ホンダ、熟練運転手を「AIの師匠」に!”初めての道”でも自動運転実現へ

0シリーズの目標は「全域アイズオフ」

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出典:Ian Muttoo / Flickr (CC BY-SA 2.0)

ホンダは次世代自動運転技術として、走行エリアを限定しない汎用性の高いシステムを目指しているようだ。2026年に市場投入予定の「Honda 0シリーズ」に搭載する自動運転レベル3は、OTAアップデートによりその適用範囲の拡大を可能とするシステムを搭載し、「全域アイズオフ」を実現する構えだ。

世界初のレベル3量産車の発売から早3年余りが経過。ホンダの次の一手に注目が集まっていたが、新規格のBEVをベースに自動運転機能の拡充が進められることになりそうだ。

最新リリースをはじめ、ホンダのこれまでの自動運転分野における取り組みをまとめてみた。特に注目してほしいのが、熟練ドライバーを「AIの師匠」的な存在にしてその行動を学ぶ、という取り組み。これにより、初めて走る道でも的確なリスク予測とスムーズな回避が可能となり、より早く自動運転・運転支援範囲の拡大を実現することができるという。

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■Honda 0シリーズの概要

全域レベル3に向け教師なし学習で開発を加速

ホンダは2024年10月、「Honda 0 Tech Meeting 2024」を開催し、新たなEV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」への搭載を予定している次世代技術を公開した。

0シリーズは「Thin, Light, and Wise.(薄く、軽く、賢く)」という新たな開発アプローチによりゼロからの発想で創り出す新しいEVシリーズで、専用開発したアーキテクチャを軸に以下の5つのコアバリューを提供する。

「Wise」の観点では、ホンダがこれまで培ってきた知見と知能化技術の進化により、クルマそのものが賢くなる独自のソフトウェアデファインドビークル(SDV)を実現する。

具体的には、独自のビークルOSを搭載し、コネクテッド技術の進化と合わせ一人ひとりに最適化した知能化技術で新しい移動体験の提供を目指す。車両購入後もクルマの機能をOTA(Over The Air)アップデートすることで、魅力的な商品へと進化させていく。

ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムは、運転中だけでなく、自宅から目的地まで、安全・安心でシームレスな人の移動を支援し、出かけたくなるような体験を提供することを目指す。

2021年に実用化したレベル3技術を活用し、より多くの利用者に自動運転車を提供していく。LiDARによる高精度かつ信頼性の高いセンシングや、全周囲の高精細カメラセンシング、独自のAIやセンサーフュージョンに対応可能なハイパフォーマンスECUの装備などさらなる進化を加え、高速道路での渋滞時アイズオフ技術を皮切りに、OTAアップデートを通じてさらに運転支援・レベル3適用範囲の拡大を可能とするシステムを搭載する。

また、出資している米Helm.aiの「教師なし学習」によるAI技術と、熟練ドライバ―の行動モデルを組み合わせた独自のAI技術によって、より少ないデータ量でAIが学習し、精度の高い運転支援を実現する。簡単に言えば、熟練ドライバーを「AIの師匠」的な存在にしてその行動を学ぶ、ということだろう。これにより、初めて走る道でも的確なリスク予測とスムーズな回避が可能となり、より早く自動運転・運転支援範囲の拡大を実現することができるという。

この技術を進化させることで、世界に先駆けて「全域アイズオフ」を実現し、さらに安全・安心なADAS・自動運転の提供を目指すとしている。

出典:ホンダプレスリリース

まずは全域レベル2+実現か?

ポイントは「全域アイズオフ」だ。これは、高速道路や一般道路問わず、走行可能なすべての道路でレベル3を実現するということだ。走行エリアを区切って実現するレベル4よりもハードルが高く、非常にインパクトの大きい目標設定と言える。

最終的な実現目標時期などは不明だが、2020年代後半に投入する0シリーズにおいて、まず高速道路における自動運転領域を拡大し、スマートフォン操作や場合によっては会議など、自動運転中にできるタスクの拡大を図っていき、同時に一般道における一定条件下でのハンズオフの実現を目指す方針を掲げている。

まずはレベル2+に相当するハンズオフ技術の実装範囲を拡大し、ブラッシュアップを重ねてレベル3に進化させていくのが王道と思われる。全域アイズオフの実現は2030年代と思われるが、どういったロードマップで進化と実装を進めていくのか、要注目だ。

なお、0シリーズは北米を皮切りに、2026年から2030年までに小型車から中・大型車まで7モデルをグローバルで展開していく予定で、新開発した EV専用プラットフォームに薄型バッテリーパックや新開発した小型e-Axleを組み合わせ、高い操縦安定性と軽量化を図っていく。

CES2024では、0シリーズのコンセプトモデル「SALOON」「SPACE-HUB」を発表している。BEV領域における新たなフラッグシップとして期待されるSALOONなどがどのような姿・スペックで社会実装されるのか要注目だ。

【参考】CES2024におけるホンダの発表については「ホンダの新EVコンセプトは「ハンドルあり」 自動運転レベル4は当分先か」も参照。

ホンダの新EVコンセプトは「ハンドルあり」 自動運転レベル4は当分先か

■ホンダの自動運転分野の取り組み

世界初の量産車向けレベル3を実現

ホンダは2020年11月、レベル3に求められる国土交通省の型式指定を取得したと発表した。高速道路渋滞時など一定条件下でシステムが運転操作のすべてを担う自動運行装置「Traffic Jam Pilot(トラフィック・ジャム・パイロット)」の誕生だ。

このトラフィック・ジャム・パイロットを含む「Honda SENSING Elite」を搭載した新型LEGENDは2021年3月にリース限定販売され、自家用車におけるレベル3を世界で初めて実現した。

【参考】新型レジェンドについては「ホンダが自動運転レベル3車両を3月5日発売!新型「LEGEND」がデビュー」も参照。

LiDAR5基を含むセンシングスイートや自車位置認識技術、ドライバーモニタリングシステム、サイバーセキュリティ、ソフトウェアアップデート機能など各種要件を満たした自動運行装置で、高速道路の渋滞走行時、時速30キロ以下でハンズオフ運転中などの作動条件を満たすことで、時速50キロ以下限定でレベル3自動運転を可能にしている。

自動運転時はすべてのタスクをシステムが担うため、ドライバーは一切の運転操作や周囲の監視を免れる。ただし、システムが何らかの原因で自動運転継続困難に陥った際は迅速にドライバーが対応しなければならないため、睡眠などは厳禁となる。あくまで「アイズオフ」なのだ。

量産車におけるレベル3実現メーカーは、2024年10月時点でホンダ、メルセデス・ベンツ、BMWの3社に留まる。メルセデスはSクラスとSクラスのEV版「EQS」、BMWは7シリーズにレベル3システムの搭載を可能にした。

ただ、いずれも最高時速60キロ以内など高速道路渋滞時に限られる。世界的に量産車におけるレベル3は苦戦していると言ってよい状況だ。

今後の焦点は、高速道路の通常走行を可能にする制限速度を満たすレベル3の実現だろう。この域に達すれば、レベル3の実用性は格段に増すものと思われる。

【参考】自動運転レベル3については「自動運転レベル3とは?(2024年最新版)」も参照。

Helm.aiに出資

出典:Helm.ai公式サイト

ホンダは2022年1月、ソフトウェア技術の開発強化に向けHelm.aiに出資したと発表した。同社とは、オープンイノベーションプログラム「Honda Xcelerator(ホンダ・エクセラレーター)」を通じて2019年からコラボレーションを行っており、関係性を深めAI技術やコンピュータビジョン領域における開発力をより高める狙いだ。

Helm.aiは、教師なし学習によって効率的にAI画像認識能力を高める技術開発を進めているスタートアップだ。例えばAIに「自転車」というオブジェクトがどのようなものか学ばせる場合、教師あり学習では自転車が写った画像1枚1枚に「これが自転車」とラベルを付け、その特徴を学ばせていくが、教師なし学習はラベル付けなど行わず、AIの独自判断で似たような特徴・規則性を持つオブジェクトを分類させていく。

その結果、仕分けされたあるグループの特徴が自転車に一致していれば、それを「自転車」と教える仕組みだ。

AIの画像認識においては、数万、数十万、数百万枚単位の画像を用いるが、それにいちいちラベル付けをする手間は非常に膨大となる。こうした手間を省き、効率的に開発を進めることを可能とする技術をHelm.aiは開発しているのだ。

この技術が「全域アイズオフ」にどのように生かされていくことになるのか、必見だ。

自動運転、生成AIが「検証用動画」を無限に作成!米Helm.aiが発表

自動運転タクシーを2026年初頭にも実現

ホンダは2023年10月、米GM、Cruise陣営と共同で2026年初頭にも東京都内で自動運転タクシーサービスを開始すると発表した。

3社は2018年から自動運転分野での協業を続けており、これまでに運転席を備えない自動運転サービス専用もびりてぃ「Origin(オリジン)」などを発表している。

このオリジンを導入し、2026年初頭に東京都内のお台場エリアで自動運転タクシーサービスを開始する計画だ。数十台規模のフリートからスタートし、最終的に500台規模の運用を見込んでいる。順次台数を増加し、サービス提供エリアの拡大を目指す方針だ。

ただ、Cruiseは2023年10月にサンフランシスコで人身事故を起こし、サービス許可が凍結されるなど事業が停滞している。GMは2024年に入ってからオリジンの開発停止を発表しており、ホンダもこの余波を受けることになりそうだ。

Cruiseは新CEOのもと有人実証を再開しているが、開発に遅れが生じることは否めない。ホンダの計画もモデルや実現時期の変更などを余儀なくされる可能性が高いが、最悪、計画がとん挫することがないよう願いたい。

【参考】ホンダの自動運転タクシー構想については「ホンダの自動運転タクシー、Googleすら未実現の「運転席なし」」も参照。

ホンダの自動運転タクシー、Googleすら未実現の「運転席なし」

日産とSDVプラットフォームの基礎研究に着手

ホンダと日産2024年8月、次世代ソフトウェアデファインドビークル(SDV)向けプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究契約を締結したと発表した。

両社は同年3月、自動車の知能化・電動化に向けた戦略的パートナーシップに向け覚書を交わしており、これに基づきSDVプラットフォームの基礎研究を一年を目途に完了させる方針を打ち出した。

また、バッテリー領域やe-Axle領域などでのパートナーシップも協議を進めている。三菱自動車も新たに参画しており、将来、大掛かりな業界再編につながっていくのかも注目される。

自動車の知能化の部分での協業が不明だが、場合によっては自動運転領域での共同開発に着手する可能性もゼロではない。日本勢の連携の行方に要注目だ。

ホンダ・日産、自動運転技術を「共通システム化」か GM Cruiseとも一本化?

ソニー・ホンダモビリティの動向にも注目

新ブランド「AFEELA」の展開に向けソニーとホンダが立ち上げた合弁ソニー・ホンダモビリティの動向も見逃せないところだ。

量産車の先行受注を2025年前半に開始し、2026年春をめどに北米から納入を開始する予定で、ホンダ、ソニーそれぞれの持ち味がどのように生かされていくか早くも注目が高まっている。

自動運転関連では「進化する自律性」を掲げ、特定条件下での自動運転機能としてレベル3の搭載を目指すとともに、市街地などより広い条件下でのレベル 2+の開発にも取り組むこととしている。

0シリーズと市場投入時期が被るだけに、自動運転機能において明確に差別化が図られるのかなど、どのような位置づけでブランドを展開していくのか、同社の動向に注目したいところだ。

【参考】ソニー・ホンダモビリティについては「ソニーとホンダ、自動運転車で「運転以外の楽しみ」提供」も参照。

ソニーとホンダ、自動運転車で「運転以外の楽しみ」提供

■【まとめ】EV戦略と自動運転戦略がリンクする?

プラットフォームが一新されるEV戦略とともに自動運転戦略も動き出していく印象だ。おそらく多くの自動車メーカーが同様の戦略を採用しているものと思われる。

現状、BEVは時期尚早とする見方が強いが、2025年から2030年にかけ再び市場を大きく伸ばしていくことが予想される。

この波に、自家用車における自動運転がどのように乗っていくのか。要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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