NVIDIA、ロボタクシー運賃「1キロ100円台」と予測

フアンCEOが言及



「将来、道路交通の多くは1マイル当たり1~2ドルのロボタクシーになるだろう」


世界をリードする半導体企業NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが、ドイツ・ベルリンで開催したGTC(GPU Technology Conference)の基調講演で述べた言葉だ。

キロ/円に換算すると、1キロ当たり100~200円ほどの水準となる。100円台になると予想しているわけだ。間をとって150円とすると、日本の現行タクシーの3分の1~4分の1程度といったところだろうか。

未来の移動コストはどこまで下がるのか。ロボタクシーの前途に迫る。

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■フアンCEOの発言概要

運賃は1マイル当たり1~2ドルに

出典:NVIDIAプレスリリース

フアン氏は2026年10月にベルリンで開かれたカンファレンスで、自動運転について以下のように言及した。


最も規模が大きく、最も近い将来実現するロボット工学の応用例、あるいは物理的AIの応用例として誰もが認識しているのは、我々が10年以上前から取り組んできたもの。現在、あらゆる自動車メーカーが自社のクルマを配車サービスの一部にしたいと考えるようになるだろうと認識している。

現在、Uber Technologiesをはじめとする配車サービスが主流となっており、欧州ではBolt、Grab、Lyftなどさまざまなサービスがあるが、将来的にはこれらと連携したロボタクシーも登場するだろう。

それは一つのブランドからだけではない。これらのシステムの構築には莫大な費用が掛かり、その上に構築されるソフトウェアにも多額の費用が必要になる。

我々は、一つの標準アーキテクチャ、14種類のカメラ、9種類のレーダーシステム、3種類のLiDAR、無数の超音波センサー、そしてデュアルNVIDIA GPUシリーズで駆動されるシェルを、AVコンピューティングシステム用に構築した。


業界標準として、今では次々とフリートに採用されるようになった。さらに、自動運転ソフトウェア企業も同様で、当社もその一つとしてロボタクシー機能を構築し、それを配車サービスに接続している。世界では、年間約1兆マイルの交通量があり、将来、そういった走行距離の多くは1マイル当たり1ドルか2ドル程度の料金のロボタクシーになるだろう。

これは非常に大きなチャンスではあるが、信じられないほど細分化されている。そこで、業界標準となるHyperionを策定し、エコシステム全体と連携することで、誰もが接続できる巨大な仮想艦隊を構築できるようになった。

本日、4つのブランドがさらに加わることを発表できることを誇りに思う。フォルクスワーゲン、JLR、メルセデスベンツ、ボルボ・カーズのモデルがHyperionに対応し、ロボタクシー車両の一部になっていくだろう。

現行タクシーの半分以下に

年間約1兆マイル(約1兆6,000億キロ)の交通量……というのは、おそらく全世界のタクシーの年間走行距離の推計値と思われる。将来、この大半がロボタクシーとなり、1マイル当たり1~2ドルで移動サービスを提供することになると予測しているのだ。

ざっくりとキロ/円に換算すると、1キロ当たり100~200円となる。日本のタクシーの場合、初乗り運賃が約1キロ500~600円ほどで、以後約250メートルごとに100円……といった水準だ。おおよそ、1キロ当たり500円が相場といった感じだ。

海外では、概ね200~500円が相場となっているようだ。これがロボタクシー化することで、将来2分の1~5分の1ほどの水準まで運賃は低下すると見ているようだ。

以下のYouTube動画は、NVIDIA GTC Berlin 2026におけるフアン氏のキーノートスピーチだ。ロボタクシーに関する話は68分あたりから触れられている。

■ロボタクシーの運賃

E2E実用化でロボタクシーの収益は爆増?

タクシー事業は、人件費が総コストの約7割を占める労働集約型産業の一つだ。それゆえ、自動運転技術によりドライバーレスを実現するロボタクシーのコスト低減効果は非常に高い。

自動運転車であるがため、イニシャルコストとコンピュータ部分や通信にかかるランニングコストが高くつきそうだが、それを踏まえても人件費カット分は数年でペイできるものと思われる。自動運転車の車両価格は、現時点では一台数千万円の値が付けられそうだが、一部では生産コストはすでに1,000万円を下回っている。

E2E技術が確立し、本格的な普及段階に突入すれば、販売価格ベースで1,000万円を下回る日がやってきてもおかしくはない。また、E2Eであれば、新規エリアへの進出・導入にかかるコストも低いため、ロボタクシー運行にかかる経費を相当抑えることが可能になる。

そのフェーズに達すれば、開発事業者・運行事業者とも十分な利益を確保可能になり、その恩恵を運賃に反映させることができるようになる。

それがいつ頃になるのか、また具体的にどこまで運賃が下がるかは何とも言えないところだが、フアン氏の見立てでは「1キロ当たり100~200円」ということなのだ。

アーク社やテスラは1キロ30円程度と予測

出典:Tesla

米調査会社のアーク・インベストメントが過去に発表したレポート「BIG IDEAS 2019」では、自動運転タクシーの収益は2035年に8兆ドルに達する可能性があるとし、消費者が支払う1マイル当たりの移動コストは、従来のタクシーが3.5ドルのところ、将来的にロボタクシーは0.26ドルになると試算している。約13分の1の水準で、自家用車による移動コスト(0.7ドル)よりも低く見積もっている。

円換算すると、1キロ当たり0.16ドル=25円となる。フアン氏の予測より、さらに4分の1~8分の1の水準となっている。

テスラを率いるイーロン・マスク氏も予測を立てている。2022年第1四半期の決算説明会では、これまで経験したことのない低コストな移動手段を提供できると強調し、バスや地下鉄より安く済む可能性を示唆した。

2025年第2四半期決算説明会では、サイバーキャブのような専用車両の場合、ロボタクシーの経済性は将来的に1マイルあたり30セント未満にまで縮小する可能性があると発表した。1キロ当たり30円の水準だ。

フアン氏の予測とアーク・インベストメント、テスラの予測に若干開きはあるものの、現行タクシーの半額以下まで運賃水準が低下する――としている点は非常に興味深い。

低コストで移動可能になれば、自家用車離れが進み、さらにロボタクシー市場が膨れ上がる……という好循環が生まれる。自動運転バスのシェアすら奪いかねない運賃水準となるのかもしれない。

自動運転バスは、渋滞解消に資する高効率の輸送手段として、団体客用途として、ほぼ無料の公共交通としての道しか残されていないのかもしれない。

▼テスラ2025年第2四半期決算説明会スクリプト
https://www.fool.com/earnings/call-transcripts/2025/07/23/tesla-tsla-q2-2025-earnings-call-transcript/

現行ロボタクシーはまだ割高?

では、現行のロボタクシーの運賃水準はどのようになっているのか。Waymoの場合、有人ライドシェア比で10~30%ほど高い運賃が設定されているようだ。キロ当たりの運賃は、4.3キロ以上の乗車で3.5ドル=約550円という。1キロ当たり128円の計算だ。

テスラのロボタクシーは値上げ傾向にあるようで、2026年上半期には基本料金を1ドルから3.25ドルに引き上げた。距離ごとの料金は1マイル1ドルで据え置いている。5マイルで8.25ドルとなり、1キロ当たり162円ほどの計算だ。

中国BaiduのApollo Goの初乗り運賃は約4元(日本円で約83円〜)から設定されているという。有人タクシーの4分の1の水準だ。中国では既存タクシーやライドシェアより低めに設定される場合が多いようだ。

各社とも実装拡大期を迎えているものの、開発期もまだ続いているのが現状だ。研究開発が一段落し、かつスケールメリットが出始めるのはいつ頃になるのか、要注目だ。

ロボタクシー(自動運転)とは?日本や米国の状況は?テスラの動向は?

■【まとめ】日本では低価格化に業界の壁?

将来、無人化技術によって移動コストは爆下がりするかも……という話だ。しかし、日本の場合はそう簡単にいかない。日本では、ロボタクシーも既存タクシー制度のもと運行されるため、国交大臣らが定める運賃規制を受ける。

運賃の上限、下限が決められており、勝手に価格破壊はできないようになっているのだ。既存の有人タクシーへの配慮が残る限り、そうそう低価格化は進まないものと思われる。

日本で低価格が進むのは、ロボタクシーが完全に普及し、有人ドライバー需要が目に見えるレベルで衰退してから……となるのではないだろうか。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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