「音声」は自動運転車において、さまざまなイノベーションを生む。例えば、「◯◯◯へ行って」と車内のAIエージェントに指令を出せば、その地点に向けた最適な経路が算出され、人はハンドルを操作することも行き先を入力する手間もかけず、行きたい場所までいける。
こうした車載向けの技術はすでに音声解析技術を開発する企業が手掛けているが、車載向け以外でもこの音声技術は使える。例えば、自動運転タクシーの配車依頼を人を介さず音声だけで可能にする、といった具合だ。
こうした視点で2021年1月末に新たな実証実験が取り組まれたようだ。対話用AIを開発する株式会社コトバデザイン(本社:東京都渋谷区/代表取締役社:古谷利昭)が関わった実証実験だ。
この実証実験では、AI技術を搭載した会話端末に人が「タクシー呼んで」と頼めば、自動運転タクシーの管理システムに配車問い合わせが自動で行われ、その後、依頼者のもとに自動運転タクシーが向かうという仕組みが取り入れられた。
■コトバデザインの「COTOBA Agentサービス」が活躍
2021年1月28〜31日を実施期間とした実証実験は、奈良県の平城宮跡歴史公園を実施場所とし、コトバデザインとPerceptIn Japan、マクニカが共同実施者だ。
実証実験では、平城宮跡歴史公園内に設置された会話端末で自動運転タクシー「マイクロ・ロボットタクシーMopi」を呼び出すというスキームが組まれた。自動運転タクシーはセーフティドライバーが同乗して走行する形態だ。
音声対話には、コトバデザインのクラウドAPIサービス「COTOBA Agentサービス」を使用。報道発表によれば、このCOTOBA Agentは、総務省からの委託研究テーマ「高度対話エージェント技術の研究開発・実証」の成果が活用されているという。
■課題を一つずつ解決、使いやすさが向上
自動運転タクシーの配車依頼は、スマートフォンで事足りると感じる人も少なくないはずだ。ただ高齢者の場合、スマートフォンの操作に慣れていないこともあり、今回のような音声での配車の方が容易であるケースも多い。
こうした課題が過去にマクニカとPerceptInが実施した実証実験で浮き彫りになり、今回の実証実験ではコトバデザインの音声AI技術が導入されたようだ。
各地で自動運転タクシーの実証実験が盛んに進められる中、抽出された課題を1つずつ解決することで、より実サービスとしての利用者の使いやすさが増していく。今回の実証実験で、また一歩、自動運転タクシーサービスが実用化に向けて前進したと言えそうだ。
【参考】関連記事としては「「ハイ、メルセデス」不要!セレンスの音声技術、自動運転時代にむけ大注目」も参照。