自動運転船、国の実用化目標は「2025年」!要素技術の開発加速

国や民間の取り組みは?国際連携の動きも



出典:国土交通省

自動運航船の実用化に向けた取り組みが着々と進んでいるようだ。沖電気は2021年6月、遠隔監視・遠隔操船に向け海上・港湾・航空技術研究所と共同研究契約を結んだと発表した。

国土交通省海事局が公表している「自動運航船の実用化に向けたロードマップ」によると、自動運航船の実用化目標は2025年に定められている。







この記事では、自動運航船実用化に向けた国や民間の取り組みを解説していく。

▼自動運航船の実用化に向けたロードマップ
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001375594.pdf

■国の取り組み
フェーズ2自動運航船を2025年までに実用化

自動運転車同様、自動運航船は海上安全の向上や船上の労働環境改善、産業競争力の向上・生産性の向上などの観点から実用化の期待が高まっている。

国土交通省は2016年、最先端技術を用いた船舶の研究開発を推進するため海事生産性革命「i-Shipping(Operation)」事業に着手し、IoT技術やビッグデータ解析を活用した船舶・舶用機器の技術開発支援を開始した。

2018年には、実用化に向け技術開発と基準・制度見直しの大枠を示したロードマップを策定した。これによると、2020年までにフェーズ1となるIoT技術を活用した船を開発するとともに、陸上からの操船や高度なAIなどによる行動提案で船員をサポートする自動運航船の開発をフェーズ2と類型化し、2025年までの実用化を目指すとしている。その後、フェーズ3として、自律性が高く最終意思決定者が船員以外となる領域が存在する自動運航船の開発を進めていく計画だ。

フェーズ2に向けた基準や制度は、内航船などで可能な措置から順次実施し、IMO(国際海事機関)の議論をリードしながら外航船などにおいても同様に措置していく方針だ。

出典:自動運航船の実用化に向けたロードマップ
開発加速に向け安全ガイドラインを策定

国土交通省海事局は2020年12月、自動運航船の安全設計ガイドラインを発表した。自動運航船の設計や自動操船システムの搭載、自動運航船の運航などにおいて留意すべき事項などをまとめたもので、自動運航船の実用化に向けた動きを加速・促進していく狙いだ。

▼自動運航船の安全設計ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001375699.pdf

対象船舶は、「従来は船員が実行している操船に関するタスクを構成する意思決定サブタスクのうち、一部又は全てを自動化システムにより支援することが可能な船舶」としている。具体的には、操舵や進路変更・保持、姿勢制御、推力制御、見張り、航海計画の策定など操船に関するタスクを支援するための自動化システムのみを対象とし、係船作業や荷役作業、機関監視・整備といったタスクは対象外としている。

ガイドラインでは、設計段階において安全上留意すべき項目として、以下の10項目を定めた。

  • ①運航設計領域の設定
  • ②ヒューマン・マシン・インターフェイスの設定
  • ③自動化システム故障時等の船員の操船への円滑な移行措置
  • ④記録装置の搭載
  • ⑤サイバーセキュリティの確保
  • ⑥避航・離着桟機能を実行するための作動環境の確保
  • ⑦遠隔制御機能を実行するための作動環境の確保
  • ⑧リスク評価の実施
  • ⑨自動化システムの手引き書作成
  • ⑩法令の遵守

①は、自動運転車におけるODD(運行設計領域)の船バージョンと言うべきもので、航行海域の航路幅や沿岸からの距離といった地理条件や昼、夜、気象、海象、輻輳(ふくそう)度などの環境条件などを設定する。

②は、現時点における自動運航船が無人を想定していないため、自動化システムと人間との間で発生する情報のやり取りで必須となる手段や装置の要件を提示している。

出典:自動運航船の実用化に向けたロードマップ
実証促進に向け8カ国連携枠組み「MASSPorts」設立

2020年8月には、日本とシンガポール、中国、韓国、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、オランダの8カ国で自動運航船の実用化に向けた国際連携枠組み「MASSPorts」を設立した。港内での自動運航船実証ガイドライン策定や、複数港湾での相互運用性を高めるための共通の用語・通信方法及び各種様式の構築、港湾間を運航する自動運航船実証試験の促進について協力していく方針だ。

■民間の取り組み
日本郵船が最適航行プログラムを活用した世界初の実証に成功

日本郵船は2019年9月、有人自律運航船実現に向け最適航行プログラムを搭載した大型自動車専用船で中国の新沙から名古屋港、名古屋港から横浜港の試験区間を断続的に航行する実証に成功したと発表した。

国際ルールに基づく世界初の実証実験で、最適航行プログラムが航海計器からのデータをもとに周囲の状況を把握し、衝突リスクを計算して最適な避航針路を決定し、自動で操船するまでの一連の動作を実海域で実施した。

日本財団も開発をバックアップ

日本財団は2020年6月、無人運航船における技術開発促進を目的に募集していた「無人運航船の実証実験にかかる技術開発共同プログラム」の選定結果とともに、実証実験を行う5つのコンソーシアムに支援することを発表した。

採択されたのは、三菱造船など2社による「スマートフェリーの開発」、丸紅など計4社による「無人運航船@横須賀市猿島」、日本海洋科学など計22社による「無人運航船の未来創造~多様な専門家で描くグランド・デザイン~」、商船三井など計8社による「内航コンテナ船とカーフェリーに拠る無人化技術実証実験」、ITbookホールディングスなど計5社による「水陸両用無人運転技術の開発~八ッ場スマートモビリティ~」の5件。

大型フェリーや小型船、コンテナ船、水陸両用車(船)などの無人運航化に資する技術開発をそれぞれ行うこととしている。

沖電気は「船舶用俯瞰映像システム」確立へ

沖電気は2021年6月、海上・港湾・航空技術研究所と遠隔監視・遠隔操船技術の確立に向け共同研究契約を締結したことを発表した。

フェーズ2における周囲状況の確認技術と遠隔操船技術の構築、および自動着桟システムの安全性向上を目指した研究開発の1つで、「船舶用俯瞰映像システム」の確立を目指す。

具体的には、沖電気の俯瞰映像モニタリングシステム「フライングビュー」を活用して小型実験船の周辺映像を海技研構内のコックピットに送り、自動運航船における「他船や周囲障害物との距離把握方法の検討」や「夕刻、夜間、波浪ありなどの環境条件を想定した影響把握と対策検討」を行う。

■【まとめ】自動運航技術が業界の復権を背負う

自動運航船の開発は着実に進んでいるようだ。近年、造船市場は中国や韓国に押されがちだが、今後は従来の造船技術に加えシステムインテグレーション技術や最新の自動運航技術が求められる時代となる。

海運の安全性向上はもとより、業界の復権を自動運航技術が背負う形だ。そうした意味では、自動車業界同様テクノロジー企業やAI企業の新規参入がカギを握るのかもしれない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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