日産の自動運転技術まとめ!ProPILOT(プロパイロット)の機能は?

「技術の日産」の最新動向を紹介

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出典:日産ニュースルーム

国内自動車メーカーの中ではいち早く自動運転サービス実証を開始し、レベル2+に相当するハンズオフ機能も実装した日産自動車。経営面に揺らぎが生じているものの、先進技術に対する開発姿勢は失われておらず、ADASのさらなる進化やレベル4実装に向けた取り組みは着実に進められている。

自動運転技術をはじめとした先進技術の実用化により、業界における復権・シェア拡大も夢ではない。自動運転分野における日産の技術・動向をまとめてみた。

<記事の更新情報>
・2025年10月29日:ProPILOTとProPILOT2の技術をそれぞれ追記
・2024年3月6日:Easy Rideに関する取り組みを追記
・2023年9月29日:欧州日産の自動運転に関する取り組みを追記
・2023年8月10日:各技術の搭載車種などについて追記
・2018年9月21日:記事初稿を公開

■ProPILOT

高速道路で安定したレベル2を実現

出典:日産公式サイト

ProPILOT(プロパイロット)は、高速道路においてハンドルやアクセル・ブレーキ操作を強力に支援するレベル2技術だ。

ステアリングスイッチの操作で簡単にシステムを起動・設定でき、ドライバーが設定した車速内で先行車両との車間距離を一定に保つよう制御すると同時に、車線中央を走行するようステアリング操作を支援する。

最大時速120キロまで対応しており、長時間の巡航走行や渋滞走行にも対応している。停車しても再スタートできる。

2025年10月現在、アリア、リーフ、サクラ、ノートオーラ、ノート、エクストレイル、キックス、セレナ、ルークス、デイズに設定されている。

■ProPILOT 2.0

国産初のハンズオフを実現

ProPILOT 2.0は、高速道路で同一車線内ハンズオフが可能なナビ連動ルート走行を実現したプロパイロットの進化バージョンだ。

ナビゲーションシステムで目的地を設定し、高速道路の本線に合流するとナビ連動ルート走行を開始できる。ルート走行を開始すると、追い越しや分岐なども含めシステムがルート上にある高速道路の出口までの走行を支援し、ドライバーが常に前方に注意して周囲の状況を監視している限り同一車線内におけるハンズオフ運転が可能になる。

国内自動車メーカーで初のハンズオフ技術で、国内の自家用車として初めて高精度3次元地図を導入している点もポイントだ。

2019年発売のスカイラインに初搭載された。2025年10月現在、スカイラインを除くアリア、リーフ、セレナに設定されている。

▼日産プロパイロット2.0特設ページ
https://www.nissan.co.jp/BRAND/PROPILOT2/

■その他の開発技術

次世代ProPILOT:Wayveの技術で最高クラスのADASを開発

日産は、次世代ProPILOTを2027年度にも国内市販車への実装を開始する計画を立てている。

自動運転開発を手掛ける英Wayveの「Wayve AI Driver」ソフトウェアと次世代LiDARによる「Ground Truth Perception」(後述)技術を活用し、熟練ドライバーのような運転支援技術の新しい基準を提案するという。

開発試作車には、11個のカメラと5個のレーダーセンサー、1個の次世代LiDARセンサーが搭載されている。センサーフュージョンにより認識能力を格段に高め、その上でWayveのエンドツーエンド自動運転システムにより、市街地などのより複雑な交通環境を含む一般道においても熟練ドライバーのような運転を可能にする。

現状、最高度のレベル2として開発を進めているようだが、レベル3への進化も期待できそうだ。

Brain-to-Vehicle:脳波測定による運転支援技術

脳波測定技術を活用し、ドライバーの次の運転操作のタイミングやドライバーが持つ違和感を把握することで、ドライバーがサポートに気付くことなく、クルマを思い通りにコントロールしている感覚が高まる。自動運転時においては、システムが自動で行う操作が違和感のないものになる。

脳の行動準備電位を検出し、ドライバーがハンドルやアクセルペダルなどの操作を開始する前にシステムが操作を開始することで、ドライバーの反応の遅れをカバーし、ドライバーが思い通りの運転をできるようサポートする。

行動準備電位のリアルタイム検出のほか、ドライバーが思い描いた運転と実際に行われている運転が違うと感じた際のエラー関連電位(Error Related Potential)の計測も可能にしている。

Invisible-to-Visible(I2V):ドライバーに見えないものを可視化

Invisible-to-Visible(I2V)は、リアル(現実)とバーチャル(仮想)の世界を融合した3Dインターフェースを通じて、建物の裏などドライバーに見えないものを可視化する技術だ。

車内外のセンサーが収集した情報とクラウド上のデータを統合することで、クルマの周囲の状況に留まらず、前方の状況を予測したり、通常では見ることができない建物の裏側やカーブの先の状況などをドライバーの視野に投影したりすることを可能にする。

さらには、仮想世界「メタバース」とドライバーや乗員がつながることで、離れた場所にいる家族や友人などをAR(拡張現実)アバターとして車室内に表現し、一緒にドライブしたり運転をサポートしたりすることなども可能になるという。

車両が走行している交通環境を後述する「SAM (Seamless Autonomous Mobility) 」、車両の周囲を「プロパイロット」、車内環境を車室内センサーがリアルタイムに把握し、I2Vに不可欠な全方位の情報収集を行う。

日産独自のOmni-Sensing(オムニ・センシング)技術によって収集した現実世界の大規模な情報をリアルタイムにデジタル空間に取り込み、デジタル・ツインを形成する仕組みだ。

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SAM:事故などの道路情報を蓄積し、全てのクルマと共有

シームレス・オートノーマス・モビリティ(SAM)は、NASAと共同開発を進めているコネクテッド技術で、すべての無人運転車両が事故や路上の障害など不測の事態に直面した際、人が遠隔介入してコントロールするとともに、クラウドに情報を集めすべてのクルマをつなぐことで、クルマを安全に誘導し、無人運転車両が効率的に移動することのできるモビリティを実現する技術だ。

ロボットを視覚化して監視するためNASAが開発した「VERVE技術」を起点としている。NASAのロボットは予測不可能な未知の環境下で、自動運転技術で障害を避け安全な走行路を計算する。地形上、自動運転による判断が困難な場合、NASAの管理者が望ましいルートを作成してローバーに従うよう指示する。

障害情報とともに対処法も合わせて共有することで、他車両が円滑な運行を行うことができる技術だ。

Ground Truth Perception:独自のセンサーフュージョン技術

グラウンド・トゥルース・パーセプションは、次世代LiDARとカメラ、レーダーのセンサーフュージョンによって、周囲の形状・位置を格段に高い精度で3次元計測を可能にする技術だ。

次世代LiDARは、空間の構造と物体の形・位置 を3Dプリンタのように正確に再現する。カメラは、車両と道路構造の区別や車両の種類、標識の文字や数字などシーンの意味(Context)を理解する。レーダーは、周囲の移動物の動き(距離と速度)を把握する。

自動運転システムを構成するセンサーとしては標準仕様と言えるが、日産はこれを次世代プロパイロットに生かし、高度なADASの実現を図っていく構えだ。

プロパイロットパーキング:駐車時に必要なすべての操作を自動制御

プロパイロット パーキングは、 スイッチ操作一つで駐車時のステアリング、アクセル、ブレーキ、シフト、パーキングブレーキに至るすべてをシステムが自動制御し、駐車完了するまでドライバーをアシストする。

道路脇の縦列駐車やショッピングモールの並列駐車、車庫入れなどさまざまな駐車パターンに対応している。

メモリー機能搭載車であれば、自宅などの白線のない場所などでも、一度駐車位置を登録すれば駐車支援機能を使用することができる。

2025年10月現在、アリア、リーフ、サクラ、エクストレイル、セレナに設定されている。

自然言語対応のボイスアシスタント:自動運転にも必須となるHMIとして注目

自然言語に対応したボイスアシスタントにより、従来の音声インターフェースの使い勝手を大幅に向上している。車載の音声認識エンジンとクラウド上の音声認識エンジンを併用することで、曖昧な発話でもユーザーの意図を抽出し、車載機器をコントロール可能にすることで、運転中でも素早く正確に操作を行うことができる。

ヒトとコンピュータを結ぶ技術として、自動運転時代に欠かせない要素となりそうだ。

■【まとめ】業界再編の波をどう乗り切るか

自動車業界は今後、新規格のEV開発事業者や自動運転開発事業者らの影響を受け、サプライヤー含め大きく再編が進んでいく可能性が高い。

ルノー、三菱とのアライアンスをはじめ、ホンダや台湾ホンハイとの協業に向けた協議などあらゆる道を模索している日産だが、パートナー選びは今後重要性を増していく。自動運転をはじめとした自社技術を磨き続け、来るべき再編にしっかり備えて新たな道を切り拓いてほしい。

■関連FAQ

(初稿公開日:2018年9月21日/最終更新日:2025年10月29日)

【参考】関連記事としては「自動運転とは?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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