米Uber、運転手に「テスラのライバル社のEV」の特別割引を提供

中国BYDと提携、まず欧州と中南米から



テスラのイーロン・マスクCEO=出典:Flickr / Public Domain

配車サービス大手の米Uber Technologiesは、中国のEV(電気自動車)大手BYD(比亜迪)と複数年の戦略的提携を結んだことをこのほど発表した。世界の主要な市場において、BYDのEV10万台を新たにUberのプラットフォームに導入することを目的としたものになる。

この提携により、UberのドライバーがBYDのEVを特別価格で購入できるようになる。まずは欧州と中南米でサービスの提供がスタートし、今後中東やカナダ、オーストラリア、ニュージーランドにも拡大していく予定だという。


BYDはよく「テスラのライバル」と称される。テスラのイーロン・マスクCEOからすれば、今回のUberとBYDの提携は、テスラ車の販売機会を逃したことに他ならず、マスク氏の今後の動きが注目される。

■複数年提携、目標は10万台のEV販売

Uberのドライバーは、一般的な自家用車所有者よりも5倍の速さでEVに乗り換えているという。ただしEVの価格と融資の有無が、主な乗り換えの障壁になっている。

BYDの車両は手頃な価格に加え、メンテナンスや修理のコストが低めに設定されている。さらに展開されているモデルが幅広く、優れたバッテリー品質と製造品質により、ライドシェアに適しているという。

そこでUberとBYDが提携することにより、UberのドライバーのEV所有にかかる総コストを削減し、世界中でUberのプラットフォームにおけるEVの普及を加速させる。また、数百万人の乗客に環境に優しい乗り物を紹介するということも目指す。


具体的には、この提携によりUberのドライバーはクラス最高の価格設定と融資を利用できるようになるという。さらに提携内容には、ドライバーの電動化を支援するための充電や車両メンテナンス、保険の割引、融資やリースの提供なども含まれる可能性があるようだ。

出典:Uberプレスリリース

■将来的には自動運転車の導入でも提携

UberとBYDは、将来的にUberのプラットフォームにBYDの自動運転対応車両を導入する際にも協力する予定のようだ。

世界最大のオンデマンド・モビリティおよびデリバリー・プラットフォームであるUberは、自動運転車の技術を世界の利用者に大規模に提供するのに適した立場にある。自動運転車や自動運転配送ロボットの開発・製造を手掛けるBYDにとっての展開先として、Uberはうってつけだというわけだ。

UberのCEO(最高経営責任者)であるDara Khosrowshahi氏は「この種の協定としては世界最大規模であり、この提携がドライバーや乗客、都市にもたらす恩恵に興奮している」と語っている。


UberのドライバーがEVに切り替えることで、一般のドライバーと比較して最大4倍のCO2排出削減効果が期待できるようだ。ちなみに、多くの人が初めてEVを体験したのは、Uberを利用したときだったという。Khosrowshahi氏は「私たちは世界中のより多くの人々にEVの利点を実証できることを嬉しく思う」ともコメントしている。

またBYDの会長兼社長であるChuanfu Wang氏は、「UberとBYDはよりクリーンで環境に優しい世界を目指して革新に取り組むというコミットメントを共有している」と語った。

■Uber×BYDのタッグでEV化が促進

世界最大規模のオンデマンド・EVネットワークを持つUberと、中国を代表するEVメーカーであるBYDが協力することで、今後Uberの車両のEV化が加速するのは確実だ。中国のほか、東南アジアでもトップレベルのEVシェアを誇るBYD。「UberといえばBYD」といったイメージも根付いていくことになるのだろうか。

ただし、現在発表されているBYDの割引サービスの提供先には、米国が入っていないのが気になる。Uberは米国においてはまた別のEVメーカーと手を組む可能性もあるのだろうか。動向に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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