自動運転EXPOでの講演も来日の一つの理由ですが、日本のパートナーであるマクニカがオートノマスタッフ社の手がけた自動運転実証車両の展示をしており、パートナーとの日本での活動強化をPRすることも一つの理由です。
オートノマスタッフ社は2010年に設立しました。我々は自動運転に必要な技術を世界中から集め、ソフトウェアのインテグレーションのサービスや、自動運転を可能にするプラットフォームを提供してきました。
現在約3000社のお客様とお仕事をさせていただいており、北米や欧州、中国に展開しています。日本ではパートナーのマクニカと今後注力していきます。自動運転の開発を進めているお客様が成功するためのお手伝いをすることが、我々のミッションです。
■オートノマスタッフ社が手掛ける自動運転プラットフォームの概要
ロバート・ハンブリックCEOが語るように、オートノマスタッフ社は2010年に設立し、センサー開発事業を足掛かりに研究開発向けの自動運転車両の生産も手掛け始めた。同社の自動運転プラットフォームはアメリカや日本の大手半導体企業などでも採用された実績があり、世界から注目を集める。
ロバート・ハンブリックCEO 我々の製品の中で最も有名なものとして、自動運転実証車両のプラットフォームがあります。全てのセンサーや自動運転に必要なコンポーネントをインテグレーションしたプラットフォームとして、月100台以上ペースで提供しています。
我々の強みはグローバル展開をしていることと、その中で自動車だけでなく、鉱業や農業、ミリタリ、アカデミックなど世界のさまざまな主要産業においての経験があることです。
また安全性においても色々な産業での経験は非常に重要で、世界中に展開されている数多くのシステムを扱うことにより、多くの教訓を得られています。そして安全性について常に改善を行っています。
■センサー、半導体、大学…日本のティアフォーとも連携
オートノマスタッフは、オープンソースの自動運転ソフトウェア(OS)「Autoware」を開発する名古屋大学発スタートアップの株式会社ティアフォーとも連携し、自動運転関連事業を進めている。各社が自社で自動運転プラットフォームを構築するのは非常に困難なため、そのソリューションを提供している。
ロバート・ハンブリックCEO 我々はエコシステムを形成し、お客様の開発のお手伝いをさせていただいております。センサー会社や半導体メーカー、ソフトウェアベンダー、大学といった色々な自動運転関連のテクノロジーパートナーがおり、お客様が必要な技術やアルゴリズムを提供もしくは紹介することが可能です。
日本のティアフォーとも緊密に連携をしています。これによりお客様が自社の開発をより早く進めることができます。
【参考】マクニカ、オートノマスタッフ、ティアフォーの3社の取り組みについては「マクニカ、自動運転ベンチャーのティアフォーと代理店契約 Autoware搭載AIパイロットを米オートノマスタッフ車両に搭載・販売|自動運転ラボ」も参照。
自動運転の研究については、従来、お客様が自社でプラットフォームを構築する場合、必要な部品を集め、インテグレーションに数年を要していましたが、我々の提供するプラットフォームにより、我々はそれを数週間で提供させていただいております。そのため、お客様はDay1より自社の開発にリソースを注力することができます
これらにより業界全体の開発の加速に貢献できていると思いますし、それが最終的には自動運転の搭載率の向上につながると思います。
■自動運転のワンストップセンター・マクニカと協業する理由
マクニカは自動運転に必要なソリューションとサービスをワンストップで提供できる商社としても、その存在感を高めている。
ロバート・ハンブリックCEO マクニカは日本において既によく知られています。そして彼らにはレバレッジが効くリソースがあります。営業活動をサポートするインフラストラクチャもあります。また日本の顧客との関係もいろいろなレイヤーでの付き合いがあり、幅広いカスタマーベースを持っています。我々とは違う顧客層をカバーすることにより相乗効果があると思っています。
自社だけでは非常に時間がかかります。しかし自動運転開発サポートには時間が一番重要です。そのため、マクニカとパートナーシップを締結することにしました。
彼ら(マクニカ)は継続的にソリューションの提供をしています。また我々をサポートしてくれています。日本での我々の活動は始まったばかりですが、営業活動は加速していくものと思います。マクニカと日本の自動運転開発市場をリードする存在になりたいと考えています。
【参考】マクニカは2018年8月、AI(人工知能)システムの研究開発を手掛ける東京大学発スタートアップの株式会社コーピーと自動運転車の車載カメラを使った認識システムの研究開発に共同で取り組んでいくことも発表している。詳しくは「東大発AIスタートアップのコーピー、自動運転開発で半導体商社マクニカと協業スタート|自動運転ラボ」を参照。
■「技術の進歩はとても早い」「素早く行動する必要がある」
自動運転業界における技術は日々進化し、各企業がデファクトスタンダードの位置を目指して開発競争に参戦している。オートノマスタッフはさまざまな業種とのさまざまなレベルでの協業により、最先端技術を自社に集約していることも強みだ。
ロバート・ハンブリックCEO 我々は現在自動運転の領域のお客様、センサー、半導体、研究機関、OEM(相手先ブランドによる生産)などのリーディングカンパニーと、ハードウェアやソフトウェア、インテグレーションなど様々なレベルで協業しています。
そのため、それぞれの領域の最先端のテクノロジーや技術トレンドが集約されます。我が社が自動運転開発に関する情報のハブとなり、我が社がお客様同士を繋ぐプラットフォームにもなるのです。
また自動運転には膨大なデータが必要となります。マクニカが持っている自動運転実証車両には12個のカメラを有していますが、1日の走行でも同車両に搭載している80テラバイトのストレージでは十分ではありません。つまりユーザーはこの膨大なデータの取扱を考慮する必要があるのです。お客様の新しい課題です。
我々はこのデータの領域においても、現在持っているノウハウでデータ解析やデータ分析に対して、お客様に新たな提案をすることができると思っています。
今後、自動運転は自動車のみならず様々な領域で、研究開発が進むと考えています。モビリティにおいては研究開発や技術の進歩は続きます。我々はそこに対して常に新たな技術を提供していきます。多くの産業は成熟していますが、自動運転が様々な影響を与え、そこに新しいビジネスモデルが必要になります。技術の進歩はとても早く、全ての企業が素早く行動する必要があるのです。
我々はお客様に常に最先端の技術を提供し続けます。
■自動運転業界注目のタッグ、今後の展開にも期待
世界有数の研究開発向け自動運転車両の提供企業としてその存在感を高め続けているオートノマスタッフ。日本の屈指の「自動運転商社」としての顔も持ち、連携網を一層拡大しているマクニカ。今回のロバート・ハンブリックCEOの来日は日本での両社の協業関係の深化を印象づけた。
オートノマスタッフとマクニカのタッグによる自動運転関連事業は今後どういった展開を見せるのか。その動向から目が離せない。
技術商社マクニカ、自動運転システムの販売開始 名古屋大学スタートアップのティアフォーと代理店契約|自動運転ラボ https://t.co/pFDtdwpEMj @jidountenlab #マクニカ #ティアフォー #自動運転
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 10, 2018