車両基準の緩和など提案!BOLDLY、自動運転実証実験で国に

道路使用許可期間の上限延長など含む3項目





自動運転技術の社会実装を推進するBOLDLY(旧SBドライブ)が、内閣府の規制改革推進会議へ自動運転の実証実験に関する提案を行ったようだ。

提案書は2020年4月10日に開催された内閣府の「第13回投資等ワーキング・グループ」において提出資料として添付されており、公道実証に関する緩和措置など3つの提案が盛り込まれている。







各地で数々の実証を行っている同社の提案はまさに現場の声そのものだ。今回の提案をもとにどのように議論が進み、どのような結論が下されるかは注目に値する。

同社の提案内容を一つずつ紹介し、実証現場が抱える課題に触れていこう。

▼提案書
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20200410/200410toushi04.pdf

出典:内閣府公開資料
■提案内容①
公道実証実験における道路使用許可の有効期間の上限を現行の半年から約1年へと延長すること

実証実験における道路使用許可期間の延長を提案する内容だ。BOLDLYは実証実験の道路使用許可取得の主たる目的について、警察庁に対する走行予定経路の事前の報告と警察庁による安全のためのアセスメントの実施であるとし、道路工事や著しい交通環境の変化がある場合は都度申請とするなど条件付きで、1年の期限としても問題ないとしている。

実証実験における道路使用許可は、警察庁が2019年9月に発表した「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」で定められており、許可期間は「原則として最大6カ月の範囲内で、実験場所の交通状況に応じた期間」と規定されている。

【参考】警察庁の「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」から基準の詳細が確認できる。

なお、道路使用許可が必要な行為は道路交通法第77条に定められており、以下のいずれかに該当する必要がある。

  • 交通の妨害となるおそれがないと認められるとき
  • 許可に付された条件に従って行われることにより交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき
  • 現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき

地域差はあるものの、道路環境は降雪などの天候や日照時間など四季によって大きく変わるため、現地における実用化を見越した実証は一年を通して行い、あらゆる条件を想定内に収めておく必要がある。

今回の要望からは、実証実験における道路使用許可の申請手続きが何らかの形で事業者の負担となっていることが想像できる。仮に申請手続きに負担がなければ、再度6カ月の許可を得ればよいからだ。

また、「6カ月」とする根拠が不明瞭で、仮に概ね6カ月以内とされることが多い道路工事などにおける使用許可を準用したものであるならば、期限の変更の余地は十分考えられそうだ。

6カ月とする明確な根拠がないのであれば、BOLDLYが要望する条件付きで1年とする案や、同条件のもと実証を行う場合の簡易延長手続き措置など、柔軟な対応を求めたいところだ。

【参考】警察庁の取り組みについては「日本の警察は「自動運転」にどう向き合っている?」も参照。

■提案内容②
実証実験に用いる車両に対する基準をより緩和ないし簡易化すること

警察庁が2016年5月に発表した「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」における基本的制度に対する提案だ。

BOLDLYは、実証実験中は走行する速度を時速20キロ未満に設定し、セーフティドライバーも同乗することから、 車両の基準が現行の基準に満たない場合でも安全に運行できるとしている。

また、自動運転車開発の目的が社会実装を追求するものであるならば、車両の基準の緩和を認めることで国内外多くの自動運転車メーカーのテストベッドとなり、自動運転車の開発・実装を促進できるとも述べている。

【参考】警察庁の「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」からガイドラインの詳細が確認できる。

同ガイドラインにおける基本的制度では、以下を満たすことで、現行法上公道実証実験を行うことができるとしている。

  • 公道実証実験に用いる車両が道路運送車両の保安基準の規定に適合していること
  • 運転者となる者が実験車両の運転者席に乗車して、常に周囲の道路交通状況や車両の状態を監視し、緊急時などには他人に危害を及ぼさないよう安全を確保するために必要な操作を行うこと
  • 道路交通法を始めとする関係法令を遵守して走行すること

一方、国土交通省は2017年2月に代替の安全確保措置が講じられることを条件に保安基準の一部の緩和を可能とする「自動運転の実証実験に係る基準緩和認定制度」を創設するなどし、遠隔型自動運転システムや特別装置自動車などの実証実験の円滑化に取り組んでいる。

この基準緩和制度を活用し、BOLDLYも2019年7月に東京都港区、2019年8月に長崎県対馬市、2019年10月に千葉県千葉市などで特別装置自動車を使用した実証実験を行っている。

今回の要望における「車両の基準の緩和」がどの程度のものを指しているか不明なため一概には言えないが、十分な安全対策・体制を整えることで、従来の保安基準の想定を大きく超えるような自動運転システムの導入を検討している可能性などもありそうだ。

■提案内容③
実証実験に使用するルートが一部道路交通法に合致しなくとも、テストドライバーが常にオーバーライドできる状況で実験する場合に限り安全が担保されるものとみて、柔軟な運用をすること

現実的な交通流に合わせた自動運転車両の走行・運用を提案する内容だ。

BOLDLYは具体例として、道路交通法上、車両は歩道の前で一時停止することがルールではあるが、実際の交通流において見通しの良い歩道で通行人がいない場合、一時停止をする車両は皆無であり、仮に自動運転車のみが一時停止を行った場合、周囲の交通を妨げる可能性のみならず、自動運転車の走行の意図が誤って伝播することにより、無理な追い越しや左方後方からの二輪などの巻き込みが誘発される可能性があるとしている。

「一時停止をする車両は皆無」とする例はさすがに暴論だが、裏を返せば、公道実証において自動運転車が周囲の車両と協調した走行を行うことの難しさを物語っていると受け取ることができる。

【参考】こちらの提案も警察庁の「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」に関するものだ。

例えば見通しの良い郊外の道路において、制限時速50キロのところ走行する車両の実勢速度が60~70キロに達している道路は珍しくない。道路構造の水準や車両の高度化が進展し、かつての制限速度が実情に即していない場所は確かに存在する。また、スピードメーターの誤差の関係から、制限速度プラス1割程度の速度であれば速度違反の切符を切られないのも道交法の通常運用と言える。

厳密に速度制限を守っていると後方車両がどんどん連なり、無理な追い越しを誘発するケースも珍しくない。絶対的な善悪の基準(道交法)と、ドライバーの平均的な行動・感覚が乖離している場面が多々あるのは事実だ。

しかし、自律判断を行う自動運転車に「この場合は道交法を違反しても良い」といったケースバイケースの運用を促すのは相当厳しいものがある。また、テストドライバーがオーバーライドできる状況に対し柔軟な運用を求る内容となっているが、自動運転の安全性を担保すべきテストドライバーが道交法に違反してよいとする論理も通用しない。

解決策としては、道路規制そのものを見直し、各所の規制を実情に即したものに変えていくことではないだろうか。仮に、大多数の車両が一時停止を無視しても安全が担保される場所や、制限速度と実勢速度が著しく乖離しつつも事故が全く発生していない場所などは、交通標識や制限速度などを実情に合わせる形で見直すことで、自動運転車も周囲の車両と同様の行動をとることが可能になる。

安全上、こうした措置をとることができないのであれば、あくまで正しい運転行動を行っているのは自動運転車であることから、警察などは周囲の車両への注意喚起を徹底する必要があると言える。

■【まとめ】自動運転の社会実装見越した議論を

2点目の実証車両に対する基準の緩和・簡易化は、将来的には必然となるべき内容だ。自動運転システムの仕組みは、技術の高度化に相まって杓子定規な規定に当てはまらないものになっていく可能性があるからだ。

また、3手目の道交法関係の論点は、道交法の理念・規定と、道路交通環境の実情との乖離を象徴する内容と言える。道交法を順守して走行しなければならない自動運転車は、ある意味「道交法の化身」として一般のドライバーから扱われることになり、乖離が大きければ大きいほど自動運転車に対する風当たりも強くなることが想定される。

無理な追い越しによる事故なども考えられるため、時としてきれいごとを抜きにした対策が求められることもあるだろう。

自動運転技術の高度化、そして社会実装を見越した今後の議論に注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
登壇情報









関連記事