AI技術者の募集業種、「自動車・輸送」が28.6% 自動運転開発などで需要増

理系人材の転職意向でもモビリティ関連が上位に





モビリティ分野の各企業がAI人材を欲するようになっている一方、モビリティ分野での活躍を希望する理系プロフェッショナルも増えているようだ。







新規事業開発や人材採用支援などを手掛けるアスタミューゼの発表によれば、AIエンジニアの募集業種に関する調査と理系プロフェッショナルの転職意向調査において、いずれもモビリティ分野が上位にランクインした。

アスタミューゼの調査結果とともに、自動運転をはじめとするモビリティ業界ではどのようにAI技術が必要とされているか、解説していこう。

■理系プロフェッショナルの転職意向調査

アスタミューゼは2020年6月、同社の採用サービス「転職ナビ」「SCOPE」を通じて2020年1~4月に実施した理系プロフェッショナルの転職意向アンケート調査結果を発表した。アンケートは成長領域別および職種別で実施しており、回答者数は8081人に上る。

領域別では「モビリティ」が56.6%

成長領域別では、全体傾向として右肩上がりに転職意向が高まっており、全ての成長領域で増加している。領域別では、「資源・空間・製品」「エネルギー」が57.8%と最も高く、次いで「ネット・サービス」57.2%、「モビリティ」56.6%、「農業・食品工業」55.9%の順となっている。12の領域中、モビリティは3番目の高さとなった。

出典:アスタミューゼ社プレスリリース
職種別では「超小型・パーソナルモビリティ」が60.6%

一方、職種別では「半導体製造装置」の63.9%を筆頭に、「フラットパネルディスプレイ」61.8%、「開発職」60.7%、「超小型・パーソナルモビリティ」60.6%と続いており、超小型・パーソナルモビリティが4番目にランクインした。モビリティ関連ではこのほか、「自動車部品」が55.1%で6番目となっている。

超小型・パーソナルモビリティが求人関連調査で取り上げられるのは珍しく感じられるが、モビリティサービスの多様化が進展すると見込まれる2020年代を象徴する結果と言えそうだ。

出典:アスタミューゼ社プレスリリース

1人・2人乗りの小型自動車タイプをはじめ、電動キックボードや車いすタイプなど近い将来高い確率で普及が見込まれているモビリティをはじめ、メルカリと東京大学が共同開発したインフレータブル構造が特徴の「poimo(ポイモ)」のように、新たな発想をモビリティに結び付ける研究開発も盛んだ。

超小型・パーソナルモビリティ分野はベンチャーの進出も目立つが、自動車メーカーも改めて開発に力を注いでいる分野でもある。トヨタは定員2人の超小型EVや最高時速14キロの立ち乗りタイプのモビリティを2020年冬に発売予定としているほか、座り乗りタイプの新たなパーソナルモビリティを2021年に発売すると発表している。

シェアサービスの浸透がこうした新たなモビリティの需要を加速させることが予想され、今後も大きな活躍が見込める開発分野だ。パーソナルモビリティの自動運転化も注目のトピックスだ。

【参考】超小型モビリティについては「超小型モビリティが、高齢者の移動に革新をもたらす」も参照。

■AIエンジニアの求人傾向調査
「自動車・輸送」が28.6%で2番手に

同社は2020年7月、理系プロフェッショナルの採用を行う「転職ナビ」約400サイトおよび「SCOPE」に掲載されている同社保有の約60万件もの求人データから「AIエンジニア」の採用要件を可視化し、調査結果を発表した。

AIエンジニアを求人する募集職種別では、「ソフトウェア・情報処理」が54.8%と群を抜いて多いが、次いで「自動車・輸送」が28.6%と2番手につけた。自動車業界では自動運転技術の開発でAIエンジニアのニーズが高まっているほか、輸送・配送におけるルート最適化でもAI技術に対する需要は高い。

また、「プロジェクトマネジメント」が14.6%であることから、技術に加えてリーダーシップやプロジェクトのリードといった能力をAIエンジニアに求めるケースも多いようだ。

出典:アスタミューゼ社プレスリリース
■自動運転におけるAI開発領域
自動運転関連求人は再び上昇傾向に

自動運転ラボの調査によると、コロナ禍で減少していた自動運転分野における求人は早くも回復し、上昇傾向にあるようだ。

主要6転職サイトにおける2020年5月末時点の自動運転関連求人数は、前月比3.6%増の1万8240件と3カ月ぶりに増加に転じ、前年同月比でも10.3%増と依然高い水準で推移している。

【参考】自動運転ラボの求人調査については「自動運転関連求人数、コロナ禍による件数減が増加に転じる!2020年5月末調査」も参照。

画像認識・解析技術が花形に

自動運転分野では、本家本丸となる自動運転システムの開発をはじめ、ビッグデータの分析や走行ルートの選定、シミュレーション、音声認識、プラットフォームの開発など、幅広い分野でAI技術が活用される。

自動運転システムの開発では、画像認識・解析領域が最も熱い。自動運転は、カメラなどのセンサーが取得した画像データをもとに他の車両や歩行者、車線、障害物などを認識・判別し、それに合わせて車両をどのように制御するかを判断する。走行中の自動運転車は途切れることなく膨大な量のデータを取得し続けるが、これを瞬時に解析・判断するシステムが求められているのだ。

強化学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)を中心にAI技術が大活躍する領域で、中にはAIに正解となる判断基準を与えずにデータのみを付与する教師なし学習を活用して開発コストや時間の短縮を図るスタートアップが登場するなど、さまざまなアプローチがあるようだ。

エッジAIの開発を進める企業も増加し、応用は広がる一方だ。AI技術そのものが現在進行形で進化を続けているため、活躍の場もまだまだ拡大していくものと思われる。

【参考】AIの教師なし学習については「自動運転AI、常識破りの「教師なし学習」による超進化」も参照。エッジAIについては「自動運転に必須の「エッジAI」とは?」も参照。

国もAI人材育成に本腰

AI人材を巡っては、自動運転分野をはじめ各産業で不足しているのが実情だ。国も人材育成に力を入れており、大学などにおけるAI教育や産学連携を強化している。

自動運転関連では、経済産業省がAIエッジコンピューティングの実現に向け優れた技術や人材、アイデアを発掘し、新たな人材の当該分野への参画を促す目的で「AIエッジコンテスト」を2018年度から開催している。

車両前方カメラ画像から物体を含む矩形領域を検出するアルゴリズムの作成や、ハードウェアアクセラレータなどの設計を行いターゲットのFPGAボードへのアルゴリズム実装を行うなど、技術の実装を意識したコンテストとなっている。

自動車技術会もAIエッジコンテストに合わせ、上位チームを対象としたコンテスト「自動運転AIチャレンジ」を開催している。自動運転におけるAI技術を競う国際的な競技に位置付け、自動運転車両を実際に走行させて各種課題をクリアしていく内容となっている。

民間もAI人材育成を強化

民間では、AI教育研修ベンチャーのアイデミーらが自動運転のためのディープラーニング技術を学べるプログラミング研修「自動運転AIプログラミング研修」を開講するなど、AI教育を担うマーケットが活発だ。

また、人材不足を背景に、社員を改めて教育する動きも出始めている。東芝や地図情報大手のパスコなどは、AI技術者育成に向け大学と連携し、独自の教育プログラムを導入している。

それだけAIエンジニアが不足し、その上重宝される時代が到来していると言えそうだ。

■【まとめ】IT技術とAI技術が双璧となり、開発分野のスタンダードに

自動運転をはじめとする最先端の開発分野では、AI開発がスタンダードとなる時代が訪れようとしている。すでにスタンダート化しているIT技術とともにAIが双璧となっていくイメージだ。

すでにAI技術を身につけているエンジニアはもちろん、これからAIを学ぼうと思っているエンジニア志望にもまだまだ大きなチャンスが眠っている。

【参考】AIを学ぶ方法については「自動運転やAIを学べる講座&教材を一挙まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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