「人間は最悪の運転手」と新聞に全面広告を出した自動運転開発企業がある。米GM傘下のCruiseだ。広告では「42,795人のアメリカ人が昨年自動車事故で死亡した」と続く。
Cruiseが2023年7月13日にニューヨーク・タイムズや複数の地方紙に全面広告を掲載した。赤文字で大きく「Humans are terrible drivers」とある。terribleは「ひどい、最悪な」といった意味なので、「人間は最悪なドライバーだ」と翻訳できる。
続いてCruiseはその理由を説明している。「あなたは運転が上手かもしれないが、多くの人はそうではない。米国では人間が毎年何百万件もの事故を起こしている。Cruiseのドライバーレスカーは人の命を救うために設計されており、衝突事故への関与が92%減少した。また、脇見運転や居眠り運転、飲酒運転などは決してしない」といった趣旨の内容だ。
同社CEO(最高経営責任者)のカイル・フォークト氏は、Twitterでこの広告を紹介するとともに、「米国政府は今こそ自動運転車を完全に受け入れる時だ」とコメントしている。
We ran this full-page ad in @nytimes and several local papers today.
Human drivers aren't good enough. America can do better, and it is time we fully embrace AVs. pic.twitter.com/bBRhjQQtqC
— Kyle Vogt (@kvogt) July 13, 2023
■米国の死者数、他国の2〜5倍
今回Cruiseは広告で米国での自動車事故の多さについて強調している。
米メディアによると、米国の交通事故による死者数は他国の2〜5倍と、突出して多いという。同国の交通事故死者数は2021年に16年ぶりの高水準を記録し、2022年は微減したものの、高止まりが続いている。
この状況をピート・ブティジェッジ運輸長官は「国家的危機」と表現している。
■Waymoも人間による運転の危険性を強調
Cruiseと同じく自動運転開発を進める米Google系Waymoも、2023年7月11日にスピード違反の危険性について同社のブログで説明している。
ブログでは、2020年の全米におけるスピード違反による交通事故死者は1万1,258人、負傷者は30万人を越えたことを紹介している。同社が自動運転タクシーを走行させているサンフランシスコとフェニックスの路上で車の速度を集計し分析したところ、10日間の調査期間で約半数の車両がスピード違反をしていたという。
さらに同社の自動運転システム「Waymo Driver」は速度制限に従うよう設計されており、かつ他の車両の速度も検知できるため、周囲の車両の動きを予測し、それに応じた対応を行うことができると説明している。
■広告を見たアメリカ人の感想は?
高度な技術を搭載した自動運転車であれば、現在起きているヒューマンエラーや悪質な違反による交通事故は起きない。今回のCruiseによる広告を見たアメリカ人はどんな感想を持ったのか。気になるところだ。
▼Cruise公式サイト
https://getcruise.com/
▼Waymo公式ブログ
https://waymo.com/blog/
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故、米国で月平均13件 最多はGoogle子会社」も参照。