米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)が世界で22番目に早い処理能力を持つスーパーコンピュータ「DGX SuperPOD」を開発した。2019年6月20日までに公式ブログで公表した内容によると、AI(人工知能)を活用した自動運転システムの実用化に大きく寄与するもののようだ。
DGX SuperPODはNVIDIAのスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX-H2」を96台接続し、半導体大手でスーパーコンピュータの開発を手掛けるMellanox社の技術を使って3週間で構築されたという。高い処理能力を持ち、自動運転システムの要ともいえるAIの学習を加速させることができる。
このような高性能スーパーコンピュータを開発した背景として、NVIDIAは自動運転車のAI学習には膨大なデータ計算が必要になるという点を挙げている。
■25日かかっていたAI学習をわずか2分に短縮
安全性の高い自動運転システムを開発するためには、実験フェーズで走行データを集めてAIに学習させることが必要になる。1台のデータ収集車両が集めるデータは1時間でおよそ1TB(テラバイト)にもなり、数台体制で年単位のデータ収集を行うとPB(ペタバイト=1024TB)単位の膨大なデータ量になってしまう。
これらの膨大なデータを解析し、AIの問題点を見つけて改善、またテスト走行を行うというループを繰り返すことが自動運転システムの正確性につながる。AIの再トレーニングは何万回にも及ぶため、DGX SuperPODの処理能力が有効になる。
ブログでは具体的な例を挙げてDGX SuperPODの処理能力を分かりやすく解説している。2015年に登場した「ResNet-50」というAIモデルのトレーニングは、当時の最新鋭システムで25日かかっていたがDGX SuperPODはわずか2分未満で完了するという。処理スピードで比較すると18,000倍も速くなっている。
この処理能力でリアルタイム処理をおこなえるようになり、自動運転システムの最適化とAIのトレーニングを短縮することができるようになるという。走行しながらデータを収集し、リアルタイムで学習して反映させるといったことが可能になれば、自動運転の実用化が近づくだけでなく。実用化した後も安全性を高めることができる有効な技術になりそうだ。
■BMWやフォードにも導入実績あり
自動運転を開発する企業などがDGX SuperPODを購入する体制は既に整っているようだ。AI開発に対応するシステムを持っていない企業なども、迅速に開発環境を整えることができる。システム全部を購入することも、必要に応じて一部のみを購入することも可能だという。
同様の技術を活用したNVIDIA DGXシステムは既に米フェイスブック社や米マイクロソフト社などの大手企業や、アメリカの国立研究所などの膨大な演算処理を行う企業にも導入実績があり、独BMWや米フォードなどの自動車メーカーでも既に導入されているという。
自動運転システムの開発環境が整い実用化が近づくだけでなく、より安全な自動運転車の実現にも寄与しそうな取り組みだ。
【参考】NVIDIAの自動運転への取り組みとしては「物体の未来の動きを予測!自動運転におけるRNN技術、NVIDIAの最新の取り組み」も参照。
物体の未来の動きを予測!自動運転におけるRNN技術、NVIDIAの最新の取り組み https://t.co/q8TIVf9yUJ @jidountenlab #自動運転 #技術 #RNN
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) June 6, 2019