ダブルの「国内初」!自動運転EVで搬送サービス&専用保険

Autowareで柔軟な構内自律走行を実現

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出典:ティアフォー・プレスリリース

ティアフォーとヤマハ発動機の合弁企業eve autonomyが、自動運転レベル4の自動搬送サービス「eve auto」の提供を2022年11月30日から正式に開始した。また同日、損害保険ジャパンもレベル4サービス導入前から導入後までサポートする「アフターサービスパッケージ」の提供を開始した。

いずれも日本初の商用サービスで、2つの「国内初」が重なる注目のビジネスだ。この記事では、2つの国内初サービスとともにeve autoの概要について解説していく。

■自動搬送サービス「eve auto」の概要
Autowareで高度な自動運転が可能に

「eve auto」は、ヤマハ発動機のランドカーをベースにティアフォーが開発を主導する自動運転ソフトウェア「Autoware」を統合して専用開発したAGV(無人搬送車)だ。

ティアフォーの商用ソフトウェアプラットフォーム「Pilot.Auto」と「Web.Auto」を組み合わせ、定期メンテナンスや地図編集といったアフターサポートや、後述する自動運転システム提供者専用保険をパッケージ化した自動搬送サブスクリプション型サービスとして提供する。

製品化されているAGVの大半は屋内向けで、人や自転車、トラックなどさまざまな交通主体が混在する屋外での自動運転はハードルが高かった。

このAGVに、走行性に優れたランドカーと汎用性に優れた自動運転ソフトウェアであるAutowareを導入することで、工場や倉庫敷地内など幅広い環境における自動運転を可能にしたのがeve autoだ。

eve autoはけん引1,500キログラム、積載300キログラムまでの搬送が可能で、屋内外で自律した走行を可能とする。自動運転時は最大時速10キロメートル、手動運転時は同19キロメートルで走行できる。低速自動搬送でのユースケースに最適化された自動運転ソフトウェアをベースにしており、多少の雨風や悪路にも対応可能という。

出典:ティアフォー・プレスリリース
導入前から導入後までワンストップでサポート

サブスクリプションサービスには、自動搬送車となる小型EV「FG-01」をはじめ、高精度3次元地図の作成や自動搬送サービスの運用設計に関する支援などの導入支援サービス、運行管理や地図の再編集、登録代行サービス、現場利用に最適化した運行管理システムと簡単な操作で運行指示できるソフトウェア「eve auto DASH」といった運用サポート、自動運転システム提供者専用保険、定期メンテナンスやアップデートサービス、既存インフラ設備との連携が可能な近距離無線通信システム「eve auto CONNECT」などが含まれる。

導入前から導入後まで、保健を含めトータルでサポートするサービス構成だ。同社によると、こうした自動運転EVによる本格的な自動搬送の商用サービスは国内初という。

パナソニックなど9社がすでに導入

eve autonomyは、自動運転技術を使った自動搬送ソリューションの実現を目的にティアフォーとヤマハ発動機が2020年2月に設立した。

2020年夏ごろからヤマハ発動機の浜北工場でレベル4による自動搬送を開始し、これまでに同社の3工場で運用している。

工事不要で導入可能で、走行ルートの検討からデータ計測、利用開始までしっかりとサポートするほか、運用サポートやメンテナンスサービスも充実している。Web API経由で外部システムと連携させることも可能だ。

他社では、プライムポリマーの姉崎工場やパナソニックの大泉地区コールドチェーン工場、富士電機の鈴鹿工場、日本ロジテムの上尾営業所、ENEOSの根岸製油所など、合計9社がすでに導入・運用しているという。

本格導入前に気軽にお試し可能なライトプランも擁している。計測に1日、試運転2日間の後、1日間の自動運転デモを利用できる。その際に作成した地図データは、サービス開始時にそのまま利用できる。

現在はサブスクによる定額制プランのみ提供しているが、2023年以降に車両販売についても検討するという。

■アフターサービスパッケージの概要
国内初の保険「自動運転システム提供者専用保険」

一方、損害保険ジャパンはeve auto向けに、先行開発済みの「自動運転システム提供者専用保険」に、本格稼働させた保険の付帯サービス「自動運転専用の事故トラブル連絡窓口」や事故防止を支援する「AI技術を活用した自動運転デジタルリスクアセスメント」を加えた「アフターサービスパッケージ(ASP)」の提供を開始した。

自動運転システム提供者専用自動車保険は、ティアフォーとアイサンテクノロジー、ティアフォー創業者でCTO(最高技術責任者)を務める東京大学大学院情報理工学系研究科の加藤真平准教授の研究室とともに開発したレベル4以上に対応した保険商品で、今回のサービスインに先立ち2022年2月に発表している。

自動運転導入事業者が活用する自動運転車に対し、自動運転システム提供者が保険を付保する契約方式を採用した国内初の取り組みだ。自動運転サービスがサブスクリプション型で導入される際、自動運転システム提供者によるさまざまなサービスの1つとして一緒に提供される仕組みだ。

保険以外のインシュアテックソリューションとして提供されるのが、自動運転専用の事故トラブル連絡窓口だ。同社は2018年9月、自動運転車の事故トラブル対応サービス研究拠点「コネクテッドサポートセンター」を開設し、自動運転実証への参画を通じて自動運転サポートに関する研究を重ねてきた。

2022年2月の自動運転システム提供者専用保険発表時、事故トラブルサポートの実務対応を行う専用窓口を同社秋田センター内に新設しており、今回これを本格稼働させた格好だ。24時間365日に渡り、事故トラブル時の対応起点としての役割を担う。

SLAMやAI技術を活用

さらに今回新たにサービス化されたのが、事故防止を支援する「AI技術を活用した自動運転デジタルリスクアセスメント」だ。自動運転固有の新たなリスクに対する評価手法を導入した、まさに新時代のリスクアセスメントだ。

これまでのリスクアセスメントは手動運転前提のリスク評価をもとにしており、走行現地に赴いてリスク調査を行なっていたが、参加した多くの実証において関係者から「自動運転という新たな技術への評価」と「現地調査に係る負荷の軽減」への要望を受けてきたという。

出典:損害保険ジャパン・プレスリリース

この要望に応えるためには自動運転固有の新たなリスク評価手法を整える必要があり、NEDOの事業のもと、2020年に名古屋大学とティアフォー傘下のマップフォー、Human Dataware Lab.とともにAI技術を活用した自動運転デジタルリスクアセスメントの研究開発に着手した。

マップフォーのSLAM技術によって自動走行時のカメラやLiDARの情報からリスクシーンを抽出し、その判断根拠を言語化する技術を名古屋大学が担当した。この成果をHuman Dataware Lab.がAI・信号処理技術によってシステム化し、損保ジャパンが保有する事故データと融合することで新たな自動運転デジタルリスクアセスメントの開発に成功したという。

【参考】関連記事としては「SLAM技術とは?自動運転で有用(2022年最新版)」も参照。

eve autoでは、マップフォーの高精度三次元地図作成ソフトウェア「MAP Ⅳ Engine」を用いた高精度三次元地図や位置推定評価手法が採用されており、導入準備段階の三次元地図作成と合わせて「AI技術を活用した自動運転デジタルリスクアセスメント」を実施することで、自動運転固有のリスクを包含した評価レポートの速やかな作成が可能となり、安全な自動運転導入に向けた準備をサポートするとしている。

■【まとめ】安心感や信頼感が自動運転普及のポイントに

サービス導入を検討する事業者は、多くの場合自動運転に関する知見がなく、未知の技術に対する漠然とした不安に駆られがちだ。しかし、eve autoは保険付きで導入前から導入後に至るまでしっかりとワンストップでサポートすることで、安心感と信頼感も提供する。

今後、公道含めさまざまな自動運転サービスが世の中に送り出されていくことになるが、社会受容性の観点からもこうした安心感・信頼感が普及の1つのポイントになりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転の事故責任、誰が負う?(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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