「自ら移動する広告」を実現!商業施設内を自動運転で

中国製AMR「KettyBot」を活用



出典:ジャロックホールディングス・プレスリリース

広告は通常、動かない。紙に印刷された広告は、紙自らが移動することなどもちろんできないし、壁などに設置されたディスプレイも、自ら動くことはできない。しかし、ディスプレイを搭載した自律走行ロボットであれば、「動く広告」が実現できる。

実際に、こうしたコンセプトの実証実験が実施されている。最近のことだ。神奈川県海老名市の商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと海老名」で、広告表示付きディスプレイ・案内ロボット「KettyBot」というAMR(自律自走型ロボット)が導入され、来店客などの注目を集めたようだ。


■深センの企業が開発したAMRを使用

実証実験を実施したのは、物流機器の製造販売を行うジャロック社のテクノロジー部門であるジャロックホールディングスだ。

同社は報道発表で、「大型商業施設では従来のポスターやデジタルサイネージのように位置が固定した告知媒体の広告、集客効果が大きな課題となっています」と指摘。その上で「昭和の時代には人が広告をまとって練り歩く宣伝手法がありましたが、それをサイネージ型の広告ロボットで代替できるかを今回の実証実験を通じて検証することになりました」としている。

実証実験の期間は2022年8月19〜28日とされており、Pudu Roboticsという企業のKettyBotが導入されたという。Pudu Roboticsは中国企業で、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深センに本社を置く企業だ。

ちなみに今回導入されたサービス自体は「KETTIBO36」と名付けられており、ジャロックが独自に3年(36ヶ月)のレンタルプランとして商品化したものだと説明されている。KettyBotの前面ディスプレイのサイズは18.5インチだという。


■タクシーの「車窓広告」にも注目

ちなみに「動く広告」という視点では、タクシーの車窓に広告を掲載する取り組みにも注目したい。

これはタクシーの後方のサイドガラスに広告を映し出す取り組みで、モビリティ向けメディアを展開するニューステクノロジー社が、タクシー配車アプリ事業を展開するS.RIDEの株主のタクシー会社とともに事業を展開している。

こうした取り組みは、将来的にタクシーが自動運転化されたときにも、自動運転タクシーの収益源になり得るし、車内向け広告とは別に新たな広告収入が得られるようになることで、無人・有人に関わらず、タクシー運賃が下がることにつながる期待感もある。

【参考】関連記事としては「自動運転化でタクシー台数はV字回復!?ラッピング広告に商機」も参照。


■事故を起こした場合でも動産保険で対応

話をAMRに戻す。報道発表によれば、ジャロックは月額費用6万6,880円でKETTIBO36を展開するようだ。万が一、ロボットが人身事故や物損事故を起こした際も、動産保険が付属しており、安心だという。

こうしたAMRの普及、そしてタクシーの車窓広告などで、今よりも「広告は動く」ことが普通になるのだろうか。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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