「空飛ぶ軽トラ」開発のプロドローン、純損失1.3億円 第8期決算

トヨタグループのジェイテクトも出資する注目企業



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

産業用ドローンや「空飛ぶ軽トラ」の開発を手掛ける株式会社プロドローン(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:戸谷俊介)の第8期決算公告が、このほど官報に掲載された。当期純損失は1億3,175万円であった。

官報では第6〜7期の決算データは見当たらなかったが、参考のために第5期の数字を掲載すると、第5期の当期純損失は2億8,696万円であった。


■決算概要(2022年12月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 458,710
固定資産 6,797
資産合計 465,508
▼負債及び純資産の部
流動負債 140,435
賞与引当金 8,850
受注損失引当金 1,172
製品保証引当金 4,770
固定負債 224,390
株主資本 100,683
資本金 100,000
資本剰余金 132,439
資本準備金 132,439
利益剰余金 △131,756
その他利益剰余金 △131,756
(うち当期純損失)(131,756)

■産業用ドローンを開発するプロドローン
出典:プロドローン公式サイト

2015年設立のプロドローンは「地域から一番信頼されるドローンカンパニーになる」をビジョンに、中部圏におけるドローンエコシステムの構築を目指している企業だ。ドローンの研究開発のほか、製造も自社で行っている。

トヨタグループのジェイテクトと2023年2月から技術協力を開始し、同年4月にはジェイテクトがプロドローンへ出資したことを発表した。これによりジェイテクトの最先端技術を搭載したプロドローンの次世代大型ドローン「空飛ぶ軽トラ」の開発を進めていくとしている。

順調に資金調達を進めており、2023年10月には総額10億3,000万円のシリーズC資金調達を完了したことを発表した。ジェイテクトや神戸トヨペット、名古屋鉄道、ホンダカーズしなの、モビリティナビ、あいぎんベンチャーファンド2号投資事業有限責任組合が新たに株主となり、愛知銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行から借入れを行ったという。


なお2021年1月には、官民によるスタートアップ支援プログラム「J-Startup」の地域版である「J-Startup CENTRAL」に選定されている。

■「空飛ぶ軽トラ」ってどんなモビリティ?

プロドローンは、空飛ぶ軽トラのコンセプトモデルである新機体「SORA-MICHI」を2023年10月に発表した。これは50キログラム積載し航続距離50キロメートルを実現するカーゴドローンだ。平時には中山間部や離島で医薬品配送などを行い、災害時は孤立集落などに救援物資を輸送することができるモビリティになっている。

SORA-MICHIは、通常は地上をAGV無人配送ロボットとして走行するが、川を渡ったり山に登ったり海を越えたりといった空の方が速く、総合的に環境負荷が少ない場合は飛行する。着陸後はラストワンマイルをAGVとして再び地上走行する。

愛知県は、2030年に空のUTM(無人航空機システム交通管理)と地上における自動運転の路車間・車車間通信が初めて統合され、シームレスな交通環境が運用開始されることを目標にしている。SORA-MICHIの開発は、この目標に向けての官民連携プロジェクトに採択され、行われたものだ。


■さまざまな用途向けの機種を開発

プロドローンが量産を開始したマルチコプター「PD6B-Type3」は、国内で初めてドローン配送事業の本格運用に採用された最新機体で、現在も長野県伊那市で配送事業を行っているという。

また長距離長時間運用を可能にしたシングルローター機「PDH-GS120」や、小型レーザー測量機用ドローン「PD4B-M」、着水・離陸可能な防水型ドローン「PD4-AW-AQ」などの開発も手掛けている。

ドローン開発企業は多数あるが、ここまでさまざまな用途向けの機種を開発している企業は珍しい。また、自動運転車とドローンを組み合わせた移動の取り組みはこれまでにもあったが、プロドローンの陸空両用のドローンはそれをさらに超えるための試みとも言えそうだ。

実用化された場合、山間部への医薬品配送や災害時の物資輸送で活躍することが予想される。同社の今後の進捗に注目したい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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