自動運転車 普及は2040年以降に持ち越しか コスト増と技術の課題で

マッキンゼーが調査レポートを発表



自家用車が完全自動運転で「当たり前」になるのは、2040年以降に持ち越される。米コンサルティング大手マッキンゼーがまとめた業界リーダー調査から、こうした見通しが浮かび上がった。個人が所有する車の大衆市場では、2035年になっても主流は運転支援機能L2+にとどまると専門家の約半数が見ている。運転席から人が完全に消える自家用車の普及は、その先の話になる。


運転手のいないロボタクシーは、米国と中国の一部都市ですでに走り、世界での本格展開は2030年に見込まれる。事業者が運行するフリートは早く、個人が買う自家用車は遅い。この時間差こそが、今回の調査の核心である。全体の普及時期は前回2023年の調査から平均1〜2年ずれ込んだ。

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■自家用車の完全自動運転、大衆化は2040年以降へ

個人が自家用として自動運転車を購入し、運転席に人を必要としない完全自動運転で大衆に広まるタイミングが2040年以降になりそうだ。

マッキンゼーの調査では専門家の49%が、自家用車、つまりロボタクシーを除く個人所有車の大衆市場は、2035年になっても運転支援機能L2+を中心に回ると見込んだ。L2+は、システムが加減速や操舵を助けつつも、運転の主体はあくまで人間にある水準を指す。完全自動運転ではない。

さらに、より高度な条件付き自動運転L3は、いまや高級車向けの選択装備という位置づけが強まっている。大衆車の標準ではなく、限られた層に向けたニッチな機能と見なされ始めた。自家用車で運転席から人が完全に消えるのは、2035年の先、つまり2040年以降になるという読みが、ここから導かれる。技術の頂点ではなく、大衆が手にする時期を見たとき、自家用の完全自動運転はなお遠い。


【自動運転ラボの視点】
自家用車の完全自動運転は2040年以降。この見立ては悲観ではない。所有車は稼働率が低く高価なセンサーを正当化しにくい。だからこそ大衆化は遅れる。現実を直視した数字と言える。

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■ロボタクシーの世界普及は2030年、自家用車より先に広がる

自家用車が2040年以降なら、事業者が運行するロボタクシーはどうか。答えは明快で、こちらははるかに早い。マッキンゼーは、大規模なロボタクシーの世界展開が2030年になるとの見通しを示す。


すでに現実は動いている。運転手のいないロボタクシーは、米国と中国の一部都市で商用運行に入り、世界の乗車回数は週70万回を超えた。内訳を見ると、米国が週45万回超、中国が週25万回超を占める。技術は実証段階を抜け、日常の移動手段になりつつある。

それでも、世界規模での本格展開の時期は1年ずれた。従来は2029年と見られていたが、今回の調査では2030年へと後ろ倒しになった。加えて、専門家はロボタクシーを、完全自動運転L4がまず商用化する最初の用途と位置づける。自家用車ではなく、事業者のフリートが先陣を切る。車両を終日稼働させられるロボタクシーは、高価なセンサーのコストを回収しやすいからだ。ここに、自家用車との決定的な差がある。

【参考】関連記事としては「自動運転、日産が世界初「自家用車レベル4」発売へ」も参照。

■後ろ倒しの3つの要因

では、なぜ全体の普及が後ろ倒しになり、自家用車とロボタクシーで時期に差がつくのか。マッキンゼーは主な要因を三つ挙げる。

第一が、開発・検証コストの増加である。自動運転システムはセンサーや高性能コンピューターに加え、認識や判断を担うソフトウェアの開発、そして安全性を裏付ける膨大な検証を必要とする。とくにまれにしか起きない状況、いわゆるエッジケースへの対応には果てしない試験が要る。この負担は、車両を終日稼働させて費用を回収できるロボタクシーより、稼働率の低い自家用車にとって重くのしかかる。

第二が、地域ごとの技術スタックの分化だ。自動運転を成り立たせる技術の組み合わせが国や地域ごとに枝分かれし、共通の土台が定まりきらない。開発リソースが分散し、規模の経済が働きにくくなる。マッキンゼーは、米国と中国が開発の速さや規制の後押しで先行し、欧州やアジアの他地域が続く構図を描く。

第三が、安全性と規制対応をめぐる不確実性である。どの国でどこまで公道走行が認められるか、その枠組みがなお流動的で、事業計画を描きにくい。この三つが重なり、普及の時期を押し下げている。

■新車搭載率で見る後ろ倒し、2035年でも最大37%

後ろ倒しの度合いは、新車に占める自動運転機能の搭載率にも表れる。マッキンゼーは自動車業界の不確実性を踏まえ、複数のシナリオを示している。

普及が遅れる遅延シナリオでは、自動運転レベル3以上の機能を積んだ新車の割合は、2030年でわずか4%、2035年でも17%にとどまる。相対的に順調に進む基本シナリオでも、2030年で12%、2035年で37%という水準だ。つまり2035年を迎えても、新車に占める搭載比率は最大で4割弱にすぎない。多くの新車は、なお人が運転する車のままである。

この数字は、自家用車の完全自動運転が2040年以降になるという見立てと符合する。搭載率が2035年に頭打ち気味である以上、運転席から人が消えた自家用車が街にあふれるのは、さらにその先だ。過度な期待を一度そぎ落とし、コストと安全を積み上げた先に本格普及がある。後ろ倒しが映すのは、悲観ではなく現実路線への修正と言える。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル2+、レベル2++とは?」も参照。

自動運転レベル2+、レベル2++とは?

■2040年以降への持ち越しが自動運転業界に問うもの

ロボタクシーは2030年、自家用車の完全自動運転は2040年以降。この二つの時計が別々に進むという見立ては、自動運転業界に静かな問いを突きつける。

追い風は確かに吹いている。ロボタクシー市場は米中で広がり、日本でもWP.29でレベル3・4を含む自動運転システムの国際基準が合意され、2027年1月頃の発効が見込まれる。だからこそ、マッキンゼーが示した1〜2年の後ろ倒しと、自家用車の大衆化が2040年以降という現実は、冷や水のように響く。事業者のフリートで実感できる前進と、自分の車で完全自動運転を手にするまでの距離。この二つのギャップをどう受け止めるかが、これからの焦点になる。

問われているのは、期待の大きさではなく、コストと安全を積み上げる持続力だ。自家用車の2040年以降という持ち越しを悲観の材料とするか、地に足のついた実装への号砲とするか。ロボタクシー市場の主導権争いが激しさを増すなか、その受け止め方こそが、次の勝負を分ける土台になる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
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