国のMaaS支援事業、手を挙げた自治体は?「モビリティデポ」「MaaS+」など取り組みさまざま

次世代に向けた新たなまちづくりに着手



2019年に始動した国のスマートシティモデル事業の追加選定がこのほど行われ、先行モデルプロジェクト7事業、重点事業化促進プロジェクト5事業が新たに加わり、国の支援のもと次世代に向けた新たなまちづくりに着手した。







いずれの取り組みもAIや自動運転、IoT、ロボット、ビッグデータといったなじみのキーワードが頻出し、これらの技術をどのように地域課題の解決に結び付けていくかがカギを握っているようだ。

今回は、新規採択された事業のうち、モビリティやロボットなどの分野で特徴のある取り組みが盛り込まれた4事業をピックアップし、紹介する。

■さいたま市スマートシティ推進事業:スマート・ターミナル・シティ目指す

埼玉県さいたま市は、EV普及を促進する「E-KIZUNA Project」を2009年度から継続しているほか、2012年度に「次世代自動車・スマートエネルギー特区」申請が地域活性化総合特別区域計画の認定を受け、「ハイパーエネルギーステーションの普及」、「スマートホーム・コミュニティの普及」、「低炭素型パーソナルモビリティの普及」の3つの重点プロジェクトに取り組むなど、次世代エネルギーや新たな社会システムの構築に向け、早くからスマートシティを見据えた取り組みを推進してきた。

地域活性化総合特別区域計画は2019年度末で計画期間が終了し、ここで得た知見とともにAIやIoTといった先進技術を活用して社会のスマート化を図る「スマートシティさいたまモデル推進事業」に着手した。

新事業では、大宮駅・さいたま新都心周辺地区を対象に、ICT×次世代モビリティ×複合サービスの提供や、サービスで取得するビッグデータを活用することによって交通結節点とまちが一体となった「スマート・ターミナル・シティ」を目指す。

出典:国土交通省

構想には、スマートプランニングによる回遊動線確保をはじめモビリティデポの最適配置、MaaS+(マース・プラス)によるシームレスな乗り継ぎ、スマートな交通基盤整備、シェア型マルチモビリティによる新都心との連携強化などが盛り込まれているのが特徴だ。

スマートプランニングは、個人の行動データをもとに人の動きをシミュレーション・予測し、施設配置や空間形成、交通施策などを検討する計画手法で、シェア型マルチモビリティや自動運転サービス、MaaSから移動軌跡データを収集するなどして回遊状況を把握し、施策に反映させていく。

モビリティデポは、各モビリティが待機する小規模な乗降場を指すものと思われる。ターミナルが交通結節の中心拠点となるのに対し、小規模なデポをまちの各所に最適配置することで移動の利便性を高めていく狙いだ。

出典:国土交通省

MaaS+は、みずほ情報総研によると「移動と移動以外のサービスをセットにしたMaaS」と定義しているようだ。移動の目的となる商業施設や観光地、病院などのサービスと結び付けたり、マンションやオフィスビルなどの不動産と結び付けたりすることでそれぞれの価値や利便性を高めていく考え方だ。

データプラットフォームにモビリティ別の移動データやインフラデータなどを収集・蓄積してビッグデータ化し、交通基盤整備やマルチモビリティの充実などに活用して次世代型のスマート・ターミナル・シティを構築していく方針だ。

2020年度はシェア型マルチモビリティサービスとダイナミック・モビリティハブの実証、各種モビリティからのビッグデータを活用したスマートプランニング実証に取り組み、2023年にシェア型マルチモビリティサービスの実装、2024年にMaaS+やデータプラットフォームの実装を行う予定としている。

■うめきた2期地区等スマートシティモデル事業:最先端技術の実証・実装の場へ

大阪府大阪市では、JR大阪駅のすぐ北側、旧梅田貨物駅にあたる約24ヘクタールのエリアで再開発が進められている。西日本最大のターミナルエリアに位置する一大プロジェクトで、ここをスマートシティ化する構想が本格化しつつあるようだ。

再開発は2004年策定の大阪駅北地区まちづくり基本計画にさかのぼる。約7ヘクタールの先行開発区域はすでにグランフロント大阪の建設などが完了しており、スマートシティ化を図るのは2期区域となる8ヘクタールのエリアだ。

このエリアは「みどり」と「イノベーション」の融合拠点を目指しており、ここに国際集客拠点を目指す夢洲地区を加え、最先端技術の導入や実証実験を行いやすいグリーンフィールドを構築し、緑豊かな新しい都市景観を創出するとともに、多様な活動や新しい価値を生み出す源として世界をリードするイノベーションの拠点を創造していく計画だ。

出典:国土交通省

主な取り組みとしては以下の3点が挙げられる。

  • ①ヒューマンデータの利活用
  • ②自動運転、パーソナルモビリティ
  • ③新技術を活用した施設管理

①では、心理、生理、行動、環境といった人に関するデータを「まち貢献ポイント」の導入などによって収集・活用する「ヒューマンデータ活用基盤」を検討し、事業創出の仕組みづくりに取り組む。

②では、交通弱者やインバウンドへの対応、ラストワンマイルの移動快適性の確保、万博開催などに向け、新たな技術を駆使した自動運転バスやパーソナルモビリティの導入に向けて取り組む。

③では、管理データや利用者の声などの統合管理により、公園管理の高度化に向け遠隔公園管理システムの導入に向けて取り組む。また、ロボットなどの導入による維持管理・運営の省人・省コスト化にも取り組むこととしている。

最先端技術の導入や実証実験を行いやすい環境の構築は、トヨタのコネクテッド・シティ「ウーブン・シティ」構想と同様、自動運転をはじめとした先端技術の社会実装を進める上で大きな意義を持つ。

また、建物や公園の維持管理などにロボットやAIなどを活用したスマート管理の導入を図っていく取り組みも興味深い。清掃ロボットや警備ロボットなど、自動運転技術を活用したロボット開発分野は隆盛を極めており、今後も新たな用務をこなすロボットが登場する可能性が高い。こうしたアイデアを構想・実践する場としても活用されそうだ。

■ロボットのまち南相馬の復興に寄与するロボットを社会連携インフラとするまちづくり:ロボットとともに歩むまちづくりへ

東日本大震災からの復興を加速する産業政策として「ロボットのまち」を掲げる福島県南相馬市も、重点事業化促進プロジェクトに採択された。

ロボットのまち南相馬の実現を念頭に、ヘルスケアや産業、モバイルのロボットを、物流版MaaSやものづくり、暮らしの社会連携インフラとし、ロボットデータ連携プラットフォームによって市民や企業、自治体、研究者らがネットワーク連携して復興とまちづくりを推進するとしている。

スマートシティ構築に向けた直接的なビジョンは示されていないが、同市は2019年に発表した「再生可能エネルギー推進ビジョン」の中で、スマートコミュニティをネットワーク化することで市全体のスマートシティ化を目指す方針としており、ロボットやエネルギー政策を中心にスマートシティ化を図っていくものと思われる。

ロボット関連では、2017年策定のロボット振興ビジョンの中で、目指すべきまちの姿として以下の7点を掲げている。

  • ①ロボット人材の輩出
  • ②ロボット技術革新
  • ③ロボット産業集積
  • ④ロボットベンチャー輩出
  • ⑤日本の競争力の源泉・ロボット教育先進
  • ⑥世界一ロボットの実証実験・チャレンジがしやすく、ロボットが日常に溶けこんだまち
  • ⑦ロボットを活用したツーリズム・スポーツのフロンティア
福島ロボットテストフィールド=出典:南相馬市公式サイト

福島県が同市内に整備した「福島ロボットテストフィールド」では、2017年に世界初となる完全自律制御飛行の回転翼ドローンによる長距離荷物配送の実証実験が行われたほか、継続的に開発各社がさまざまな実証に活用している。

自動運転関連では、日本郵便が無人走行宅配ロボット「YAPE」や「DeliRo」を活用した配送実証実験などを行っている。

こうしたロボットの実証を市街地などでも気軽に行うことができる環境が整えば、同市は実証や導入における聖地となり、必然的に開発企業も集まってくる。新産業を担う事業や雇用の創出にも期待が持てそうだ。

【参考】福島ロボットテストフィールドについては「福島が「フクシマバレー」に!?ロボットテストフィールドが全面開所、自動運転実証も」も参照。

■熊谷スマートシティ推進協議会:「自動運転バスの隊列走行」を実証

「日本一暑いまち」の常連として名高い埼玉県熊谷市は、暑さに対応できるまちづくりを目指しAIやIoTなどのデジタル技術を活用したスマートシティ構想を立ち上げている。

暑さ対策そのものは本題から外れるためここでは触れないが、注目ポイントとして挙げたいのが、自動運転バスの隊列走行実装を目指した取り組みだ。

熊谷ラグビー場を抱える同市では、平常時とイベント時のバス乗客数に大きな隔たりがあり、課題となっているようだ。平常時は少人数のドライバーとバスで問題なく運行できるが、イベント時は増便が必要なり、コストがかさむ。2台のバスをつなげた連結バスでは平常時の運行において供給過剰となる。

ここに自動運転バスによる隊列走行技術を導入することで、平常時は少人数のドライバーとバスで通常運行し、イベント時は平常時同様少人数のドライバーで多くのバスを走行させることが可能になるのだ。

出典:熊谷市お知らせ

隊列走行技術は高速道路におけるトラック走行への導入を見据え実証が重ねられているが、これをバスに応用する取り組みはほとんど耳にしない。

熊谷市同様、需要に大きな増減のあるバス路線を抱える自治体は多いものと思われ、同市の取り組みが試金石となり各地に拡大していく可能性もありそうだ。

■【まとめ】スマートシティでは自動運転やMaaSがスタンダートな存在に

大都市、地方の拠点都市、地方都市などまちの立地や人口規模などによってスマートシティ導入の前提条件は異なるが、さまざまな面でデジタル化・情報化を進め、ビッグデータを活用して課題解決に向けた取り組みを推進していく方向性はおおむね同一だ。また、早くからスマートシティ構想に着手している自治体は、エネルギー政策を重視している点も共通している。

近年では、自動運転やMaaSもスタンダート化しつつあるようで、エネルギー面をはじめ移動を担うモビリティの変革を望む声はやはり大きいようだ。

モビリティ革命と同時に進行するスマートシティの動向に引き続き注目していきたい。

【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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