Apple Carの価格、10万ドル未満濃厚 自動運転EVをいつ発売?

2026年時点のレベル3市場の相場は?



テクノロジー企業の筆頭株として名高い米Apple。ブランド化された製品群は世界中で人気を集め、その一挙手一投足には常に大きな注目が集まっている。


そんなアップルが近い将来世に送り出すとされているのが自動運転車、通称「Apple Car(アップルカー)」だ。

噂が噂を呼び、さまざまな憶測が飛び交うアップルカーだが、いつごろ発売され、価格はどのような水準となるのか。

この記事では、これまでに明らかになっている情報と市販レベル3の相場などを基に、アップルカーの価格に迫る。

■アップルの自動運転開発の概要
2026年にレベル3搭載車を発売予定

アップルの自動運転開発は2014年ごろに始まったと言われている。プロジェクト「Titan(タイタン)」のもと、水面下で極秘裏の開発を続けている。


なお、自動運転開発に対しアップルが公式アナウンスを発することはなく、すべての情報は関係者筋などの話によるものだ。

当初はスマートカー・EV(電気自動車)の開発を目指していると言われていたが、徐々に自動運転開発の内幕が明らかにされ、アップルはレベル4相当の自動運転車の実現を目指しているものとされてきた。

しかし、2022年12月に米ブルームバーグが報じた内容によると、アップルは計画を見直し、ハンドルやペダルなどの手動制御装置を備えつつ、幹線道路(高速道路)における自動運転機能のみをサポートする機能の開発・設計を進めているという。発売目標時期は2026年で、価格は10万ドル(約1,360万円)未満を目指す。


現時点では、アップルは2026年をめどに自動運転レベル3搭載車両を発売する計画のようだ。

【参考】アップルの自動運転開発については「Apple Car暫定情報(2022年最新版) 自動運転化は確定?」も参照。

【参考】アップルの最新情報については「自動運転、Appleは「市販車」、Googleは「タクシー」路線か」も参照。

■2026年のレベル3相場は?
現在はホンダ1,100万円、ベンツ1,500万円~
ホンダが発売したレベル3乗用車「新型LEGEND」=出典:ホンダプレスリリース

レベル3の市販車両は、これまでにホンダの「レジェンド」と、メルセデス・ベンツの「Sクラス」、及び新型EVの「EQS」が実用化されている。ベンツはオプションでレベル3システム「DRIVE PILOT」を設定可能だ。

2021年3月に発売されたホンダ「レジェンド(Hybrid EX・Honda SENSING Elite搭載モデル)」はリース販売価格が1,100万円となっている。

【参考】ホンダのレベル3については「ホンダの自動運転レベル3搭載車「新型LEGEND」を徹底解剖!」も参照。

一方、ベンツ「Sクラス」は約1,400万円、「EQS」は約1,600万円で、「DRIVE PILOT」のオプション価格はそれぞれ約70万円、約100万円となっている。総額では1,500~1,700万円ほどの水準となる。

【参考】ベンツのレベル3については「「米国初」の自動運転レベル3、メルセデス濃厚」も参照。

ホンダ、ベンツともにフラッグシップモデルへの搭載であり、レベル3車両としての価格は高水準と言える。

BMWやボルボ・カーズなども近くレベル3車両を発売する見込みだが、基本的にはフラッグシップや新規格のEVモデルなどからレベル3の実装を開始する。

現時点において、レベル3は各社の象徴的モデルに搭載されることが多く、それ故車両総体としては高額となっている。

徐々に搭載車種や自動運転機能が拡大

2026年にかけ、徐々に戦略モデルなどへの搭載も進むものと思われるが、同時にレベル3の機能の高度化も進む。現行のモデル3は、高速道路において時速50キロ以下で作動するなど渋滞時を想定した仕様になっているが、国際基準が拡張され、今後は制限速度域での自動運転が実装されていく可能性が高い。

また、対象道路も拡大が進み、世界の多くの高速道路を網羅するほか、一部では一般道路も対象に含まれ始めるかもしれない。機能の高度化が進めば、自動運転システムそのものの価格も比較的高い水準を維持する可能性が高い。

アップルが発売を予定している2026年時点で、レベル3市場がどこまで拡大しているかは不明だが、矢野経済研究所が2022年に発表した自動運転システムの世界市場に関する調査結果によると、新車ベースでレベル3搭載車は2025年に約40万台に達すると予測している。

恐らく、フラッグシップから一歩二歩搭載車種が拡大している段階ではないだろうか。2026年には、500万~1,000万円ほどの車種へのレベル3搭載が始まっている可能性が高そうだ。

自動運転システムそのものの価格は値付けが難しいところだが、ベンツを例にすると100万円ほどで追加が可能となっている。

あくまで推測だが、2026年ごろにはレベル3車両を500万~1,000万円ほどで手に入れることができそうだ。

■アップルカーの価格は10万ドル未満?

アップルに話を戻す。金融アナリストの弁に基づいた2016年の報道によると、アップルカーは7万5,000ドル(約850万円)前後になると見積もられていた。当時の実現目標は2020年~2021年ごろに設定していたようだ。

一方、2022年の最新の報道では、事情に詳しい複数の関係者の弁として、これまでは12万ドル(約1,630万円)超を見込んでいたところ、現在は10万ドル(約1,360万円)未満を目指しているという。実現目標時期は2026年にずれ込んでいる。

2016年当時、すでに自動運転開発に着手していることが報じられていた。仮に無人運転を実現するレベル4とすると、7万5,000ドルは相当安い価格帯となる。

一方、2022年の報道は、条件付きで自動運転を実現する実質レベル3がベースとなっている。フラッグシップ相当のレベル3車両を2026年に発売するのであれば、10万ドル未満は妥当な価格帯と言えるかもしれない。

■【まとめ】後発組となるアップル、他社との差別化がカギに

自動運転システム自体の価格を100万円ほどと見積もれば、結局のところレベル3搭載車の価格は車両本体そのものの価格に左右されるところが大きいことになる。

アップルブランドとして世に送り出す限り、アップルカーは他社に比べ割安な価格設定にはならないものと思われるが、EV・自動運転分野においてアップルは後発組となる。機能面やデザイン、サービスなどで明らかな差別化を図ることができなければ苦戦を強いられる可能性も十分考えられる。

アップルカーは最終的にどのようなクルマになるのか。そしてどのような形でコンシューマーの期待に応えてくれるのか。要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転はどこまで進んでいる?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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