「しゃべる自動運転車」実現 ティアフォー、生成AI技術を活用

クルマと人間がコミュニケーション可能に



出典:ティアフォー公式Medium

自動運転スタートアップである株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:加藤真平)は、クルマが考えて人間と対話することを可能にする自動運転インターフェース「CT3」を開発したことを、このほど発表した。

つまり「しゃべる自動運転車」を実現する技術で、「大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)」や「音声認識(Automatic Speech Recognition:ASR)」、「テキスト音声合成(Text-To-Speech:TTS)」などの先進的なAI(人工知能)技術を活用することで、クルマが思考し、人間と対話することができるようになるという。


■CT3でクルマと人が会話可能に

Appleの「Siri」やGoogleの「Googleアシスタント」、Amazonの「Alexa」といった音声アシスタント機能を用いると、人間とコンピューターが会話し、コンピューターが人間の行動を助けることができる。これらは現在日常的に使われている機能であるが、同様のことがモビリティ、特に自動運転においても可能になった場合、どんなユーザー体験が待っているのだろうか──。そんな発想から、ティアフォーはCT3を開発するに至ったという。

CT3は「Cars That Think and Talk(考えるクルマ、話すクルマ)」をコンセプトに開発された革新的な自動運転インターフェースだ。これまでのクルマは、ボタンやレバー、ディスプレイなどのデバイスが物理的インターフェースとして必要であった。しかしCT3の機能により、これらのデバイスを使用することが必要なくなり、クルマとの対話を通じて直感的で自由な操作が可能になる。

■直観的で自然な会話にするための工夫

CT3では、ウェイクワード(音声入力デバイスにおいて音声認識を開始させるためのキーワード)検出や発話終端検出を活用してLLMの応答時間を短縮したり、アバターやアイコンとの連携により応答時間の長さを調整したりと、ドライバーや乗客がクルマと直観的で自然な会話を楽しむためにさまざまな工夫を施しているという。

さらにオープンソースの自動運転ソフトウェアである「Autoware(オートウェア)」とも統合し、リアルタイムでクルマの状態や走行環境を把握でき、ドライバーや乗客は安心感を得ることが可能になっているようだ。


TTSは、今話題の生成AIの一種と言える。生成AIはさまざまなコンテンツを生成できるAIのことで、ジェネレーティブAIとも呼ばれる。自ら学習を重ねることでテキストや画像、音声などの新たなコンテンツを生成できるとして注目を集めている。

■CT3搭載の自動運転車がお台場を試験走行
出典:ティアフォー公式Medium

このCT3は、お台場で自動運転の試験走行を行っているJPNTaxiの車両で使われているという。

ティアフォーの公式YouTubeでは、その様子が紹介されている。乗客が「FIVE(ファイブ)、日本科学未来館へ行ってください」と目的地を指示すると、クルマは「目的地を設定しました。出発の準備が整うまで少々お待ちください」と返事をする。(なお社長である加藤氏によると、「FIVE」というワードについては後日種明かしされるようだ)

クルマが「出発準備が完了しました。出発しますか?」と問いかけ、乗客が「発進してください」と返事をすると、クルマは「承知しました。出発します」と話し、走行を開始する。その後クルマは「まもなく目的地に到着します」と声かけをする。乗客が発した「ありがとうございます」には、「こちらこそ、ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています」と返している。人間同士の会話のようなスムーズさだ。


多言語に対応可能となるなら、急増するインバウンド対応にも役立つかもしれない。

■CT3もオープンソースのソフトウェアとして公開へ

ティアフォーの子会社Human Dataware Lab.の取締役兼COOの林知樹氏は、CT3の開発に携わる主要メンバーだ。同氏は「CT3は、自動運転車両を単なる移動手段ではなく、よりヒトに寄り添った身近な存在へと変える可能性を持つインターフェースと考えています」「単なる会話にとどまらず、ユーザーの状態を常に把握し、自動的に提案して実行してくれる、そんな体験を実現したい」と意欲を見せている。

また加藤氏は「CT3は、経路の指示など、基本的にドライバーや乗客が使います。ですが、この技術が本当に輝く瞬間は、Autowareでは対応が難しいところで、ドライバーや乗客、あるいは運行オペレータがクルマと対話し、具体的な指示を出す瞬間」「例えば、路上で目の前に駐車してあるクルマを避けると対向車線に出してしまうけど、それでも安全なのか補完的な指示を出すようなシナリオです」とコメントしている。

ティアフォーはCT3についても、オープンソースソフトウェアとして公開するという。会話できる自動運転車という、新しい視点での同社の開発に今後も大注目だ。

【参考】関連記事としては「ティアフォーの自動運転/Autoware戦略(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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