ウェイモ離れ?Uberがロボタクシー部門を「運営中心」に再編

幹部の相次ぐ退社も要因?



米配車大手Uber(ウーバー)が、米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)との独占的な関係を失いつつある。フェニックスでは、契約満了によりUberのアプリからウェイモの車両が姿を消した。「ウェイモ離れ」が進むなか、Uberは無人の自動運転タクシーであるロボタクシーの部門を、提携を取りまとめる組織から車両を回す運営中心の組織へ作り替えた。背景には、提携交渉を担ってきた幹部の相次ぐ退社もある。この再編は、守りなのか、次の一手なのか。Uberが広げてきた提携網の真価が問われている。


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■Uberは、なぜ今ロボタクシー部門を再編したのか

自動車専門メディアAutomotive World(オートモーティブ・ワールド)はUberが提携交渉の主力を失った後、ロボタクシー部門を運営中心に再編したと伝えた。ウェイモが自社アプリで競う方向へ進むなか、規制がUberの残る取引をどこまで延ばせるかが焦点だという。

市場の反応も厳しかった。英経済紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)が7月24日にウェイモの自社アプリ計画を報じると、Uber株は4.3%下落して65.94ドルとなった。1年超ぶりの安値で、年初からの下げは約2割に達した。

見方が厳しくなる理由は、Uberの戦略の土台にある。Uberは、どの企業が優れた自動運転車を作っても、利用者との接点は自社の配車アプリが握るという前提で、2025年から100億ドル超を投じてきた。ウェイモが自前のアプリを持てば、この前提は崩れる。

ただし、ウェイモは自社アプリをUberでの提供と並べる計画で、完全な離脱とは言い切れない。ウェイモ離れという見方は、半分は当たり、半分は外れだろう。


【自動運転ラボの視点】ウェイモが自社アプリを広げれば、Uberは自動運転タクシーの入り口という地位を一社だけでは守れない。提携先を増やす戦略は、この弱点を埋める保険であると同時に、各社が自前路線へ向かうリスクも抱える。運営中心への再編で車両を効率よく回す力を高めることが、提携先をつなぎとめる鍵になる。

【参考】関連記事としては「Uberのロボタクシー・自動運転戦略まとめ【ウーバー】」も参照。

■提携交渉役の相次ぐ退社と、運営中心への再編

Uberのロボタクシー部門では今年、提携交渉を担ってきた幹部が相次いで去った。後任の顔ぶれからは、提携の数を増やす段階から、提携先の車両を街で回す段階へ移ろうとする狙いが見える。

提携を支えた幹部が抜ける

Uberで自動運転とデリバリーの部門を統括するSarfraz Maredia氏が、11月16日に退社する。在籍は12年を超え、退社後は輸送業界の外で要職に就くという。

今年は他の幹部も去った。自動運転の提携事業を率いたGuy Peterson氏は今月、米EVメーカーRivian(リビアン)が分社した電動バイク企業の最高事業責任者に就いた。法務責任者のLando Juarez氏も6月に退社している。


今年はウェイモに加え、配送ロボット企業Serve Robotics(サーブ・ロボティクス)との提携も崩れた。幹部の退社は、その混乱と重なっている。

後任は運用とデリバリーの責任者

Maredia氏の業務は、1人に引き継がれない。無人車両の運用を見るSamarth Kejriwal氏と、自動運転デリバリーを率いるAaron Emrich氏が分担する。Kejriwal氏はUberに10年超在籍している。

Maredia氏は、他社の自動運転車をUberアプリに載せるための基盤づくりを担ってきた。充電、車両管理、データ収集、遠隔支援などだ。退社時の社内向けメモでは、自動運転への勢いはかつてなく強いと述べ、今後はより多くの都市への展開と、1都市あたりの車両の密度を高めることに力を入れるとした。

Uberは9月、約3,300人、全体の約1割を減らす人員削減も発表した。組織を簡素にして意思決定を速め、浮いた資金は成長分野への再投資に回すとしている。

提携の数を競う段階から、提携先の車両を街で回す段階へ。今回の再編は、そう読める。一方でブルームバーグは、Uberの取り組みの多くが、まだ量産されていない車両や地域の規制に左右され、規模が限られると指摘している。

【参考】関連記事としては「Uber、ロボタクシー注力へ「異例の3,300人解雇」か?」も参照。

Uber、ロボタクシー注力へ「異例の3,300人解雇」か?

■ウェイモの自社アプリ化は、どこまで進むのか

最初の分岐点は、フェニックスだった。ウェイモの車両は、5月にUberのアプリから姿を消した。

ただし、Uberは「契約上の終了日だった」と説明している。フェニックスは、2023年に始まった両社の提携で最初の試験地であり、車両は12台強の限定運用にとどまった。ウェイモは数十万回の乗車を重ねた成果と位置づけ、車両を自社の車隊に戻した。

次の分岐点は2028年1月だ。フィナンシャル・タイムズによると、ウェイモはオースティンとアトランタで、契約が認める2028年1月に独自運行を始める計画をUberに通知した。Uberはこれを確認したうえで、Uber経由の提供は少なくとも2028年5月まで続くと説明している。

注目は、自社アプリがUberでの提供と並ぶ点だ。Uberは、ウェイモの独占が終わることで、他社の自動運転車もこの2都市に入れられると受け止めている。

対立の背景も見えてきた。同紙によると、ウェイモは車両の清掃やルート選びに懸念を示した。一方Uberは、悪天候時にウェイモの車両が急に使えなくなる点や、採算の合わない契約条件を問題視した。関係者は、両社が異なる目標を追っていると語ったという。

規模の差も開いている。ウェイモは約4,000台を運行し、米11都市圏で週50万回超の乗車を提供する。今年は約20の新都市への展開も進めている。早ければ年内にロンドンで、ウェイモの自社アプリと、Uberが組む英自動運転開発企業Wayve(ウェイブ)が直接競合する見通しだ。

つまり、ウェイモが選んだのは、Uberを切ることではなく、Uberに頼らない道を併設することだ。「ウェイモ離れ」というより、独占の終わりと言うほうが実態に近い。

【参考】関連記事としては「欧州初の自動運転レベル4承認へ WeRideとUberがスペインで」も参照。

■多角的な提携網は、Uberの「プラットフォームとしての価値」になるか

Uberは、ウェイモ1社に頼る戦略をとっていない。Uberの自動運転の提携先は、ロボタクシー、配送ロボット、ドローン、トラックを含めて30社を超える。これらの企業は、Uberのプラットフォームで12万台のロボタクシーを展開すると表明している。

柱の1つが、米EVメーカーLucid(ルシッド)との取り組みだ。LucidのSUVであるLucid Gravity(ルシッド・グラビティ)に、米自動運転開発企業Nuro(ヌーロ)の自動運転システムを載せ、2万台以上を6年かけて展開する計画である。UberはLucidに3億ドルを投じ、Nuroにも数億ドル規模の投資を行った。

ほかにも提携先は多い。中国の自動運転開発企業Pony.ai(ポニーエーアイ)は中東、米自動運転開発企業May Mobility(メイ・モビリティ)はテキサス州アーリントンで組む。自動運転開発企業のAvride(アヴライド)は、2025年12月にダラスでUberアプリ経由のロボタクシーを始めた。Amazon傘下のZoox(ズークス)や中国のWeRide(ウィーライド)、Wayveとも提携している。

このうちPony.aiには、トヨタ自動車(Toyota)が出資している。両社は量産型のロボタクシーも共同開発しており、Uberの提携網は日本の自動車大手とも無縁ではない。

狙いは、どの企業が勝っても、Uberの配車網に車両が集まる状態を作ることだ。ウェイモが抜けても、別の提携先の車両で穴を埋められる。

弱点もある。提携先の多くは、まだ車両の量産や都市ごとの許可に左右され、展開は小さな規模にとどまる。提携先が将来、ウェイモと同じように自社アプリへ向かう可能性も残る。提携の数が、そのまま集客力になるとは限らない。

■Uberの再編と多角化戦略、その真価は規制が左右する

争点は、規制の場にも広がっている。フィナンシャル・タイムズの報道によると、両社は州ごとの規制をめぐっても異なる立場をとる。Uberは、人間の運転手が多くの配車を担うことを求めるハイブリッド型の配車網を推す。ウェイモは、高額な許認可費用を支持している。許認可費用が高ければ、小さな事業者は参入しにくくなる。

ウェイモが自社アプリで単独運行できる都市が増えるのか、Uberが主張する混合型の枠組みが広がるのか。その行方が、Uberの提携網の価値を左右する。

問われているのは、ロボタクシーの入り口を誰が握るかだ。車両と運行を握るウェイモは、自社アプリで直接利用者に届く道を選んだ。Uberは、多数の提携先の車両と、既存の利用者の多さで対抗する。

この構図は、日本にとっても他人事ではない。ウェイモは東京で、タクシー配車アプリのGOとタクシー大手の日本交通と組み、2027年中に運転手が乗らない自動運転レベル4のタクシーを商用化する計画だ。同じ2027年中に、東京で段階的に100台規模を走らせる目標も掲げる。

利用者はGOとウェイモの自社アプリの両方から呼べる想定で、この枠組みにUberの名前はない。正式な開始日は未定で、安全の確認と道路交通法などの許認可が前提になる。ウェイモは日本でも、Uberではなく地元の配車アプリと組む道を選んだことになる。

その意味で、「ウェイモ離れ」という見立ては、当たっている面と外れている面がある。当たっているのは、ウェイモがUberの外に出口を作った点だ。外れているのは、ウェイモがUberとの併走を続ける点である。Uberのロボタクシー部門にとって本当の勝負は、30社超の提携先が自社アプリへ向かわず、Uberを使い続けるかどうかにある。運営中心への再編は、その答えでもある。充電や車両管理、1都市あたりの車両密度といった「回す力」を磨けば、提携先がUberを使い続ける理由になる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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