開発と実用化に向けた取り組みが大きく加速する自動配送ロボット。すでに倉庫内などで実用化が進む自動搬送ロボットをはじめ、歩道を走行するモデルや車道走行モデルなど、さまざまな種類が登場している。
この記事では最新情報をもとに、自動配送ロボットを機能面や車両タイプから分類し、各モデルの特徴を解説していく。
<記事の更新情報>
・2024年3月20日:自動運転タイプの例として米Cartketのロボットを紹介
・2023年8月21日:関連記事や画像を追加し、Hakobotの取り組みの情報なども更新
・2022年7月30日:初稿公開日
記事の目次
■機能面におけるロボットの分類
「自律走行型」と「自動追従型」に分類
モノの輸送を担うロボットの形態は、機能面から大きく「自律走行型」と「自動追従型」に分けることができる。前者は自律した走行、つまり単独での自動運転が可能なシステムを備える。一方、後者は人や他のロボットなどに追従して移動する機能を備えたモデルを指す。
自律走行型はさらに、カメラやLiDAR、GPSなどの各種センサーと高精度3次元地図、AI(人工知能)を活用して自由な自律走行を可能にする自動運転タイプと、走行ルートに事前に設置した磁気テープやマーカーなどのガイドをもとに自律走行を行うガイドタイプに分けることができる。
開発の主流は「自動運転タイプ」
自動運転タイプは現在最も開発が盛んなタイプで、「Autonomous Robots」や「Self-Driving Delivery Robot」、「Autonomous Mobile Robot」などさまざまな呼び名がある。多くのモデルがマッピングなどを必要とするが、自由度が高いためその都度ルートが変わる宅配やビル内配送などさまざまな用途で活用できる。
開発段階も含めると、近接監視・操作を行うオンサイト型や遠隔監視・操作型でロボットを目視できる範囲に保安要員が付くセミリモート型、遠隔監視・操作型で保安要員なしのフルリモート型、遠隔監視のみで無人自律走行を実現するモニタリング型、遠隔・近接監視も必要としないフルオートノマス型に分類可能だ。
Uber Eatsが2024年3月から無人配送で使っている米Cartkenの自動配送ロボットも、この自動運転タイプだ。
なお、現在開発が進められているモデルの多くは、セミリモート型とフルリモート型の段階にある。
【参考】関連記事としては「Uber Eatsの配送ロボ、「安全大国ニッポン」でも襲撃の標的に?」も参照。
ガイドタイプは倉庫などで広く普及
磁気テープなどのガイドに従うモデルは、主に「Automatic Guided Vehicle/AGV(無人搬送車)」と呼ばれる。比較的歴史が古く、工場や倉庫内などで物資や荷物の搬送用途で活用されている。倉庫内などで搬送車を走行させたいルート上に事前に磁気テープ・マーカーを設置し、それを読み込むことで搬送車が自律した走行を行う。障害物センサーなどを備え、作業員などへの衝突を回避するシステムを搭載したモデルもある。
【参考】関連記事としては「AGV・AMRとは?自動搬送ロボットとしての違いは?(2023年最新版)」も参照。
追従型も応用サービス拡大局面へ
一方の自動追従型は、人や他のロボット、台車などの後に続く形で走行する。多くの場合、走行開始時に追従対象をセンサーで認識・登録し、対象の動きに合わせて追従を行う。
倉庫内では、例えば人力の台車に自動追従型が次々と続くことで、1人の労力で効率的な運搬が可能になる。いわばロボットの隊列走行だ。先頭の台車のみを自動運転化し、追従させることもできる。
また、近年はショッピングセンターや宅配などの場面における活用にも注目が集まっている。重たい荷物を追従型ロボットに載せ、駐車場のマイカーまで運搬したり、空港玄関口から手荷物検査場まで運搬したりすることもできる。運搬時は追従機能でフレキシブルに移動し、運搬後は自動運転機能で所定の位置まで戻る機能も搭載されれば、活躍の場面は一気に増えそうだ。
宅配シーンでは、1人の宅配員に追従する形で複数の台車を走行させることができ、大規模マンションなどにまとめて荷物を搬送する際などに活躍する。
■車両タイプによるロボットの分類
台車型やミニ配送ロボット型など
自動配送ロボットを車両タイプ別に分類すると、大きく「台車型」「ミニ配送ロボット型」「大型配送ビークル型」に分けることができそうだ。
台車型はガイドタイプや追従タイプに多く、人力で持ち運べないレベルの大きく重い荷物も運ぶことができるモデルが多いのが特徴だ。
ミニ配送ロボット型は、自律走行型でフレキシブルな配送を得意とする。現在開発の主流となっているのは歩道や施設内を走行するモデルで、小さめのボディに1カ所ないしは複数カ所に分けて荷物を積載し、配送する。自由な移動が可能になる反面、積載容量や配送エリアには限りがある。
大型配送ビークル型は、主に車道を走行するモデルで、実質的に自動運転車とほぼ同じ要件を備えている。乗用車をベースにしたモデルをはじめ、やや小型で比較的低速走行を行う小型ビークルモデルの開発も進められている。
大量の荷物を搬送でき、比較的広範囲に配送することができる。あくまで車道を走行するため、荷物を受け渡す際の駐停車場所の確保などが必要となる。
■各タイプの開発例
ガイド・追従タイプ
ガイド・追従タイプの代表例としては、ZMPの物流支援ロボット「CarriRo」が挙げられる。追従機能を搭載したシンプルなモデルやランドマークを活用したガイドモデルなどがあるほか、ランドマークにSLAM機能を組み合わせることでガイドレス走行も可能にしたハイブリッドモデルや、人間搭乗用のオプションなども用意されている。
このほか、反射素材のテープをトレースする機能やメモリトレース機能、自動追従機能などを備えたDoogの「サウザー」、遠隔操縦や自動追従機能などを持つソミックトランスフォーメーションの「SUPPOT」など、さまざまなモデルが実用化されている。
【参考】CarriRoについては「ZMP、自動運転可能な物流支援ロボ「CarriRo」に人間搭乗用オプション」も参照。
ミニ配送ロボット型
ミニ配送ロボット型は、先行するZMPの「DeliRo」やHakobotの「Hakobase」をはじめ、この3~4年で国内企業の開発も盛んになってきた。
DeliRoは最大50キロの荷物を最大8つのロッカーに分けて配送することができるほか、目と音声によるコミュニケーション機能も搭載している。ENEOSホールディングスとデリバリーサービスのエニキャリとのサービス実証や日本郵便との実証などに活用されている。
Hakobaseは、開発・量産化に向け2021年末にクラウドファンディングで資金を集め、2023年以降に一般販売を開始する目標を掲げている。そして2024年に量産体制を確立し、2026年にバイアウトするロードマップも発表している。ちなみに同社は堀江貴文氏が取締役を務めることでも知られる。
【参考】関連記事としては「ホリエモン参画のHakobot、新型の自動配送ロボ!2026年バイアウトへ前進」も参照。
置き配バッグサービス「OKIPPA(オキッパ)」を展開するYperは、新規事業として2021年4月に配送ロボット「LOMBY(ロンビー)」の開発に着手し、2022年5月に開発企業LOMBYへ事業継承している。
遠隔操作と自律走行を組み合わせたモデルで、専用の宅配ロッカーと配送ロボットを自動連携させることで荷物の積み下ろしの自動化も図っている点が特徴だ。
【参考】LOMBYの取り組みについては「MADE IN JAPANの自動配送ロボ、LOMBYが開発中!」も参照。
大手企業も続々参入
ミニ配送ロボット型の開発には、大手企業の参入も相次いでいる。
パナソニックホールディングスは、自動走行ロボット「X-Area Robo」と遠隔管制システム「X-Area Remote」を開発し、エリアモビリティサービスプラットフォーム「X-Area(クロスエリア)」としてトータルソリューション展開を目指す。楽天グループや西友などと協力し、神奈川県横須賀市や茨城県つくば市でサービス実証を進めている。
【参考】パナソニックの取り組みについては「国内初!自動配送ロボで遠隔監視型の公道走行許可 パナソニックが取得」も参照。
ホンダもプラットフォーム型ロボティクスデバイスを活用した自動配送ロボットの開発を進めており、楽天グループと筑波大学構内などで実証を開始している。川崎重工業もティアフォーなどと連携し、走行能力の高いロボット開発を推進している。
【参考】川崎重工業の取り組みについては「川崎重工が「自動運転」に本気だ!無人で動く多用途車両や配送ロボ」も参照。
大型配送ビークル型
国内勢では今のところ大型配送ビークル型を独自開発する動きはないが、京セラコミュニケーションシステムが中国スタートアップNeolixのロボットを導入し、2021年に北海道石狩市の公道で実証を行っている。
海外では乗用車ベースのモデルを活用した実証は散見されるものの、オリジナルモデルの開発を手掛ける企業は少なく、小型ビークルモデルを開発するNeolixと米Nuroが開発面で飛び抜けている印象だ。
Nuroに対しては、ソフトバンクグループやトヨタ傘下のウーブン・キャピタルなどが出資しており、将来的に日本に導入される可能性も考えられそうだ。
【参考】京セラコミュニケーションシステムの取り組みについては「日本初!自動配送ロボットが車道走行 京セラ子会社、北海道で実証実験」も参照。
■【まとめ】実用化を目指す取り組みが加速へ
上記の分類は厳密に区分されるものではなく、自律走行と自動追従の両方を備えたモデルや、小型ビークルながら歩道を走行可能なサイズに抑えたモデルなども存在する。
法改正により近く本格的な公道走行が可能になり、実用化を目指す取り組みが大きく加速していくことが予想される。ビジネス化に向けてはまだまだ多くの課題が山積しているが、イノベーション実現に向け研究開発を進める各社の取り組みを引き続き応援したい。
■関連FAQ
大きく分けて「自律走行型」と「自動追従型」がある。自律走行型は単独での自動運転が可能なシステムを備える一方、自動追従型は人やロボットなどへの追従が前提で、単独での自動運転は前提とされていないケースが多い。
デリバリーや配送に限って考えた場合、大きく分けると、「台車型」「ミニ配送ロボット型」「大型配送ビークル型」の3タイプがある。実際の製品例としては、台車型はZMPのCarriRo、ミニ配送ロボット型は米AmazonのAmazon Scout、大型配送ビークル型は米Nuroなどが開発している。
倉庫内など走行領域が限定されている自律走行ロボットは、以前から実用化が進んでいた。現在では「歩道」や「車道」など一般歩行者などがいる道路においても、実用化・商用化が進んでいる。
日本国内のベンチャー企業としては、ZMPやHakobot、Yperなどが挙げられ、大手企業としてはパナソニックや川崎重工業、ホンダなどが挙げられる。
アメリカではNuro(ニューロ)が一歩リードしている。すでに大手スーパーなどと商品デリバリーの取り組みを進めている。中国ではスタートアップNeolixなどの存在感が強い。日本国内では、京セラコミュニケーションシステムなどが実証実験を行っている。
(初稿公開日:2022年7月30日/最終更新日:2024年3月20日)
【参考】関連記事としては「自動配送ロボット(宅配ロボット)最新まとめ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)