自動運転、日本の利用率「10%」──あれ、高すぎない?

LINEリサーチのアンケート結果から考える



出典:LINEプレスリリース

車の自動運転の現在利用率は10%──。こんな調査結果が発表された。

LINE株式会社が、同社のスマートフォン専用リサーチプラットフォーム「LINEリサーチ」を使って、全国の18〜59歳の男女を対象に、車の自動運転の現状の認知率や現在利用率、今後の流行予想などについて同年1月に調査した。この調査における結果だ。


なお有効回収数は2,108であったという。自動運転の利用率が10%というのは、現時点においてはかなり高すぎる印象を受けなくもないが…。

■利用率は「10%」、その理由を考えてみる

車の自動運転の認知率は、全体で95%という高い水準だった。性別での差や年代での差はほとんどなく、9割を超えていた。

「知っているし、利用している」という利用率は全体の10%とのことで、この「10%」という数字が自動運転の利用率ととらえられる。ちなみに「知っているし、以前利用していたが、いまは利用していない」を含めた利用経験率は13%となっている。

(なお利用経験は、バスやタクシーなどの公共交通機関ではなく、自家用車などを含めて「自分が乗る車」として回答している)


ちなみに自動運転には1〜5までのレベルがあり、厳密に「自動運転」と呼べるのはレベル3もしくはレベル4以上と言える。レベル3以上の市販車はホンダが発売しているだけで、レベル4の自動運転バスも一部自治体のみで実証的に展開されているだけなので、今回の利用率10%という数字は高すぎる気がするのだが、言い換えれば、レベル1〜2に相当する各社の普及型ADAS(先進運転支援システム)の能力を自動運転と勘違いするほど、各社の技術が高まっているということなのかもしれない。

■1年後の利用率は23.0%という結果に

この調査のほかの結果も紹介しよう。100人中、どのくらいの人が車の自動運転を利用していそうか、をスコアとして算出した数値は全体で11.7であり、約8〜9人に1人が利用しているイメージを持っていることが分かったという。年代による大きな差は見られなかった。

さらに、1年後自分の周りで、100人中どのくらいの人が車の自動運転を利用していると思うかという質問の数値結果は、全体で23.0だった。これは約4人に1人が利用していそうだというイメージだ。男女別でのスコアの大きな差はなく、年代別では男女ともに30〜50代に比べ、10〜20代のスコアが高かった。

出典:LINEプレスリリース

自分でも車の自動運転をぜひ利用してみたい、または機会があれば利用してみたいと考える人は、全体の57%だった。男性より女性の方がやや高めの割合で、年代別では男女ともに30〜50代より10〜20代の方が利用してみたいと思う人の割合が高かった。一方、あまりまたはまったく利用してみたいと思わない人は全体で22%だった。


今回の結果からは、自動運転を利用してみたいという前向きな考えが多く見られたが、利用したいと思わない人の意見には、「運転する楽しみがなくなってしまい、車を所有する意味がなくなるから」や「事故になった時の責任問題がよく分からないから」「誤作動が全く無いとは言えないから」などがあった。

■ADASと自動運転の理解度はまだ低い?

自動運転の認知率が約95%というのは、相当浸透していると言える。ただし、現時点では、ADASと自動運転の違いを明確に理解できている人はまだまだ少ないのかもしれない。こうしたことも考えさせられた調査結果だった。

【参考】関連記事としては「MaaSの認知度、「知っている」16%——最新調査」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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