ウェイモとAmazon 自動運転のテスト走行で人間を怪我させていた

テストドライバーの負傷が2年で20件超?



米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)とAmazon傘下のZoox(ズークス)が、公道での自動運転車のテスト走行中に、テストドライバーに20件を超える負傷を負わせていたことが分かった。

急ブレーキや急な進路変更によるむち打ち、捻挫、骨折などだ。安全な自動運転を実現するためのテスト走行が、車内の人間を危険にさらしていたことになる。


Zooxでは2026年に入っても負傷が続いていると関係者が証言した。一方、ウェイモの2026年の状況はまだ明らかになっていない。

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■自動運転のテスト走行で人間を怪我させていたウェイモとZoox

ロボタクシーの開発現場で起きていた作業員の負傷だ。対象は、自動運転車に同乗してシステムの挙動を監視するテストドライバーである。

2024〜2025年の2年間に、両社合わせて20件を超える負傷がOSHAに報告されていた。内訳はウェイモ側が16件、Zooxが最大8件。いずれも公道で自動運転をテスト走行する過程で起きたものだ。

データが表に出たのは、OSHAの報告制度による。危険度が高いとされる指定業種で従業員が100人以上の事業所は、前年の負傷記録の詳細を毎年OSHAへ電子提出しなければならない。OSHAはこのデータを公開する方針をとっている。ロボタクシー事業者はタクシーや交通サービスの業種に分類されるため、この報告の対象となる。


自動運転タクシーの安全性は、乗客や歩行者の立場で語られることが多い。しかしその裏では、技術を磨く役割を担う人間が体を痛めていた。

【自動運転ラボの視点】
ロボタクシーの安全性は乗客や歩行者の視点で語られがちだ。しかし、それを支える現場の作業員が負傷を重ねていた事実が発覚。開発の速さと働く人の安全を両立できるかが、自動運転業界全体の信頼を左右するだろう。

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■急ブレーキ、急な進路変更がテストドライバーを襲う

報告された負傷は、捻挫や筋違い、むち打ちが中心だ。ほかにも手首の骨折、肩や首の負傷、肋骨や背骨の痛み、腰痛などが記録されている。仕事を休んだ期間は4日から最長175日に及んだ。

原因として目立つのが急ブレーキだ。前方に障害物がないにもかかわらず、自動運転システムが強くブレーキをかける。急な進路変更も負傷につながっていた。

さらに、システム全体が止まり、それに伴ってブレーキが作動する現象もある。現場ではnogo(走行不能による停止)と呼ばれている。

骨折に至った例もある。ウェイモの事例では、駐車中に車が突然後退し、ハンドルが急に回って手を巻き込んだ。このテストドライバーは手首を骨折し、2カ月以上仕事を離れた。

テストドライバーは、システムの判断ミスに備えて運転席で待機する役割を担う。予期しない急ブレーキや急な進路変更は、その体に直接負担をかける。

■ウェイモは委託先Transdev経由で2年16件

ウェイモのテストドライバーは、ウェイモが直接雇っているわけではない。雇用と管理を担うのは、仏交通大手Transdev(トランスデブ)だ。

Transdevの報告によると、負傷は2024年に5件、2025年に11件。2年間の合計は16件となる。いずれもサンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックスの3都市にあるウェイモの拠点に関するものだ。走行距離の拡大とともに、負傷件数も2倍以上に増えた。

ウェイモは、「乗客、道路利用者、そしてチームの安全が最も重要だ」とコメント。人間が同乗した状態で数千万マイルを走行してきた実績も強調している。

2026年の状況はまだ分からない。OSHAへの提出は翌年に行われるため、今年の負傷件数が明らかになるのは2027年となる。

ロボタクシー事業そのものでも課題は残る。ウェイモは2026年6月、高速道路の工事区間に進入するおそれがあるとして、約3,900台のリコールを米運輸省道路交通安全局NHTSAに届け出た。

■Zooxは2026年も負傷が続く アトランタでは有毒ガス問題も

Zooxは2024〜2025年に、急ブレーキに関連する負傷を最大8件OSHAに報告した。サンフランシスコやラスベガスなど、同社が試験走行を行う都市で起きている。

Zooxは、急ブレーキは避けられない場合があると説明する。そのうえで、報告された負傷は数百万マイルに及ぶ試験走行のごく一部だとしている。試験に使われているのは専用のロボタクシー車両ではなく、トヨタのSUV「ハイランダー」にセンサーを載せた改造車だ。

9月23日には、新たな問題も明るみに出た。アトランタで試験車両に乗った作業員が、有毒ガスにさらされたとみられる症状を訴えたのだ。8月14日には4人がテスト走行中に体調を崩し、3人が救急外来を受診した。OSHAに提出された書簡では、最大40人がさらされた可能性があるとされる。Zooxは同地の試験車両の運行を止め、排気系の点検などを進めている。

運転の制御とは別の問題だが、テストドライバーの安全が揺らいでいる点は共通する。また7月には、ラスベガスで火災現場の濃い煙の中にZooxの車両が進入し、ソフトウェアのリコールにつながった。試験と実運用の両面で、Zooxの安全管理が問われている。

【参考】関連記事としては「アマゾンの自動運転タクシー「Zoox」が有料にできないワケ」も参照。

■「安全な自動運転」のために人間が怪我をする

ロボタクシーは、事故そのものは人間の運転より少ないという調査結果が出ている。米道路安全保険協会IIHSが2026年7月に公表した分析によると、ウェイモの無人走行車の衝突率は人間の運転より68%低かった。負傷を伴う事故は81%少ないという。

完成したロボタクシーは安全性を高めつつある。その一方で、完成に至るテスト走行の過程では、車内の人間に負担がかかり続けている。安全な自動運転を実現するために人間が怪我をする。今回の報道が突きつけたのは、この矛盾だ。

自動運転タクシー市場は拡大を続けている。走行距離が増えれば、同乗するテストドライバーの数も、急ブレーキに遭う回数も増える。ウェイモとAmazon傘下のZooxに求められるのは、乗客の安全だけでなく、開発を支える作業員の安全をどう守るかという視点だろう。

日本でも、自動運転の実証実験では運転席に保安要員が乗るケースが多い。ロボタクシーの実用化を急ぐ中で、現場で働く人の安全をどう確保するか。今回の報道は、日本の関係者にとっても無視できない問いを投げかけている。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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