自動運転とSDGsの関係性(2023年最新版)

さまざまな面で持続可能な社会に貢献

B!

持続可能な社会の構築に向け、世界各国の政府や企業、個人が取り組んでいるSDGs。自動車業界においては、カーボンニュートラルの実現などに注目が集まりがちだが、自動運転技術もSDGsと無関係ではない。

自動運転はSDGsにどのように関わっているのか。2023年時点の情報をもとに、民間各社の取り組みも交えつつ、その結び付きについて解説していく。

<記事の更新情報>
・2023年7月12日:ホンダのSDGsの取り組みについて追記
・2022年9月26日:記事初稿を公開

■そもそもSDGsとは?

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、直訳すると持続可能な開発目標を指す。2015年の国連サミットで全加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられ、採択された国際目標だ。

2030年を達成年限とした17のゴール(目標)と169のターゲット(達成基準)、232の指標で構成されている。17ゴールは以下の通りとなっている。

出典:外務省
■自動運転と関連がありそうなゴール・ターゲットは?

このうち、自動運転と直接関連がありそうなゴールと、関連するターゲットしては、「③保健」のターゲット「2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる」が挙げられる。目標年度は過ぎているが、交通事故の減少に対し自動運転技術が大いに貢献することは間違いない。

このほか、「⑦エネルギー」のターゲット「2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する」も関連してくるはずだ。

また、「⑧成長と雇用」のターゲット「高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する」なども関連する。

また、「⑨イノベーション」では、ターゲット「すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する」などが自動運転と関連付けることができそうだ。

「⑪都市」では、ターゲット「2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」が関連しそうだ。

■自動運転は交通事故の減少に大きく貢献

自動運転技術は、交通事故の激減に大きく寄与する可能性が高い。国内で発生した交通事故の9割以上は、漫然運転などドライバーの過失、ヒューマンエラーに起因している。

仮に道路上を走行する全ての車両が自動運転車に切り替わった場合、こうした事故を未然に防ぐことが可能になる。全ての車両とはいかなくとも、自動運転車の割合が上昇していけば反比例する形で交通事故は減少していく。

また、新車への搭載がスタンダードとなっているADAS(先進運転支援システム)も交通事故抑止効果や被害軽減効果を発揮する。

交通事故件数は、2004年ごろの年間90万件台をピークに減少し続けており、2020年は約30万件と3分の1まで減少している。警察による取り締まり強化や啓蒙活動などの影で、ADASもしっかりと貢献しているはずだ。

国土交通省所管の「ASV推進検討会」の試算では、事故において最も過失が高い第1当事者の車両がADASなどを装備していた場合、死傷事故を約6割、自動運転だった場合は9割弱を削減できるとしている。

【参考】自動運転やADASによる事故削減効果については「自動運転の事故率は?抑止効果は9割以上?」も参照。

■新産業創出による雇用やイノベーションも

産業面などでは、研究開発者の増加による科学研究の促進や技術能力の向上に自動運転開発が大きく貢献する。自動運転技術そのものは無人化を図る技術ではあるものの、研究開発従事者が飛躍的に増加するほか、自動運転サービスや派生ビジネスに関わる雇用を生み出していく。

自動運転がこれからの社会にイノベーションをもたらし、持続可能な社会・地域づくりに貢献することは間違いなさそうだ。

■エネルギー関連にも貢献

自動運転技術は、効率的な人の移動やモノの輸送を実現し、円滑な交通流を形成する効果も併せ持つ。道路交通全体における環境負荷を軽減するほか、自動運転車と相性が良いEV(電気自動車)化なども促進される。水素を中心としたFCV(燃料電池自動車)などの開発も含め、クリーンエネルギーの活用・促進面でSDGsに貢献できそうだ。

■日本企業の取り組み
トヨタの取り組み
トヨタが発表したWoven City計画=出典:トヨタプレスリリース

トヨタは、SDGsに関する取り組みの中で「幸せに暮らせる社会への取り組み」を掲げ、自動車メーカーからモビリティ・カンパニーへの変革を通じて、ステークホルダーと一緒により多様なやり方で社会に貢献していくとしている。

その代表例が、静岡県裾野市で建設中の実証都市「Woven City」だ。自動運転を基軸に、各種モビリティやロジスティクス、IoTなどさまざまな領域の先端技術を検証していくまちとして、トヨタ自動車東日本の東富士工場跡地を活用して現在進行形で建設が進められている。

技術に関わる実証都市だが、「ヒト中心」を核となるコンセプトに据えている。例えば、物流サービスを「ヒト中心」で考えた場合、自動運転技術を使ってオペレーターの仕事を安全で高付加価値なものとし、物流効率を向上させて地球環境への負荷を低減する――といった発想のようだ。

この発想は、移動サービスにおける自動運転化などにも共通する。持続可能かつ実用的な技術の社会実装を通じ、SDGsが掲げる2030年より先の社会を見据えながら取り組みを進めていく構えだ。

【参考】Woven Cityについては「Woven City、第1期は2024年開業か 初期住民は360人」も参照。

日産の取り組み

日産は、「③保健」の「交通事故死傷者の半減」に関し、自社製造する車に関わる死者数を実質ゼロにする「ゼロ・フェイタリティ」という目標を掲げ、目標達成に向け自動運転技術をはじめとする安全技術の開発と投入を早くから進めている。

また、「⑪都市」における「強靭な交通インフラの整備」に関連し、EVや自動運転技術などを活用して持続可能なモビリティ社会の発展に貢献することを掲げているほか、「ニッサン インテリジェント モビリティ」戦略のもと、全ブランドの電動化を推進し、CO2削減を図っていくとしている。

電動化技術や自動運転技術の進化を支えるプラットフォームとしてコネクテッドカー開発と実用化を加速し、新しいモビリティサービスの提供やクルマの利用価値の拡大を図っていく。V2X(Vehicle-to-X/Vehicle-to-Everything)を用いたエネルギーマネジメントソリューションのグローバルでの拡大などにも注力していく方針だ。

【参考】関連記事としては「日産の自動運転戦略」も参照。

ホンダの取り組み

ホンダのSDGsに関する紹介ページ「Honda with SDGs」では、社会貢献活動としての同社のSDGs関連の取り組みが説明されている。

「安全〜守る〜」という項目では、「Hondaは、『Safety for Everyone(すべての人の安全)』を合言葉に、交通参加者に向けて安全をお届けする交通安全普及活動を行っています」と説明した上で、SDGsにおける「③保険」と「⑪都市」への貢献を目指していることが示されている。

具体的な活動としては、交通安全啓発活動を地域社会と一体となって実施していることが取り上げられており、販売店では親子参加型の安全教室も行われているという。

自動運転技術をSDGsにつなげる取り組みについては特段触れられていないものの、ホンダは日本さらには世界の自動車メーカーとして初めて自動運転レベル3の商用展開を成功させ、かつ、自動運転技術による交通事故死傷者の削減を目指していることから、自動運転でSDGsに貢献するという視点も当然持っている。

【参考】関連記事としては「ホンダの自動運転戦略」も参照。

ZMPの取り組み

ロボット開発を手掛けるZMPは、ロボットや自動運転技術を通じた豊かな社会の実現を目指し、「共創」をテーマにできることから優先的に取り組んでいく方針を掲げている。

「③保健」関連では、自動運転が可能な一人乗りのパーソナルモビリティにより、買い物施設や病院・公共施設などへのアクセス性の向上を誰もが享受し、移動する楽しさを提供する。

「⑧成長と雇用」関連では、物流ロボット「CarriRo(キャリロ)」をはじめ無人フォークリフトや無人トラクターなどにより、物流現場における無人化を通じた労働環境の改善と作業効率の向上に寄与する。

「⑨イノベーション」関連では、自動運転車両プラットフォーム「RoboCar(ロボカー)」の提供を通じ、新たな技術革新プラットフォームの基盤づくりに貢献していく。

「⑪都市」関連では、ロボットと人が共生する街「RoboTown(ロボタウン)」構想の実現に向けて事業に取り組んでいくこととしている。

■自治体におけるSDGsと自動運転

近年、公共交通の効率化や持続化に向け、自動運転バスやシャトルなどの実証を進める自治体が増加している。地方を中心に公共交通の赤字運営は慢性化しており、財政支援によって維持しているものが多くを占める。路線の縮小や廃止を余儀なくされるケースも多い。

ここにドライバーレスを実現可能な自動運転技術をはじめ、AI(人工知能)オンデマンド交通やMaaSといった技術・概念を導入することで、未来に向けて持続可能な公共交通の再構築を図ろうとする動きが出始めているのだ。

これはまさにSDGsそのものと言える取り組みだ。移動サービス以外にも、自動走行ロボットの導入を目指す取り組みなども進められており、今後、さまざまな分野に自動運転技術が応用され、SDGsに貢献していく場面が増加していく見込みだ。

■【まとめ】会課題の解決に自動運転技術が寄与

交通にイノベーションをもたらす自動運転は、安全かつ持続可能な移動や輸送サービスの実現に直結する技術としてSDGsに結び付くことが分かった。また、その過程における研究開発活動や経済活動、環境負荷の低減など、さまざまな面においてもSDGsに貢献する。つまりは、社会課題の解決に自動運転技術が寄与するということだ。

自動運転技術は開発途上にあるため技術そのものにスポットを当てられることが多いが、重要なのは自動運転技術によってどのように社会課題の解決を図っていくかという本来的な観点だ。この観点から見れば、開発者のみならず導入を検討する事業者や自治体、サービスを享受する住民なども何らかの形で自動運転の活用に向けた取り組みを行うことができる。

自動運転技術の社会実装、そして社会課題の解決に向け、より議論が活発になることを期待したい。

■関連FAQ

(初稿公開日:2022年9月26日/最終更新日:2023年7月12日)

【参考】関連記事としては「自動運転はどこまで進んでる?(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



B!
関連記事