トヨタマップマスター社、純利益32%減の1.4億円 自動運転地図に照準

クラウド型の地図データベースなどを開発



出典:官報

トヨタグループで地図データベースなどを手掛ける株式会社トヨタマップマスター(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:浜田一行)の第25期(2022年4月〜2023年3月)の決算公告が、このほど官報に掲載された。

第25期の純利益は1億4,695万円で、第24期の2億1,453万円と比べ約32%減となった。なお、第23期の純利益は1億5,800万円であった。


■第25期決算概要
賃借対象表の要旨

▼資産の部(単位:千円)
流動資産 2,990,679
固定資産 3,210,622
資産合計 6,201,300
▼負債及び純資産の部(単位:千円)
流動負債 2,249,087
賞与引当金 298,351
その他 1,950,736
固定負債 554,225
退職給付引当金 463,689
その他 90,537
株主資本 3,397,988
資本金 480,000
利益剰余金 2,917,988
利益準備金 120,000
その他利益剰余金 2,797,988
(うち当期純利益 146,957)
負債・純資産合計 6,201,300

■トヨタグループ唯一の地図会社

1998年設立のトヨタマップマスターは、トヨタグループ唯一の地図会社として、ナビゲーションシステムやナビゲーションシステム用地図データの企画開発や販売を手掛けている企業だ。

出資会社にはトヨタのほか、デンソーやアイシン、パナソニックホールディングス、デンソーテン、ゼンリンという、モビリティや地図に関する日本を代表する大手企業が名を連ねている。

同社は2007年に世界初のカーナビゲーション用地図更新サービスの「マップオンデマンド」を開始した。2009年には業界で初めて、ウェブ上でカーナビゲーション用地図の更新情報を確認できるサービスの提供を、2011年にはスマートフォン向けアプリへ地図データベースの提供をスタートしている。


■「ミライの地図」を作成
出典:トヨタマップマスター公式サイトトップページ

トヨタマップマスターは、自動運転の実現のため車載カメラやレーダーなどの機器に加えて、高精度な3D地図が必要不可欠と考えており、その「ミライの地図」を作成しているという。走行動画や計測により得られた位置データ情報をもとに、専用CADを用いて位置データに道路縁や区画線などの属性を持たせることで、データ化しているのだという。

同社の自動運転向けの地図の制作拠点は海外にあり、品質チェックや全体スケジュールの作成を国内で担っているようだ。協力会社ともプロジェクトチームを組み、自動運転向け地図データ作成方法の検討やCADなどのシステム開発も行っているという。

また、クラウドベースのシステム「TOMOS」を開発している。これは国内外を問わず、ナビ地図や自動運転向け地図データ、元データなどを一元管理するものだ。いわば「大規模物流倉庫の地図データ版」なのだという。TOMOSはブラウザを使える環境があれば、世界中どこからでも使用可能なデータベースとなっている。

そのほか深層学習などの画像処理技術の応用により、カーナビやADAS(先進運転支援システム)、自動運転向けの空間情報データを効率的に作成するためのシステムも開発している。


■より一層の活躍に期待感

トヨタマップマスターは、自動車業界の100年に一度の大変革期において、メーカーのCASE事業を支えるパートナーとして、高精度地図データベースの提供のほか、AI(人工知能)やビッグデータの分析・活用などを取り入れた先進的技術の提供を行っていくという。

3D地図などは今後ますます重要度が増してくる。トヨタマップマスターの、より一層の活躍が期待される。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「トヨタマップマスター、純利益35%増!自動運転地図事業も」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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