あの「無料タクシー」の仕組みを暴く!広告モデルで実現、YouTubeと一緒?

DeNAの「0円タクシー」や「nommoc」など





出典:DeNAプレスリリースと株式会社nommocプレスリリースより自動運転ラボが作成

デジタルサイネージ(タブレット端末)を搭載するタクシー車両が右肩上がりで増加しているようだ。配車アプリの浸透とともに端末を活用した広告サービスなどが新たなビジネスモデルとして確立されつつある。

タクシー事業者の新たな収入源として期待が高まる一方、広告収入を乗客に還元する形のビジネスモデルを模索する動きもある。いわゆる「無料タクシー」だ。







無料タクシーはどのような仕組みで成り立つのか。事例を交えながらその構造を紐解いてみよう。

■日本における「無料タクシー」の事例と仕組み
DeNA:「MOV」が一大キャンペーンで無料タクシー実現
出典:DeNAプレスリリース

タクシー配車アプリ「MOV」を手掛けるDeNAが2018年12月に実施した「PROJECT MOV」第1弾は大きな反響を呼んだ。乗客の利用料金が無料となる「0円タクシー」を走行させたのだ。

「PROJECT MOV」は、利用シーンや個別のニーズに応じた新しい移動体験を実現するための取り組みで、第1弾の「0円タクシー」では、従来の乗客と交通事業者をマッチングする2者間モデルから、企業などを巻き込んだ多者間マッチングモデルへの進化を図ることとしている。

乗客が本来支払う利用料金は、契約スポンサーと「MOV」の広告宣伝費によって無料にするフリービジネスモデルで、スポンサーは、「MOV」で配車できるタクシーの車体ラッピングや、車内での自社商品・サービスの宣伝を通じて、認知獲得や購買に繋げることができる。

一方、乗客は無料でタクシーを利用できるだけでなく、スポンサーの新商品や新サービスなどの情報をいち早く入手・体験することができる。タクシー事業者は、契約スポンサーと「MOV」両者からの広告宣伝費によって通常通りの乗車料金が支払われるほか、これまでタクシーを利用していなかった層の取り込みなどにも期待でき、新たな収益モデルの構築に繋がる。

「0円タクシー」の初回スポンサーは日清食品株式会社の「日清のどん兵衛」で、都内の対象エリアで50台の運行が行われた。通称「どん兵衛タクシー」は、タクシーの外装に専用のラッピングと内装が施されており、車内の専用タブレットでは日清食品が新しく提案する「日清のどん兵衛 天ぷらそば」にたまごを入れてさらに美味しくする「ツキを招く 月見そば」のプロモーション動画が流された。

nommoc(ノモック):移動型広告メディア市場開拓へ
出典:株式会社nommocプレスリリース

移動サービスの恒常的無料化に取り組む企業も2018年4月に現れた。福岡県福岡市を拠点とする株式会社nommoc(代表取締役:吉田拓巳)だ。人工知能(AI)を使った新しい配車サービスを事業に掲げ、移動型広告メディアという新しい市場の開拓に挑戦している。

タクシーに広告を掲載するのではなく、広告効果をより高める媒体としてタクシー・移動サービスを有効活用するような考え方で、最新のAI技術によりスマートフォンアプリとデジタルサイネージを連携させ、AIがユーザーの行動パターンを分析することで、先回りしてスタンバイしたり乗客の好みを学習するなどし、より高い精度でオススメの行き先や欲しい情報を届ける仕組みだ。

ユーザーの年齢・性別はもちろん、趣味趣向や過去の行き先データなどさまざまなデータを取得し、ただの広告表示を行うだけでなく、数多くの広告を連携させた新しいユーザー体験の提供が可能になるという。

車内はピンポイントなマーケティング空間となり、企業はリアル広告における最適なターゲティング環境を得ることができ、ひいてはブランド価値の向上につなげられる絶好の機会となる。

2018年5月に株式型クラウドファンディングサイト「FUNDINNO(ファンディーノ)」で資金調達を実施したところ、わずか4分30秒で目標額1600万円を上回る5000万円の申し込みがあった。

サービスは、福岡県の国家戦略特区を活用し、実験として1年間福岡市天神で8台の試験運用を行うこととしている。その後、広告のための十分なデータを集め、収益動向を見極めた上で日本国内の主要都市での展開を計画していくこととしている。

■こうした仕組みは今のYouTubeと一緒?

乗客にとっては、広告サービスを受けることで乗車料金が無料になるため、無料タクシーが実現すれば予約が殺到する可能性が高い。

映像を視聴することでサービスを無料にするこういった手法は、米Google系の動画共有サービス「YouTube(ユーチューブ)」などと共通する部分が多い。YouTubeでは、ユーザーは当然のように無料でさまざまな映像コンテンツを視聴することができるが、それは広告があって初めて成り立つのだ。

YouTubeは、動画再生数を増やす=アクセス数を増やすことで広告媒体としての価値を高め、各動画の合間などに広告を流すことでスポンサー収入を得ている。動画再生数が増えれば増えるほど広告表示数も伸ばすことができる。近年話題の「YouTuber(ユーチューバー)」は動画再生数増加への貢献度が高いため、ここに収益の一部を還元することで興味をひくコンテンツ制作者を多く集めているのだ。

ユーザーにとっては、たまに流れる広告動画を閲覧することでYouTubeの広告収益に貢献し、サービスの維持向上に一役買いながら無料でサービスを享受していることになる。

この仕組みの基本的な部分は無料タクシーも同様で、タブレットから流れる動画広告を閲覧することでタクシー事業者やデジタルサイネージサービス事業者に広告料金が入り、その一部が乗客に還元される仕組みとなっている。

いわば、全国のタクシー各社がYouTubeの投稿者となり、乗客は一般視聴者となる。高い広告効果を打ち出せるタクシー事業者は、「YouTuber(ユーチューバー)」のように高い収益を得ることができるようなイメージだ。

■【まとめ】タクシー料金が実質値下がり?デジタルサイネージの恩恵が乗客にも

無料タクシーの仕組みは、基本的にはYouTubeなどと同様であることがわかった。ただ、これをビジネスモデルとして確立するのは容易ではない。

タクシーの平均客単価を1500円とすると、これを無料にするためにはそれ以上の広告効果を打ち出さなければならない。このため、DeNAのように一大キャンペーン化してメディアの注目を集める手法やラッピングなどと組み合わせる手法、ノモックのように広告効果を最大限高める取り組みなどが必要になってくるのだ。特にノモックの恒常的無料化を図る取り組みは要注目だ。

こうしたタクシー無料化は、各社がかんたんに実現できるほど安易なサービスではないが、無料とはいかないまでも、乗車料金を割引する形式などが今後増加する可能性は十分考えられる。タクシーのデジタルサイネージ広告の認知度向上とスポンサーの増加により、近い将来、実質的なタクシー料金は値下がりするかもしれない。







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