スズキの工場、「飛ばない車」も「空飛ぶ車」もダブル製造へ

SkyDriveとタッグ、2024年春頃スタートへ



空飛ぶクルマなどの開発を手がける株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市/代表取締役CEO:福澤知浩)はこのほど、自動車メーカー大手のスズキと空飛ぶクルマの製造に向けた協力について基本合意書を締結したことを発表した。


SkyDriveは空飛ぶクルマの製造子会社を設立し、スズキグループは静岡県内に保有する工場を提供するという。2024年春ごろの製造開始を目指す。

■スズキとSkyDriveの提携内容とは?

SkyDriveとスズキは空飛ぶクルマの事業化を目指し、連携協定を締結したことを2022年3月に発表している。機体開発及び要素技術の研究開発や、製造・量産体制および計画、スズキの四輪・二輪・マリンに空飛ぶクルマを加えた新しいモビリティの具体化、インドを中心とした海外市場開拓について、両社が事業・技術連携を行うというものであった。

今回の発表は、この連携協定が発展したものとなる。さらに、SkyDriveが空飛ぶクルマの製造を目的とした100%出資の子会社を設立することも、あわせて発表された。

SkyDriveとスズキは、スズキグループが静岡県内に保有する工場を活用して、2024年春ごろの空飛ぶクルマの製造開始を目指すという。スズキは、SkyDriveが設立する製造子会社の人材確保など、製造開始に向けた準備についてもバックアップする。


なお、ここでいう「空飛ぶクルマ」とは、「eVTOL(電動垂直離着陸機)」のことを指す。

【参考】関連記事としては「eVTOLとは?「空飛ぶクルマ」の類型の一つ、開発盛んに」も参照。

■設計開発中の商用機のスペック向上
出典:SkyDriveプレスリリース

SkyDriveは同じく6月19日に、設計開発中の空飛ぶクルマの商用機「SkyDrive式SD-05型」を社名と同じ「SKYDRIVE(スカイドライブ)」に変更し、搭乗人数もこれまでの2名から3名になるといった仕様変更についても発表している。

独自開発したドーム型ローターフレームとローターの曲面配置により、機体をコンパクトに保ちつつ、3人乗りを可能としたという。


また機体サイズは従来のものより大きくなり、最大離陸重量は1,100キロから1,400キロへ、航続距離は5〜10キロから約15キロへと、パワーアップする。

■日本のエアモビリティを牽引するSkyDrive

SkyDriveは、2018年7月に「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」のミッションのもと、有志団体CARTIVATOR(現Dream-On Management)から派生する形で設立された日本を代表する空飛ぶクルマ開発ベンチャーだ。

旧仕様のSD-05やSkyLiftのほか、SkyLiftを顧客が使用する際に運用に関する各種業務をワンストップで担うサービス「SkyLift Plus」も展開している。また2023年1月には、米国市場へ参入し2026年の商業運航を目指すことを発表した。

同社は仕様変更を行った空飛ぶクルマについて、大阪・関西万博での運航に向け、2025年に耐空証明を取得する予定だ。また2026年に型式証明を取得し、量産やデリバリーの開始を目指すとしている。さらに、米国連邦航空局(FAA)での型式証明の取得も目指しているという。

新仕様の3人乗りの設計がレベルアップしたことに伴い、次のフェーズである製造に向け、スズキという強力なパートナーを得ることで、ますますSkyDriveの存在感は大きくなっていくだろう。まずは2025年の万博での実用化を楽しみに待ちたい。

【参考】関連記事としては「和製「空飛ぶクルマ」に世界的デザイン賞!SkyDriveのSD-05」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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