トヨタ自動車は、一部の販売済み車両から取得する車外画像データを自動運転・先進安全・地図関連技術のための研究開発などに利用している。
車外画像データには、ユーザーが実際に車両を運転する道路・交通環境の情報が含まれており、これは試験場では得ることのできない情報となる。同社の公式サイトでは、実際の道路・交通環境を知ることで、より実際の道路・交通環境にマッチし、より安全なクルマやシステムの開発を加速させることができると説明している。また交通インフラの改善に寄与するサービスの開発など、社会をより便利でより安全にするための取り組みにつなげることもできるという。
この車外画像データの取得は、どのような仕組みで行われているのだろうか。トヨタは個人情報保護についても説明しているので、その点にも触れていく。
▼車載カメラによる走行環境画像の取得と利用について|トヨタ自動車
https://global.toyota/jp/sustainability/privacy/on-board-cameras-initiatives/
■車外画像データ取得の目的や記録条件は?
車外画像データは、トヨタの高度運転支援システムである「Toyota Teammate」や「Lexus Teammate」、先進安全システム「Toyota Safety Sense」や「Lexus Safety System +」を搭載している一部の車種を対象に、特定の条件を満たした場合に限り動画形式で取得しているという。
このデータは特定の状況が発生した場面において車両に記録され、車載通信機(DCM)からトヨタのサーバーに送信し、取得するという流れになっている。
これを取得する目的は、自動運転・先進安全・地図関連技術のための研究開発のほか、車外画像データを利用した商品・サービスの提供、交通状況の配信、自動運転や先進安全システム用の地図の提供などとなっている。
取得する車外画像データの記録条件は、下記4つだ。
- 1. 一定の衝突や衝突に近い状態などが発生した場合(この前後数秒間~約2分間)
- 2. 特定の交通環境(渋滞や悪路、悪天候など)にある道路を走行している場合
- 3. 特定の道路(新しく開通した道路、拡張された道路など)を走行している場合
- 4. エンジン始動後の所定のタイミング(この前後数秒間)
なおAdvanced Drive搭載車については、上記のうち1と4の場面でのみデータを取得するという。
■個人情報保護対策はどうなっている?
車外画像データには、歩道や道路脇を歩く人や、前方や隣接する車線を走行する車両のナンバーなどが映り込む可能性がある。
気になる個人情報保護・プライバシー尊重については、トヨタはこのデータを個人情報として、個人情報保護法その他の関連する法律を順守して取り扱っているという。さらに、人が映り込んだ場合のプライバシーを尊重するための取り組みも行っているようだ。
具体的には、車外画像データの取り扱いに関する情報の適時適切な公表や、車外画像データに対するアクセス制限やアクセスログの管理、車外画像データに映り込む人や車両のナンバーを個別に検索できない形式での保管を行う。
また、車外画像データに映り込んだ人や車両について個別に追跡したり、その行動特性や移動傾向などを分析したりすることの禁止、社外への提供に際して、利用目的に応じたモザイク処理やトリミングなどの匿名化処理も行っているという。
■消防活動のためのシステム開発にも有用
車外画像データを取得する状況の一例として、2022年12月から2024年8月にかけて大阪府堺市で行われる実証実験が挙げられている。堺市消防局管内を走行するバスやタクシー、トラックなどの車両約400台に搭載したドライブレコーダーによりデータを取得するというものだ。これは、車外画像データの消防活動への利用可能性についての検討や車外画像データを消防活動のために利用するシステムの開発に活用することを目的としているという。
自動運転やADAS(先進運転支援システム)の開発において、最近はデジタルツインという仮想のデジタル都市空間上でシミュレーションを行うことが主流になってきている。しかし実際の人間が現実の道路を走行することでしか得られないデータも数多くある。また人間による運転のクセや傾向などは、シミュレーションソフトのみでは分析することが難しい。
社外向けにデータの活用指針を説明しつつ、先進技術の開発スピードを加速させようというトヨタの取り組みに引き続き注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタと自動運転(2023年最新版)」も参照。