中部国際空港の空港制限区域内でこのほど、自動運転の路面清掃車の実証実験が始まった。空港制限区域において自動運転の路面清掃車を導入するのは日本初だという。
滑走路や誘導路を含む空港制限区域内における、現場作業の安全性確保や生産性向上、労働力不足などの課題解決に向け、総合建機メーカーの加藤製作所と車両生産設備の設計・製造を手掛ける新明工業、中部国際空港、日野自動車が共同で行うものだ。
■日本初!自動運転の清掃車が実証開始
実証は、中部国際空港制限区域内で2023年5月10日から約3週間行われる。使用するのは、小型トラック「日野デュトロ」をベースに、加藤製作所が「真空吸込式路面清掃車」を製作し、新明工業が自動運転に必要な改造を行った車両だ。レベル2相当の自動運転技術を搭載しており、時速20キロ以下で走行するという。
レベル2相当、つまりドライバーが周辺監視を行い、特定条件下での自動運転機能となる。そのため「完全無人」とはいかないものの、実証中にドライバーの介入がない形で運用ができれば、実質的にはレベル3以上の技術に相当することになり、期待は大きい。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。
車両の走行位置や経路は、GNSSデータやLiDAR、赤外線カメラで把握し、障害物を検知すると自動で停止する。ドライバーが清掃区間まで運転し、その後自動運転に切り替えて路面を清掃する。架装部分の清掃装置はタブレットで操作でき、自動運転と連動して自動で清掃作業を行うという。
■中国ではすでにレベル4の清掃車
海外に目を向けると、中国ではすでにレベル4の自動運転による清掃車の運用が行われた実例がある。2022年9月にスタートし、注目を集めた。
中国の自動運転ベンチャーWeRide(文遠知行)が、「Robo Street Sweepers」という名称の自動運転清掃車を広東省広州市で開始した。超低速度で走行し、道路を清掃しているようだ。低速のため、万が一、人とぶつかってもケガなどを負わせにくく、商用展開のハードルが低いことが特徴と言える。
日本国内では公道でこうした特殊車両を自動運転で走行させるのにはまだ時間がかかりそうだが、少子高齢化などによる人材不足や働き方改革、コスト削減、作業場の安全性の確保が問題となっている現在、実用化に至れば、採用する空港が続々出てきそうだ。
【参考】関連記事としては「「Slowな自動運転」でマネタイズ!中国で無人清掃車が稼働」も参照。
■引き続き「自動運転×空港」に注目を
今回、中部国際空港を始まった実証では、夜間の安全運行や、清掃の重複や清掃漏れが削減できるかなどを確認するほか、路面清掃車の有用性についてデータを取得することを主な目的にしているという。この結果を踏まえ、実用化に向け検討を進めるようだ。
空港施設では自動運転化された電動車いすの運用が始まった例もあり、何かと自動運転関連の話題は多い。引き続き「自動運転×空港」に注目する価値ありだ。
【参考】関連記事としては「空港制限区域での自動運転、必要な「共通インフラ」は?」も参照。