ソフトバンク子会社のSBドライブ株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:佐治友基)が開発した「Dispatcher」の存在感が高まっている。
Dispatcherとは、ドライバーの代わりに自動運転バスの運行状態を遠隔管理・監視するプラットフォームで、自動運転車両のトラブル時などにも活躍する。つまり、自動運転車両そのものを「主役」とすると、Dispatcherは自動運転の「裏方」とも言える存在だ。
そして自動運転の裏方と言えるもう一つの技術がある。それが次世代通信規格「5G」だ。ちなみにソフトバンクは「5G×自動運転」の実証実験にも取り組んでおり、Disparcherと5Gで自動運転の裏方を完全に牛耳る日が来るかもしれない。
この記事ではDispatcherと5Gにおけるソフトバンク(SBドライブ)の取り組みをそれぞれ解説する。
■全国での普及を進めるDispatcher
遠隔から自動運転バスを監視・操作できるDispatcherは、2016年設立のSBドライブが最も開発に力を入れてきたシステムだ。自動運転バスを含む無人運転の車両には管制センターの役割を果たすDispatcherのようなシステムが必要となる。
Dispatcherは万が一の場合には、自動運転バスの停車や発車も遠隔で実行できる。また、GPS(全地球測位システム)で自動運転バスの位置情報をリアルタイムに把握し、車両内外に取り付けられたカメラ映像の管理や分析を行うことができる。そのほか、バス走行中に乗客が車内を移動したりすると、AI(人工知能)による検知で注意を促すことも可能だ。
2020年1月22日から31日には、全日本空輸株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:平子裕志)=ANA=が羽田空港で行う大型自動運転バスの実証実験に協力すると発表した。Dispatcher機能を使ってバスの遠隔監視を行うほか、添乗員向けのスマートフォンアプリも用意し、Dispatcherと連携させるという。
■5G通信では全国の自治体や企業とタイアップ
5Gは現在主流のLTEの約25倍の大容量高速通信が可能で、多数の機器を同時接続でき、タイムラグを抑えた低遅延が特徴だ。5Gの周波数帯は日本では、NTTドコモ、KDDI・沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てられている。
ソフトバンクは2019年、一般車両も走行する新東名高速道路において、5Gの車両間通信を使った車間距離自動制御の実証実験を実施し、成功させた。有人の先頭車両に自動運転の後続車両が追従するというトラックの隊列走行で、新たな無線方式「5G-NR」を活用し、トラック間の制御情報を共有できたという。
トヨタや本田技研研究所、SUBARUなどの民間企業のほか、全国の自治体と官民協働で5G技術の普及に取り組んでいることにも注目だ。
【参考】関連記事としては「ソフトバンク、基地局圏外での隊列走行に寄与する実験に成功 5G-NRで低遅延通信」も参照。
ソフトバンク、圏外での自動運転トラック隊列走行に関する実験に成功 5G-NRで低遅延通信 https://t.co/PFkl9ptjUi @jidountenlab #ソフトバンク #5G #自動運転 #隊列走行
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) April 15, 2019
■【まとめ】裏方として技術開発を推進
ICT分野の総合力が高いソフトバンクは自動運転社会の到来を見据え、これからもDispatcherや5G通信などの裏方の技術の開発を強力に進めていくものとみられる。ソフトバンクの今後の動向に引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「ハンドルのない自動運転バス、ソフトバンク子会社がナンバー取得 SBドライブ」も参照。