半導体・プロセッサ開発メーカーの英Arm(アーム)はこのほど、米GM傘下のCruise(クルーズ)がArmのCPU(中央演算処理装置)とIP(知的財産権)を活用し、自動運転車(ドライバーレスカー)をさらに進化させるために提携したことを発表した。
両社は何年も前から水面下でドライバーレスカーのためのソリューション開発に取り組んでいたという。自動車業界では「自動運転ならArm」と呼ばれることもあるArm社。自動運転業界と半導体業界の有望企業のタッグは、大きな注目を集めそうだ。
■IPベンダーとしての有力企業Arm
Armは基本的に半導体業界でB2B(企業間取引)ビジネスを展開している企業であり、Armという企業名を耳にしたことがない一般消費者も少なくない。そのため、Armについて少し詳しく解説を加えておこう。
Armはコンピュータ設計と開発を行っていた英エイコーン・コンピュータに起源を持つ。同社開発部門から独立し、エイコーン、米アップルコンピューターとVLSIテクノロジーのジョイントベンチャーとして1990年に設立された。
CPU開発とライセンスビジネスモデルで業績を伸ばし、ソフトウェア開発企業やチップ設計企業を傘下に収めて成長を続け、今や世界の名だたる半導体開発企業の1つとなっている。
インテルなどと異なり、半導体を製造・販売はせずに設計に関するIP(知的財産権)を武器に、IPベンダーとしてライセンス料と利用ごとのロイヤリティでビジネスモデルを確立している。
2016年9月には、ソフトバンクグループにより約3兆3,000億円で買収され、大きな話題を呼んだ。ちなみにソフトバンクグループ内ではArmの事業を「アーム事業」という名称で独立した事業セグメントとして扱っており、同社の潜在的な今後の成長期待度から、世界的な株安により業績不振に陥ったソフトバンクグループの「切り札」と呼ばれることもある。
■Waymoを猛追するCruise
そんなArmが提携したCruiseも、今後の成長期待度が高い企業だ。
Cruiseは2022年2月、米サンフランシスコで自動運転タクシーサービスをスタートさせた。Google系Waymoが2018年12月に自動運転タクシーを世界で初めて商用サービスとしてローンチしてから3年2カ月経っているが、いよいよWaymoとの対決が本格的に始まった形だ。
2021年4月にはドバイ交通局と自動運転タクシーを独占的に運行する契約を結び、2023年からのドバイでの自動運転タクシーの運行開始を発表している。投入されるのは自動運転モビリティサービス専用車両「Origin(オリジン)」だ。2030年までに4,000台普及させる計画だという。海外展開においてはWaymoの先を越す形となりそうだ。
ちなみに日本市場に関してはホンダと2018年10月にパートナーシップを締結しており、いずれは日本市場での事業展開も予想されている。
■今後も両社の取り組みに注目
ArmとCruiseの提携により、Cruiseの自動運転タクシーのさらなる進化に期待ができそうだ。今後も両社の取り組みに注目していきたい。
▼Arm公式サイト
https://www.arm.com/ja/
▼Cruise公式サイト
https://www.getcruise.com/
【参考】関連記事としては「Armが自動運転で存在感!SBGの「救世主」になるのか」も参照。