【インタビュー】自動運転エンジニア最前線 ティアフォーで最先端OS「Autoware」開発、業種の枠越え転身

関谷英爾氏と船岡健司氏にインタビュー



米国、欧州、日本、中国…。世界の大手自動車メーカーや研究機関が、いま競い合うように自動運転車の実証実験に各国で取り組んでいる。その実証実験を陰ながら支えている企業が実は日本にある。名古屋大学発ベンチャーの株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:武田一哉)だ。


同社が開発する自動運転ソフトウェア(OS)「Autoware」はオープンソースとして誰でも利用することができ、既に100を超える世界の企業・団体の自動運転車両に搭載されている。今も多くの問い合わせがあり、導入件数は右肩上がりに増える一方だ。

そんなAutowareの開発に日々取り組んでいるのが、ティアフォーのエンジニア陣だ。

車を自動運転で動かす技術にはこの現代においてまだ雛形が無く、開発にはプログラミング力のほか高い応用力、そして想像力も求められる。いったいどんな人物がAutowareをここまで世界から注目を浴びるソフトウェアに磨き上げたのだろうか。

自動運転ラボはティアフォーの東京事務所に潜入。いままさに開発の最前線で活躍する2人のエンジニアに独占インタビューした。彼らが語ったその最先端ソフトウェア開発にかける思いとは。


■関谷英爾氏:転職でティアフォーへ「よりハイレベルな技術開発を」

大阪大学出身の関谷英爾氏(28)。ディー・エヌ・エー(DeNA)からティアフォーに転職し、AI(人工知能)やデータ収集基盤などの開発に取り組む。

Q ティアフォーに転職した理由や現在取り組まれていること、自動運転技術に携われるという魅力について教えて下さい。

A(関谷氏) 2014年にDeNAに入社して、当初は分析基盤のシステム運用や開発に携わっていました。その後、AI(人工知能)系の開発に携わることになり、4年目からはオートモーティブ事業部でAI関連を担当しました。


1年ほどしてもっと技術の幅を広げたいと思うようになり、ティアフォーに転職しました。現在はデータ収集基盤の開発、機械学習(マシーンラーニング)の活用などにも携わっています。

ティアフォーは大学と密な関係で開発を進めていますので、最新の研究情報などがとても早く手に入ります。大学の研究者とも一緒に仕事をしていることから、各地の学会などで発表された内容などもすぐ入ってきます。

現在社内ではプロトタイプの実装をスピード感を持って進め、課題解決をどんどん進めています。社内にはハードウェア開発に携わっていた人から、クラウドやITの先端技術を持っている人まで幅広い人材がおり、こうした少数精鋭のメンバーで議論ができる環境も魅力です。

自動運転においては高い安全性能やセキュリティ性、高速処理などが求められます。こうしたハイレベルの技術開発に携わることはとても刺激的です。

■船岡健司氏:大手半導体企業からの転身「社会課題を解決へ」

半導体大手の東芝でソフトウェア開発に10年携わっていた船岡健司氏(36)。エンジニアとして最先端の技術開発に携わるという側面だけではなく、社会課題の解決につながるという自動運転の持つ可能性を口にした。

Q 転職した経緯や現在の担当領域、自動運転技術の将来性などをどう考えているかなどを聞かせて下さい。

A(船岡氏) 2008年に東芝に入社し、ソフトウェア自動並列化の開発に携わっていました。5年ほど経ったときにソリッド・ステート・ドライブ(SSD)の開発に移りまして、そこでは量産製品の開発に5年ほど取り組みました。

ティアフォーには今年4月に入社し、Autowareの取りまとめを担当しています。ミッションは国内だけでなく、海外パートナーと一緒にAutoware全体のプロジェクトを成功させることです。ティアフォーはアメリカへも進出し、イギリスにもアプローチするなど、世界にどんどん挑んでいます。今までの事業を続けるだけではなく、果敢なチャレンジをする会社です。

【参考】ティアフォー社はシリコンバレーに進出し、現地のエイペックス社とAutowareを使った実証実験などを進めている。英アームの半導体向けソフト開発を推進する業界団体「リナロ」にも加盟し、Autowareの一層の発展にも取り組んでいる。詳しくは「自動運転OS開発のティアフォー「シリコンバレーへ」 Autowareの業界団体設立へ 創業者の加藤真平・東京大学准教授に聞く|自動運転ラボ」も参照。

エンジニアとしてはやはり新しいものに挑戦したいという思いがあります。すぐには市場が形成されなくても、数年先に確実に市場として形成されますので、先手先手で取り組んでいきたいと強く思います。そして、ティアフォーにはプロフェッショナルが集結しています。若手エンジニアから最新の技術を学べる開発環境にも魅力を感じています。

自動運転については「運転しなくていい」ということ自体がとても素晴らしいと思います。運転するのが怖かったり、得意ではなかったりする人たちのほか、地方のお年寄りの方々にも自動運転車を活用してほしいです。自動運転を実現させることによって地方経済が活性化し、日本全体を盛り上げ、社会により貢献できます。自動運転は技術的な側面がフォーカスされがちですが、社会的課題を解決するためのツールとして非常に有益なものだと考えています。

■真剣に熱心に、そして楽しそうな議論

ティアフォーの東京事務所は2018年10月に拡張し、一層Autowareの開発スピードを速める。インタビューをしている最中、事務所内ではエンジニアの人たちがデスクに集まり、自動運転技術について真剣に熱心に、かつ楽しそうに議論している光景も印象的だった。

自動運転技術の開発に携わるということは、自動車業界の最前線で活躍しているということに等しい。ティアフォーのエンジニア陣がAutowareをさらに発展させ、自動運転社会の実現の日がどんどん近づいていくことが楽しみだ。


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