自動運転時代の最強ライフハック術11選

時短も小遣い稼ぎも!コーディネート機能にも期待



自動車や移動に対する概念が少しずつ変化してきている。自動車は「所有」するものから「利用」するものへと変わっていく兆しを見せ、移動は「MaaS(Mobility as a Service」の概念が急速に浸透している。


これらの変化と複雑に絡み合うのが自動運転だ。自動運転の実現は自動車を「利用」するものへと急速にシフトさせるインパクトを持ち、移動のサービス化を推し進めることになる。

では、この自動運転の実現により、人間の日常的な生活はどのように変わるのだろうか。運転から解放されたドライバーと、無人で動き、コネクテッド技術によりクラウドと一体化した自動車は、日々の暮らしにどのような影響を与え、どのような利便性をもたらすのか。

自動運転の実用化がもたらすライフハックについて一考してみよう。

■クルマをお使いにいかせる

自動運転車は、人を運ぶだけのものではない。「お使い」役を担うこともできるようになる。例えば、知人から荷物を受け取るような場合に「今から自動運転車が取りにうかがう」と電話で告げればOKな時代に。設定された行き先に自動運転車が向かい、荷物を受け取って帰ってくるのだ。


これは宅配便にも応用できる。宅配ロボの開発が進んでいるが、自動運転車が集配拠点まで荷物を引き取りに行くことも可能だ。

もちろんその逆も可能で、荷物を受け渡す場合にも自動運転車が活躍するだろう。宅配ロッカーのようなオプションを自動運転車に取り付けることで、様々な場面に対応できそうだ。

■クルマを買い物にいかせる

お使いができるのであれば、買い物もできることになる。あらかじめスーパーなど小売店のECサイトで注文した商品を、自動運転車が受け取りに行くといったことも想定される。

機能が向上すれば、自動運転車に「ほうれん草とごま油をお願い」と頼むだけで、自動運転車がクラウドの情報の中から各商店の情報を検索し、商品価格や総距離などを総合的に判断して注文・受け取りまでを全自動で行うことも考えられる。


また、オーナーが直接買い物に出向く際も、「大根とこんにゃくが安いところ。あと、花壇の肥料がほしい」などと頼めば、情報を精査して最も安いスーパーやホームセンターなどに案内する――といった機能も十分可能だろう。

■クルマが一人で送り迎えに

日常の中で、意外と手間がかかるのが子どもの送迎だ。毎日のように繰り返される送迎のために、炊事洗濯などの用事を途中で切り上げている人も少なくないのではないか。

こうした登下校や塾・習い事の送り迎えなども、自動運転車が自発的に行ってくれる。あらかじめ設定した日時や子どもに持たせた端末情報などをもとに、自動運転車が特定の場所へ向かい、子どもを乗せて次の目的地や自宅などへ送迎する。

「大事な我が子を直接目の届かないところで」――という葛藤が生まれるかもしれないが、乗り物をはじめさまざまなものが機械化・無人化されていく将来、自動運転による送迎が安全性の観点からも推奨される日が訪れるかもしれない。

駐車場問題を気にしなくても

1時間数千円、月額5万円オーバーもある都心部の駐車場。なるべく自宅の近くに借りたいが、高額過ぎて及び腰になっている方に朗報だ。自動運転車なら、オーナーを自宅で降ろした後、やや離れた郊外の駐車場まで自ら移動し、駐車してくれる。乗車する際も、もちろん自宅前まで自動でやってくる。

旅先や買い物先などでも、目的地でオーナーを降ろした後、自動運転車が自動で駐車場を見つけて待機するため、駐車場を探す手間や駐車場から目的地までのちょっとした移動の手間も省くことが可能だ。

また、賛否両論あるところだが、必要とする駐車時間が短時間であれば、自動運転車が周辺をぐるぐる走行し続けて駐車料金を浮かすことも考えられる。駐車料金よりも走行にかかる経費のほうが安い場合があるためだ。

■自動運転車が旅行をコーディネート

趣味ランキングで必ずのように上位に食い込んでくる旅行。イベントや飲食、景観、文化体験など、その目的はさまざまだが、自動運転車なら、目的や気分に応じて素敵な旅行を提案してくれる。

例えば、「日帰り可能で、城見学ができて温泉に入ることができて、さらにおいしいそばが食べられるところ」と自動運転車に問えば、AI(人工知能)がクラウド上の観光サイトやグルメサイトなどから情報を収集・統合し、個人ツアー案を提示してくれる。

また、移動中も旅先の観光情報やグルメ情報、クーポン情報などを提供することも可能になるだろう。

■自動運転車が空き時間をコーディネート

自動運転車が提案してくれるのは、旅行だけではない。時間を持て余している際なども、「ちょっと体を動かしたい」「90分くらい暇をつぶしたい」といったあいまいな要望にも、バッティングセンターやウォーキングコース、カラオケ、カフェなど、移動時間を考慮したさまざまな提案を出してくれる。

■自動運転車を寝室に

車内空間が「乗る」ものから「くつろぐ」空間に変わる自動運転車。出張や旅行などで長距離移動が必要な際、従来は休憩をはさみながら運転し、夜遅くに目的地についたらまずホテルにチェックインして睡眠をとり、翌日に備える――といった行動が一般的だが、これが必要なくなる。

自動運転車であれば、車内に設置したベッドでぐっすり眠ることができる。就寝時間を移動時間に充てることで、目を覚ますころには目的に到着しているのだ。

このような自動運転車を寝室化するコンセプトは、スウェーデンのボルボ・カーズなどが実際に公表しているほか、移動可能なホテルを見据えたコンセプトなども存在する。人生の3~4分の1を占める睡眠時間の有効活用は、大きな需要となって反響を呼びそうだ。

■家族間シェアが容易に

自動車に対するニーズの変化から「所有から利用へ」と変わりつつある現在、これを象徴するかのように都市圏を中心にカーシェア人気が高まっている。自動運転が実用化されれば、その動きはいっそう加速するものと思われる。

しかし、自動車の利用頻度が高い家庭にとっては、自家用車を手放すことは容易ではない。公共交通が乏しい地域や広範な移動を余儀なくされる地域などでは、普通乗用車と軽自動車の2台を活用する家庭も決して少なくない。例えば、旦那が1台を通勤用に活用し、妻がもう1台を買い物などに活用するといったケースだ。こういった地域へのカーシェア普及は、需給の観点から時間を要するケースが多く、自家用車を手放すきっかけがなかなかつかめない。

こうした2台持ちの家庭に自動運転車を導入した場合を想定してみよう。旦那が通勤で使用する自動車は、通常は終業時まで通勤先の駐車場で待機することになるが、自動運転の場合、旦那を会社に送り届けた後、自動車だけを自宅に戻すことが可能になる。妻は、その自動車に乗って買い物などの所用を済ませることができるようになるのだ。

同時利用は不可能だが、妻が買い物中、自宅に戻った自動運転車がおばあちゃんを病院へ送迎するなど、待機中の自家用車を有効活用しやすくなる利点は思いのほか大きい。

■個人間カーシェアや無人タクシーでお小遣い稼ぎ

自動運転車であれば、待機中の自家用車を有効活用するアイデアが大きく広がる。自宅で利用しない時間帯や、通勤用自家用車で終業時まで駐車場に停めっ放しの自動車を活用し、個人間カーシェアで貸し出すことが容易になる。

借りる側は運転免許を必要としないため、子どもや免許を返上した高齢者らも気軽に利用できるほか、乗り捨手が可能なワンウェイ方式も当たり前のサービスとなる。乗り捨てられた自動運転車は、自動で元の場所に戻ることができるためだ。

同様に、個人による無人タクシー事業の道が開ける可能性もある。自動運転によるカーシェアは、事実上無人タクシー同様のサービス展開が可能になる。

こうした未来の可能性は、米EV大手のテスラが発表した「TESLA NETWORK(テスラネットワーク)」構想がその実現性を物語っている。

同社の完全自動運転車をリース契約したオーナーが、マイカーをテスラネットワークに登録することでロボタクシーとして活用することができるライドシェアのようなアイデアで、マイカーを使用していない時間を配車サービスに充てることでオーナー自ら運賃を稼ぐことができ、テスラにも手数料が支払われる仕組みとなっている。

【参考】個人間カーシェアについては「個人間カーシェアの主要4サービス・アプリまとめ MaaSサービスの一種」も参照。テスラネットワークについては「ロボットタクシーとは?自動運転技術で無人化、テスラなど参入」も参照。

■移動時間に趣味や教養を

総務省の「平成28年社会生活基本調査」によると、平日における日本人の通勤・通学の平均時間は1時間19分となっている。電車通勤の場合は読書などの余地があるが、運転操作を伴う自家用車の場合はそうもいかない。

自動運転ならば、この貴重な時間を有効活用することができる。食事はもちろん、映画鑑賞やゲームといった趣味に興じたり、語学レッスンなど教養を身に着ける時間としても活用できる。

1日1時間19分は、単純計算だと1カ月で約40時間、1年で約480時間にもなる。毎日自動車を利用することもないだろうが、積もり積もって大きな時間になることは間違いないだろう。

■働き方が変わる

営業をはじめ、出先で顧客対応を図るなど移動が多い職種においては、働き方が変わりそうだ。移動時間を有効活用しながら仕事に打ち込むことができる環境が用意されることになる。

特に働く場所を選ばないノマドワーカーにとっては新たな選択肢となり、その時々の気分でドライブしながら――といったスタイルも可能になりそうだ。

■【まとめ】自動車は操るマシンからロボットへ

いろいろと想像してみたが、自動車が完全に自動化される自動運転レベル5を想定したものが多く、実現にはまだまだ時間を要する。

ただ、その頃には自動運転レベル4の実用化・普及がすでに進んでおり、自動車は従来の「操るマシン」から「ロボット・コンピューター」のような存在に近づいているものと思われる。

「移動」が主な目的であるのは変わりないが、移動に伴うさまざまな付加価値が生み出され、生活に多様な利便性や娯楽をもたらすのだ。

19世紀のフランス人作家、ジュール・ヴェルヌが残したとされる名言「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」を信じ、エンジニアをはじめとした業界関係者にはいっそうの情熱をもって自動運転開発やサービスの発案を進めてもらいたい。


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