
まず、Xに投稿された動画(https://x.com/DaisukeMAN/status/2115003083369730318)を一本見てもらいたい。TuringでCOOを務める田中大介氏の投稿だ。

雨がぱらつく中、歩道が分離されていない細い路地を自動運転車が走行し、対向車との譲りあいをこなす内容だ。素人目で見てもその素晴らしさが感じられる。
ただ、自動運転ラボ主宰の下山哲平は「おそらく手動介入無しでの走行と思われるが、肝心のその情報がないため、『本当の自動運転レベル4相当』で走れていたのかが、はっきりと伝わらない」とし「そのような情報発信はもったいない」と指摘する。
その上で「こうしたアピールポイントをもっと自慢すれば、すごさに対する共感が広がる」とし、「各社がどんどん自慢をすれば競争が生まれ、競争があってこそ技術は磨かれ、業界は盛り上がる。自動運転の社会受容性向上にもつながる」と説明する。
Turingは積極的に動画を公開しているが、他の国内開発企業は消極的に感じ、技術水準をつかみにくい。一方、実用化済みの海外先行勢は、乗客が率先して無人走行の様子をSNSにアップしてくれるため、その技術の高さを体感しやすい。
国内企業は、実証中であれSNSを駆使してもっと自社技術のアピールに力を入れるべきではないだろうか。自動運転技術は「動画」との相性が高い。SNS全盛のご時世、「動画」の観点から国内開発勢の動向に迫る。
記事の目次
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■国内開発勢のSNS利用の実態
国内開発勢の走行動画は極端に少ない?
自動運転業界における実績や社会的ポジションについて詳しい専門家ではなく、インターネット上の情報のみを見ている不特定多数の一般人の中には、Turingの自動運転技術が国内最高峰と感じている人は少なくない。Turing以外の開発企業は極端に公開実証動画が少なく、技術水準を知り得ないためだ。
他社は、「どこそこで実証を行いました」的な、簡易版プレスリリースのような使い方しかしていない。動画を公開することで技術が向上するわけではないため、手間暇かけてわざわざアップしなくてもよい――と言うのも正論だが、SNS全盛のこのご時世、技術力をPRしないのはもったいない。
視聴者からすれば、肉眼ではないにしろ、動画という目に見える形で技術に触れることで理解が深まる。自動運転のPRに動画はもってこいで、技術の粋が一目でわかる。臨場感が伝わるとともに、安全性も感じられるのではないだろうか。
Waymoら先行勢と比べると見劣るかもしれないが、それは仕方がない。先行勢に食らいついていく気があるのなら、現状の技術をさらけ出し、その進化をぜひとも「見える化」してほしいところだ。
Turingは実証走行動画を次々とアップ
好例はTuringだ。同社は、企業として積極的にYouTubeやブログなどで情報を公開しているほか、CEOの山本一成氏やCOOの田中大介氏らが個々にSNSで進捗情報などを更新している。
田中氏の投稿をいくつか参照してみよう。
ごまかしなしの都心ワンテイク自動運転、フル動画はこちらです。
虎ノ門を出発し、銀座コリドー街、霞が関、首都高、青山通りへ。都心の難所をE2E自動運転で駆け抜けてみました。 https://t.co/7W7OgctN8I— 田中大介/チューリング株式会社COO (@DaisukeMAN) September 30, 2026
弊社拠点がある平和島から新宿住友ビルあたりまで高速を使わず下道で自動運転ドライブ。60分くらいの道のりでしたが、完全に未介入で到着しました。あえて難しい道やシーンを選ばなければもうだいたいどこでも自動で行けちゃいます。
(倍速&停止時は20倍速で再生) https://t.co/QWkuC4ec59— 田中大介/チューリング株式会社COO (@DaisukeMAN) October 30, 2026
雨が降る夜の中目黒の細い道をチューリングの自動運転で走行中、正面から来た車とお見合いになってしまいお互いどうする?となった局面で対面の車が動かなそうだったので先に動いて慎重にすれ違っていて、とても賢かったです(44秒〜) https://t.co/4lntJDAyZk
— 田中大介/チューリング株式会社COO (@DaisukeMAN) October 27, 2026
1本目は、田中氏と山本氏が車内で会話しながら実証を行う動画で、40分超に及ぶワンテイク動画が添付されている。
2本目は約20分の走行動画だ。60分に及ぶ走行を手動介入なしで完遂したことを報告している。
3本目は冒頭紹介した動画で、細い路地を走行中、対向車とお見合いしたときのAIの対応が収められている。
こうした動画を見ると、Turingの自動運転技術の「今」がよくわかる。一本目の動画には、青信号の交差点の先が混雑して詰まっていることを認識し、交差点手前でしっかり停止して待つ様子や、皇居付近の複雑な車線変更、右折時、黄色信号で突っ込んでくる対向車の見極め、隣接車線から前方に入ってきた車両に合わせた自然な加減速など、E2E AIのすごさが随所で顔をのぞかせている。
乗車中の山本氏と田中氏が将棋AIの話をしたり、AIの車線選びを心配したりしている様子も収められており、開発者目線の会話も興味深い。本気かわからないが、「人間の介入の方が間違えていることが増えてきている」といった言葉も聞こえる。
なお、ワイパーを手動で動かすシーンはあったが、おそらく手動介入なしで走行を完遂したものと思われる。専門家であればそうした推察できるが、もし本当に手動介入ゼロだったのなら、やはりそこをはっきり明示いないことは、この動画の価値を大きく毀損してしまっていると言わざるを得ない。
なお、2本目は夜間の運転で、完全未介入という。「あえて難しい道やシーンを選ばなければもうだいたいどこでも自動で行けちゃいます」という通り、迷いなくスムーズに自律走行する様子が収められている。
3本目は、歩道のない細い路地を雨の中走行していると、前方に対向車が現れる。行き交うのが難しいためか双方停車するが、自動運転車は、相手車両の挙動を判断して先に動き始める様子が収められている。
多くの人は「Turingの自動運転すごい!!」と感じるのではないだろうか。もたもたしている感もまったくなく、正直なところ非の打ちどころが見当たらない。むしろ模範的であり、真っ当なドライバーの多くが共感する挙動を実現している。
もっとどん欲にアピールしてもOK
ポイントは、見る人にいかに「すごい」と感じてもらえるか、そして「共感」してもらえるか……ではないだろうか。
Turingがアップしている動画はお世辞抜きですごい。映像に収められた走行を一切手動介入することなく完遂しているとすれば、目標であるテスラに肩を並べたと言っても過言ではないのではないか。
発生頻度が低いロングテール・レアケースへの対応などはテスラもTuringもまだ詰めなければならないものと思われるが、レベル2++水準には達しているのではないかと感じる。
ただ、こうした個々の動画において、手動介入ゼロなのか、何度も走行している道路なのか……といった背景も気になるところだ。おそらく大半は手動介入ゼロと思われるが、そうした点も貪欲に自慢してほしいところだ。
下山は「せっかくベンチャーとして新しいE2E型で『テスラを超える』という野望を掲げるイノベーターを名乗るなら、より戦闘能力の高いアグレッシブなPRの立ち回りを身につけてほしい」とエールを送る。
また、介入があった場合、どういった理由で介入したのか、AIが苦手とするシチュエーションは何なのかも提示し、後日、それをどのように改善したのか……といった感じで進化の具合を感じられるようにすると、リアリティが増すのではないだろうか。
該当ルートが、走行経験のあるルートなのか初めて走行するルートなのか……といった観点も大きなポイントとなる。
この未知の道において、どれだけ自律的な走行ができるかは、レベル2++やレベル5において最重要とも言える要素となる。すでに経験済みの道であれば、道路条件などは学習済みとなるが、初めて走行する道は一切の予備知識がない。そこで自律走行を実現するには、AIが純粋に人間並みの運転能力を持たなければならないのだ。
こうした初めて走行するルートを「自動運転チャレンジ」のような形で走行する動画シリーズがあると面白いかもしれない。AIの技術水準をうかがうことができるほか、新たな課題が見つかれば、前述したように改善に向けた進化の工程を示すことで、技術開発の高さを知らしめることができる。
なお、TuringのYouTubeを見ると、自動運転でいろいろなところを走行するシリーズのようなものが立ちあがったようだ。前出の山本氏と田中氏の都心ドライブに続き、データ収集ドライバーと田中氏が日光・いろは坂を走行する動画もアップされている。
おそらく、自動運転では初めて走行する道と思われるが、倒木などを早めに検知して避け、峠の急カーブもなめらかに通過していく様子が収められている。データ収集ドライバーが乗客に安心感をもたらす運転について語っている点も興味深い。会話から、明るい社風が伝わってくる点もプラスだろう。
【参考】関連記事「自動運転AI、ついに「サンキューハザード」覚える」も参照。
■【まとめ】各社はSNS・動画を活用した積極アピールを
SNS・動画コンテンツを通して、技術開発の現在地を広報する意義は大きい。実際にTuringの動画を見てもらえれば、その技術は海外勢に引けを取らないのでは?――と感じるのではないだろうか。そして、国内他社の技術水準も知りたい――と思う人も出てくるのではないだろうか。
開発各社は、ぜひとも自社技術の「今」を動画などで公表し、どんどん自慢してほしい。公表することで実用化前であっても競争が生まれ、プレッシャーを感じつつモチベーションを高めていくことができる。さらには、自動運転の社会受容性向上にもつながる。
競争があってこそ技術は磨かれ、業界は盛り上がる。業界全体のためにも、SNS・動画を活用したアピールをぜひ各社にはお願いしたいところだ。
【参考】関連記事としては「ロボタクシー普及、「日本人の保守性」攻略が鍵【解説:下山哲平】」も参照。













