英国人の31%「自動運転車の制御を引き継げるなら信頼」

ドライバー2,000人を対象とした調査



イギリスのドライバー2,000人を対象としたある調査によると、ドライバーレスの自動運転車で安全に移動できると思うと回答したのは、わずか6%にすぎなかった。


一方、「自動運転を引き継いで自分がコントロールできるという仕組みがある」という条件があれば、31%が「自動運転車を信頼する」と回答しているという点は興味深い。

自動運転の開発各社においては、完全自動運転車の開発コンセプトとして「ハンドルなし」を掲げている企業も少なくないが、少なくともイギリスで完全自動運転車を普及させるためには、ドライバーが運転を引き継げるよう、ハンドルを搭載させる必要があるかもしれない?

■ある課題を浮き彫りにした今回の調査結果

今回紹介した調査結果は、ある課題を浮き彫りにした。その課題とは、自動運転車はそもそも手動運転による事故を防ぐために開発しているのに、運転をシステムから引き継げなければ自動運転車を信頼できない、と回答している人間(※今回の調査においてはイギリス人)がいることだ。

確かに、レベル3の自動運転車では部分的にしか稼働できない自動運転システムを搭載しているため、運転を人間に引き継ぐシステムは必要だ。しかし、限定領域における完全自動運転を実現するレベル4や、いつでもどこでも完全自動運転が可能なレベル5は、できるだけ人間による運転を排除することで、従来よりも高い安全性を確保しようとしている。


もちろん、完全自動運転システムの技術レベルが高いものでなければ、手動運転よりも事故率が高くなるかもしれないが、基本的には各社が目指しているのは手動運転よりも事故率が低い自動運転システムだ。

つまり、今回の調査結果のように、手動運転に引き継げるシステムでなければ自動運転車を信頼できない人が多いと、完全自動運転システムを開発している目的との間で、ギャップが生じる。

■ギャップを埋めるために必要なことは?

では、こうしたギャップはどのように埋めれば良いのだろうか。完全自動運転システムが手動運転よりも低い事故率を実現することを前提とするのであれば、社会受容性を高めていくことが一つの解決策になり得る。

実際のところ、この「社会受容性を高めていくこと」に関しては、日本を含め、多くの国で自動運転車の普及に向けて重要なポイントと理解されている。


ただし、今回の調査結果から分かることとしては、イギリスの場合、社会受容性を高めるための取り組みがほかの国より多く必要になるかもしれない、ということだ。なんせ3人に1人が手動運転で引き継げるシステムでなければ、自動運転車を信頼できないと回答しているのだから。

【参考】関連記事としては「スコットランド、乗客を乗せた自動運転シャトルが初運行」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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