タクシーは序章…後部座席広告、カーシェアやライドシェア、サブスク型でも

デジタルサイネージ市場、2020年度3300億円に





THE TOKYO TAXI VISION GROWTH=出典:ベクトル社プレスリリース

デジタル技術を活用し、ディスプレイ端末などに情報を発信する広告媒体「デジタルサイネージ」市場が伸びている。店頭や公共空間など設置場所を選ばず、ターゲットを絞った情報発信が可能なメディアとして注目が高まっている。

まだまだ伸びを見せるデジタルサイネージだが、右肩上がりの市場の動きと連動するかのように急速に成長しているのがモビリティ業界におけるデジタルサイネージの活用だ。特にタクシーにおいては、後部座席にタブレットを搭載した車両も年々増加し、広告効果もどんどん高まっているようだ。







タクシー搭載のデジタルサイネージは申し込みが相次ぎ、広告の空き枠を探すのも大変な状況のようだが、モビリティ業界内における市場はさらに拡大する可能性がある。広告配信システムの進化とともに、容易に設置可能なタブレット端末が持つ利便性は、タクシーにとどまらずカーシェアリングなどにも応用可能であるからだ。

今回はデジタルサイネージに焦点を置き、モビリティ業界における広告市場の可能性に触れてみよう。

■交通広告・タクシー広告、観光客増加で増加傾向

株式会社電通が2019年2月に発表した「2018年(平成30年)日本の広告費」によると、2018年の国内総広告費は前年比102.2%の6兆5300億円。新聞やテレビなどのマスコミ4媒体が前年比96.7%と落ち込む中、インターネット広告費が同116.5%と全体をけん引する格好となっている。

ダイレクトメールや折り込み、POPなどのプロモーションメディアは同99.1%で微減となっているが、このうち交通関係は総広告費の3.1%を占める2025億円で、同101.1%と伸びを見せている。

鉄道では、中づりや駅ばりなどの紙媒体が落ち込み、それを車内・駅構内のデジタルサイネージでカバーする傾向が継続しているという。特に首都圏では、新型車両の増加に伴い、車内デジタルサイネージが好調で、「ダイナミック・デジタルOOH」を利用したサイネージ展開や、車両・駅構内のデジタルサイネージを組み合わせる広告展開が進んだようだ。

空港では、訪日観光客の増加に伴い広告需要が伸びており、タクシー広告も空港同様に観光客の増加に伴って増加傾向にあるという。

■国内デジタルサイネージ市場は2020年度に3361億円

矢野経済研究所が2017年5月に発表した「2017 デジタルサイネージ市場の現状と展望」によると、2016年度のデジタルサイネージ国内市場規模は前年度比116.2%の1487億7500万円で、イニシャルコストやランニングコストの低価格化などにより導入が増加し、2017年度は前年度比120.3%の1789億2000万円に達すると予測している。

また、2020年度には、東京オリンピック・パラリンピックや地方創生などが追い風となり、2016年度比で2倍を超える3361億7000万円に達すると予測している。一方、東京五輪後は広告の掲出が縮小するとみられ、都内における設置は弱まるものの、観光用途など、地方でのデジタルサイネージ設置は今後も増え続けることが見込まれるものとしている。

■タブレット搭載タクシーは増加傾向

交通関係において、デジタルサイネージは鉄道車両や駅構内などで普及が始まったが、近年急速な伸びを見せているのがタクシーだ。スマートフォンを用いた配車サービスアプリやキャッシュレス決済などの浸透とともにタクシー利用のデジタル化が進み、後部座席にタブレット端末を設置するタクシーが増加傾向にある。

タブレット端末の主目的は決済処理などだが、ディスプレイを持つタブレットの有効活用にデジタルサイネージはぴったりで、乗車から到着までの間、乗客にゆったりと閲覧してもらうことができる。

国内では、日本交通系でタクシー配車アプリ「JapanTaxi」を運営するJapanTaxiが広告会社フリークアウトと手を組み、2016年にデジタルサイネージの開発や広告販売を手掛ける株式会社IRISを設立し、タクシー車内における動画広告配信サービスに着手している。

ディー・エヌ・エー(DeNA)は動画広告配信サービス「Premium Taxi Vision by DeNA」を2019年2月に正式にスタートした。2018年10月の発表後、問い合わせや事前申し込みが相次ぎ、2~3月の広告枠は申し込み開始から約1カ月半で満稿になったという。

一方、新進気鋭のみんなのタクシーと総合PR会社の株式会社ベクトルも、後部座席IoTサイネージサービス「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」(通称:GROWTH)の提供開始を2019年4月に発表しており、高い注目を集めているようだ。

このほか、マーケティング支援システム事業などを手掛けるジーニーが、タクシー配車サービス向け広告配信プラットフォームを開発するなど、市場の将来性を見越した研究開発も進んでいる。全国20万台を超えるタクシー車両に、配車アプリとともにデジタルサイネージが標準装備される日もそう遠くないのかもしれない。

■移動手段の多様化がモビリティ広告をさらに後押し

このようにデジタルサイネージはタクシーを中心に急速に普及が進んでいるが、MaaS(移動のサービス化)に伴って多様化し始めている各種移動サービスへの応用も今後進む可能性が高い。例えば、国内未承認ではあるもののライドシェアはタクシー同様のデジタルサイネージを採用することが可能だ。

また、デジタルサイネージはドライバー自らが運転する移動サービスにも応用できる。右肩上がりで市場を広げるカーシェアやレンタカー、トヨタのKINTO(キント)に代表されるサブスクリプションサービスなども、各種案内や相談ツールとして車内にデジタルサイネージを搭載することで、広告配信への道を開くことが可能になる。

運転操作の支障にならないことが前提だが、コネクテッドサービスと連動し、地域やライフスタイル、趣向に合わせた広告などを半強制的に流す仕組みを整えることができれば、自家用車にも市場を広げることが可能だ。広告代金相当分としてコネクテッドサービスの通信料金を無料にするなど、アイデア次第で実現の芽は大きく膨らみそうだ。

将来、完全自動運転の時代が到来すれば、この手のサービスはむしろ当然のように普及するものと思われる。移動手段の多様化が進むこれからの時代、モビリティを舞台にした広告市場は飛躍的に伸びる可能性を秘めているのだ。







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