「飛び出し坊や」の看板、自動運転車による「誤認識」の懸念浮上

天下一品や百均のロゴの「勘違い事例」が多発

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自動車メーカー各社のADAS(先進運転支援システム)による企業ロゴの看板の誤認識が相次いで報告されている。代表的なのが、ラーメンチェーン「天下一品」の企業ロゴを「進入禁止」と誤認識したり、100円ショップのロゴ内に描かれた「100」の数字を「時速100キロ制限」と勘違いしたりといったものだ。

こうした中、通学路などで見かける「飛び出し坊や」の看板も、将来的に自動運転車が本当の人間だと誤認識して、設置場所で毎回一時停止をしてしまう懸念が浮上している。ただちそのことが事故に結びつくものではないものの、自動運転タクシー自動運転バスの円滑な運行に支障を来す可能性がある。

■「飛び出し坊や」を人間と間違える?

「飛び出し坊や」とは、子どもの道路への飛び出しの注意喚起のため、ドライバーに向けて設置された看板やキャラクターのことを指す。デザインやイラストはさまざまあるが、基本的には男の子が横から道路に飛び出そうとする格好の看板になっている。

レトロ調のイラストで黄色と赤の服を着た男の子が今にも飛び出しそうな看板や、最近では黄色の通学帽をかぶった男の子の下に「とびだし注意」と書いてあるものもある。看板の種類は、設置された時代や地域によって異なってくるようだ。

この看板を、自動運転車が人間が飛び出そうとしていると誤認識し、一時停止してしまうかもしれないというわけだ。

もちろん、その看板が設置されている場所は、児童が飛び出して来る恐れがあるため、この看板の設置によって自動運転車の安全走行が促されれば、悪いことではない。しかし、そもそも看板がなくても自動運転車が人間をセンサーで検知し、適切な回避行動を行える技術水準であれば看板は必要ない。

■これまでに確認された誤認識の実例

自動運転車は、LiDARなどのセンサーやAI(人工知能)による画像認識技術により、周囲の物体を認識・計測することなどで自動走行を実現させている。自動運転やADASの実証実験や実用化が進むとともに認識技術の精度は高まっているが、いまだ看板の誤認識が相次いでいるという状況にある。

例えば、国内ではホンダのADAS「Honda SENSING(ホンダセンシング)」が天下一品のロゴを「車両進入禁止」の道路標識と誤認識したり、100円ショップ「セリア」や「キャンドゥ」のロゴにある「100」の文字をホンダ車や日産車や「時速100キロ制限」の看板と誤認識したりといったようなものだ。そのほか、「国道○○号線」など道路の番号標識を制限速度の標識と間違えて認識したといった事例もあるようだ。

【参考】関連記事としては「天下一品のロゴ、ホンダ車が「進入禁止」と再び誤認識」も参照。

これまで誤認識された看板は、色やデザインなどが一致していなくても文字やパッと見の印象などで誤認識してしまっていた。となると、飛び出し坊やの看板も、平面であるものの正面から見ると人間と誤認識してしまう可能性もありそうだ。また、工事現場で見かけるLED看板の「旗振り警備員」や新規オープン店の前に設置された風船人形なども、人間と誤認識するのでは?とも考えられる。

特に夜間や夕暮れ時などは人間でも一瞬見間違えることがありそうな看板も時にはある。最新の技術が搭載された自動運転車といえど、勘違いすることはあるかもしれない。

【参考】関連記事としては「数字含むロゴ、速度標識との「誤認識の恐れ」で全面禁止へ?」も参照。

■認識の仕組みのブラッシュアップが必要に

米国ではGoogle系Waymoのドライバーレスの自動運転タクシーが、「STOP」(ストップ)という道路標識をプリントしたTシャツを着た人物を道路標識と勘違いし一時停止したことが話題になった。それを行った人物は悪ふざけで動画を撮影したため、故意でなければこのようなことは起こらないとは思える。

しかし、走行中の道路に現れる看板や標識、オブジェなどを全てすぐに正しく認識し、判断を下すことは、容易ではない。むしろ、自動運転車向けのQRコード版の標識を設置したり、そもそも道路上の標識は読み取らずにGPSによる位置情報とクラウド上の標識情報を結びつけたりする方が現実味がある。

米国や中国では自動運転車がすでに実用化済みで、日本でも今後数年で首都圏を中心に一気に自動運転タクシーが展開される予定だ。自動走行技術の進歩とともに、認識の仕組みのブラッシュアップも求められる。

【参考】関連記事としては「Googleの自動運転車、Tシャツの「STOP」絵柄に騙される」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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