自動運転業界、業界再編じわり進む

VW、ファーウェイの自動運転部門を買収か



自動運転業界で買収・合併の動きがにわかに増えてきた。2022年2月17日には、独フォルクスワーゲンが中国通信機器最大手のファーウェイの自動運転部門を買収する計画が報じられた。


フォルクスワーゲンとファーウェイは数カ月前から買収交渉を続けているものの、買収価格の折り合いがつかないため難航しているという。フォルクスワーゲンは数十億ユーロ(約数千億円)で買収したい考えのようだ。

ちなみにファーウェイはフォルクスワーゲン傘下のアウディと自動運転の技術開発において2018年に提携している。

■昨年ごろから買収事例が目立つように

VWがファーウェイの自動運転部門を買収する計画を立てていても、特段驚くべきこととは言えない状況だ。昨年ごろから自動運転業界では買収・合併のニュースが目立ち始めているからだ。

クボタがAgJunctionを買収

例えば2021年11月に農機大手のクボタは、クボタの現地法人「クボタカナダ」を通じ、カナダのAgJunction(アグジャンクション)社を買収したことを発表した。AgJunctionは農業機械・建設機械向けの自動走行制御に関する機器・ソフトウェアを開発している企業だ。


クボタは北米市場でのトラクター自動運転技術の開発と、データを活用した精密農業の研究と開発体制の強化を推進するとした。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1465455537923891200

NVIDIAがDeepMapを買収

2021年6月には、半導体大手の米NVIDIAがマッピング技術開発を手掛ける米スタートアップDeepMapの買収を発表した。2016年設立のDeepMapは、フルスタックのHDマッピングサービスを手がける企業だ。グーグルやアップルでの開発経験を持つエンジニアが立ち上げた。


NVIDIAの自社ソリューションとDeepMapの技術の融合でNVIDIA DRIVEで利用できるマッピングやローカリゼーション機能を強化し、自動運転車の自車位置や進行方向をより正確に認識可能になるという。NVIDIAはグローバルな地図作成や更新が可能になることは自動運転の高度化・拡大に寄与するとしている。

【参考】関連記事としては「NVIDIAと自動運転、マッピング技術でも台頭!DeepMapを買収」も参照。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1461448640309112835

ウーブン・プラネットがRenovo Motorsを買収

トヨタ子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスは2021年9月に自動車向けOS(基本ソフト)を開発する米Renovo Motorsを買収した。この買収でさらなるチーム力の強化とオープンな車両開発プラットフォーム「Arene(アリーン)」の開発スピードを上げるようだ。

ちなみにウーブン・プラネットは2021年7月に配車サービスを手掛ける米Lyftの自動運転部門「Level 5」、同年8月に次世代道路情報解析に強みを持つ米CARMERAも買収しており、3カ月連続で企業買収を完了している。

【参考】関連記事としては「「米企業を毎月1社買収せよ」の大号令?Renovo Motorsも買収」も参照。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1443727359232786443

WeRideがMoonXを買収

中国の自動運転開発スタートアップWeRide(文遠知行)は、物流業界向けの自動運転技術開発を手掛けるMoonX(牧月科技)を買収したことを2021年7月に発表した。買収金額は公開されていない。この買収により優秀なエンジニアを約50人確保したようだ。

WeRideは2020年7月から中国・広州で完全無人の自動運転タクシー実証を開始しており、2021年4月には米カリフォルニア州での無人自動運転車両のテスト許可を取得するなど積極的な動きを見せている。MoonXの買収でWeRideの事業領域は物流業界にも広がる可能性がある。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1422799463953969152

■業界再編の動きは必然的?

買収・合併の動きが増えてきた自動運転業界。過酷な競争で勝ち抜くには、開発のスピードアップが欠かせなく、そのための技術獲得や人材獲得が買収の主な目的となっている。今後も業界再編が進むことは必然的と言えそうだ。動向に注目していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転で注目!国内外スタートアップ45社を総まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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