「仮想停留所」に停まるAI乗合交通が登場!長野県茅野市

乗り降りしたい場所はほぼ網羅?



出典:茅野市プレスリリース

長野県茅野市の新しい地域公共交通サービスとして、AI乗合オンデマンド交通「のらざあ」の運行が2022年8月22日からスタートした。

のらざあの特徴の1つは、目に見える「停留所」だけでなく、アプリ内でのみ表示される「仮想停留所」による約8,000カ所の乗降場所があることだ。


ちなみに、のらざあとは、茅野市の方言で「乗ってみよう」を意味する「乗らざあ」に由来する。

▼AI乗合オンデマンド交通「のらざあ」 – 茅野市ホームページ
https://www.city.chino.lg.jp/site/new-kotsu/

■予約は「スマホ」と「コールセンター」を両立

のらざあは、4つの交通事業者が共同運行する。具体的には、アルピコタクシー株式会社(本社:長野県松本市/代表取締役:伊藤篤)、第一交通株式会社(本社:長野県諏訪市/代表取締役:福永幸久)、諏訪交通株式会社(本社:長野県諏訪市/代表取締役:山谷恭博)、茅野バス観光株式会社(本社:長野県茅野市/代表取締役:小池源一)だ。

予約はスマホアプリによる予約と、コールセンターを利用した電話予約を両立させる。運行システム「AI乗合オンデマンドシステム」は、公共交通向けソリューションを提供するVia Mobility Japan(ヴィアモビリティジャパン)が手がけた。


定員14人のハイエースコミュータ2台、定員10人のハイエースワゴン5台、定員7人のノア1台の3車種・計8台のトヨタ製車両が稼働する。車両は八ヶ岳をモチーフにした統一デザインでラッピングされているという。デザインは公募で選ばれた。

茅野市役所前での出発式の様子=出典:茅野市プレスリリース
■「茅野市版MaaS」の実現を目指して

茅野市は地域公共交通の課題や公共交通を通じた以下の5つの課題を解決すべく、バスやタクシーなどの各交通サービスをシームレスにつなぎ、経路検索や支払いも一括でできる「茅野市版MaaS」の実現を目指している。

5つの課題とは、「地域住民の移動手段の確保」、「まちのにぎわいの創出」、「人の交流の活発化」、「配車サービスの低下」、「環境に配慮した公共交通のあり方」だ。

これまで公共交通のあり方を検討すべく、交通事業者や民間事業者、学校、地域の代表、有識者などで構成された「茅野市新地域公共交通検討会議」を立ち上げて検討を重ねてきた。その結果、3つの整備を行うことが決定した。


1つ目は「朝夕の移動時間帯に集中する通学・通勤者に対応した路線バス」で、2つ目は「日中の買物や通院など多種多様な目的に対応したAI乗合オンデマンドを主とした交通体系」、3つ目は「観光エリアの移動サービスの充実による観光客等の需要の取り込み」だ。1つ目と2つ目については2020年12月から実証を実施している。

通学・通勤バスは2022年4月1日から、路線数を3から5に拡大して本格運行を開始している。AI乗合オンデマンド交通は6カ月の運行後、この度の本格運行開始に至った。9月末で廃止された定時定路線バスの13路線エリアは、のらざあの運行エリア内にあるという。3つ目については、今後も引き続き検討を続けていくようだ。

■乗り降りしたい場所はおおよそ網羅?

そして冒頭紹介した仮想停留所も、のざらあの大きな特徴だ。約8,000カ所も仮想停留所があれば、乗り降りしたい場所はおおよそ網羅できそうだ。住民が利便性についてどのような反応を示すのか、注目していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転・MaaSと地方創生、「推進交付金」採択事業は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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