自動運転の実現には、自動車がいまどこを走っているのかを認識するための「自車位置推定技術」が欠かせない。自車位置推定技術の手法としては主に「GNSS(GPS)」「DMI・IMU」「電磁マーカー・電磁誘導線」の3種類がある。
今回は自動運転領域にあまり詳しくない人でも分かりやすいように、それぞれの特徴を紹介していこう。
■GNSS(GPS)とは?
GNSS(Global Navigation Satellite System/全地球測位衛星システム)では、複数の衛星からの電波を同時に受信し、それぞれの衛星からの距離を計測することで自車位置を測定する。広く認知されている「GPS」はアメリカが開発したGNSSの一種だ。
一般的にGNSSによる測位では、10メートル程度の誤差が発生すると言われている。なお、JAXA(宇宙航空研究開発機構)準天頂衛星「みちびき」のセンチメーター級測位補強サービスなどを活用することで誤差は数センチメートル程度までに抑えられる。
弱点は、衛星からの電波を受信するため、電波を通さないトンネルやビル内などの場所では位置情報を取得できないことだ。また、山間部や悪天候下では、精度が下がる。GNSSによる自車位置推定はこうした課題が残るものの、技術の向上に伴って誤差は縮まりをみせている。
■DMI・IMUとは?
DMI(Distance Measuring Instrument/走行距離計)は、タイヤの回転数を計測することで進んだ距離を計算する。またIMU(Inertial Measurement Unit)は、物体がどの程度回転しているのかを計測するジャイロセンサーと加速度センサーから、角度(方向)と速度の変化を計測するものだ。
トンネル内などGNSSでは正確な位置情報が取得できない場合、これらの装置を活用することで自車位置を推定することが可能になる。例えば、トンネルの入口からの距離や方向から自車位置を推定する、といった具合だ。
■電磁マーカー・電磁誘導線とは?
電磁マーカーを走行ルートの道路上に埋設・敷設し、車両底部などに設置した磁気センサーでそれを読み取ることで、位置情報を把握することができる。電磁誘導線を使う場合は、事前に道路に埋設された誘導線を車両底部に設置された機器で読み取ることで、自車位置を特定できる。
電磁マーカー・電磁誘導線などは、事前に走行ルート上に前もって埋設しておく必要があるが、コストは比較的安価となっている。既に実際に自動運転バスの実証実験などで用いられている。
路線バスなど限定されたエリアで自動運転バスを運行する場合は使える手法だが、日本全国全ての道路に電磁誘導線を敷設するのは、現実的ではないと考えられている。
■【まとめ】自己推定技術は今後も進化
自車推定技術はそれぞれに強みや弱点があり、今後もエリアや環境によって複合的に使ったり、使い分けられたりしていくとみられる。最近ではカメラだけで自車位置を推定しようという試みもあり、自車推定技術は今後も進化を続けていきそうだ。
【参考】関連記事としては「AI自動運転向けの4つのセンサー、長所と短所を知っておこう!LiDAR、カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサー」も参照。