Amazonが自動運転タクシーサービスをスタートする。子会社の自動運転開発企業Zoox(ズークス)が、今後数週間以内に米カリフォルニア州サンフランシスコとネバダ州ラスベガスの市街地にドライバーレスの自動運転タクシーを導入するという。
米国では、すでにGoogle系の自動運転開発Waymoが自動運転タクシーを商用化している。GoogleにとってAmazonの自動運転タクシーは、強力なライバルになるかもしれない。
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■ロボタクシーは1日16時間運行へ
Zooxの創業者でCTO(最高技術責任者)であるジェシー・レビンソン氏は、自動運転タクシー(ロボタクシー)専用車両の配備の準備が「今後数週間以内」に整うことを、サンフランシスコで開催された技術会議の場で明かした。この車両は4人乗りで、ハンドルなどの手動制御装置を備えないオリジナルの自動運転専用モデルになる。
サンフランシスコ最大の地区の1つであるSouth of Market(SOMA)エリアやラスベガスのメイン通りであるストリップからサービス提供を開始し、今後ほかのエリアにも拡大される予定だ。ただし最初は少ない車両数で運行するという。
ロボタクシーは1日16時間運行する。自動運転車は人や車の往来が少ない夜間の時間帯から導入を始めるべきという声が少なくないが、Zooxのロボタクシーは「最も忙しい16時間」に運行するといい、日中も含む。夜間は道路が閑散としているため、Zooxにとってはデータ収集という面でロボタクシーを運用するメリットが少ないという理由からのようだ。
■2026年に専用車両の量産スタート
ZooxのレヴィンソンCTOは、「フォスターシティ(Zooxの本社があるカリフォルニア州の都市)、サンフランシスコ、ラスベガスの特定エリアに数十台のロボタクシーを導入する予定で、来年には数倍に拡大する予定だ」としており、「2026 年には、大規模な量産車の生産が開始されることになる」と計画を語っている。
最初は、「Zooxエクスプローラー」として招待された選ばれた顧客のみがサービスを利用できることになる。これは、Waymoが2018年に世界で初めてロボタクシーの商用サービスを開始した際に、一部のユーザーのみを対象としていたのと同様の手法になる。
ロボタクシーの詳細については来年早々に発表予定だが、技術的に難易度が低いラスベガスでの運用が最初に開始される可能性が高いようだ。ラスベガスの主要ホテルと提携し、ホテルのメインエントランスで乗客を送迎できるようにするという。
■2014年設立のZoox
Zooxは、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの研究を進めていたジェシー・レビンソン氏と、デザイナー兼起業家のティム・ケントリー・クレイ氏らが2014年に設立した。
2019年にインテルでCSO(最高戦略責任者)などを歴任したセネガル出身のアイシャ・エバンス氏をCEO(最高経営責任者)に迎え、事業戦略面も本格化させた。同じ時期に、サンフランシスコで行っていた公道実証をラスベガスにも拡大している。
2020年には車両の生産工場が稼働開始し、最初の量産モデルVM6の量産に着手した。同年にはエバンスCEO主導のもとアマゾンの傘下になることが発表された。買収額は13億ドル(当時のレートで約1,400億円)と言われている。
Waymoが市販車に自動運転システムを搭載し、ロボタクシーサービスを展開している一方、Zooxのロボットタクシーはハンドルやブレーキといった手動制御装置を備えない完全自動運転モデルとなっている。
トヨタの「e-Palette」やGM傘下Cruiseの「Origin」のようなボックスタイプで、全長3,630ミリ×高さ1,936ミリのコンパクトな車内に4人が乗車できる。前後の区別がない仕様で、対面方式で乗車するスタイルだ。乗客は設置されたスクリーンで到着予定時刻やルートの確認、音楽や空調設定などを行うことができる。
■Waymoの牙城を崩すライバルに?
米国におけるロボットタクシーサービスの実用化は、Waymoに始まり2番目がCruiseとなった。しかしCruiseは2023年10月に重大な事故を起こしたことなどにより、運行を停止中だ。EV(電気自動車)大手テスラもロボットタクシーサービス計画を2024年10月に発表したが、実際に運行するのはまだ先になりそうだ。
予定通りなら、Zooxは米国で3番目の本格的なロボットタクシーサービスの提供会社となる。Cruiseがサービス停止中のため、米国では実質WaymoとZooxの一騎打ちになると考えられる。ZooxがどこまでWaymoの牙城を崩せるのか、今後の展開範囲拡大が期待される。
【参考】関連記事としては「Amazonの自動運転タクシー、結局「テスラより先」に一般展開へ」も参照。