
やっと通期黒字化が見えてきた楽天グループが、自動運転分野への本格参入を模索しているようだ。モバイル事業の売上が伸び、グループ全体の黒字化がやっと見えてきた矢先、まだまだカネのかかる自動運転分野に投資していく……ということなのか。
楽天モバイルをはじめとする通信事業者×自動運転の動向に迫る。
記事の目次
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■楽天モバイルの取り組み概要
通信事業者として佐賀市内の実証に参画
楽天モバイルは2025年6月、総務省の「地域社会DX推進パッケージ事業(自動運転レベル4検証タイプ)」に採択されたと発表した。
佐賀市交通局、建設技術研究所、沖電気工業、先進モビリティ、東海理化、佐賀市と連携し、佐賀市内において、以下の検証を行った。
- ①混雑する市街地における歩行者・車両への注意が必要な3車線の無信号交差点での右折制御
- ②市街地の集客施設付近の通信が混みあっている輻輳(ふくそう)時における情報伝送の安定的な継続
- ③トンネル区間や中山間地域など電波が届きにくい不感地帯などでの安定的な通信品質


①の無信号交差点では、路側センサーを用いることで車載センサー検知範囲外の歩行者・車両等を検知し、交差点におけるスムーズな右折の実現を目指す取り組みだ。
実証場所は佐賀駅バスセンターへの進入口で、同所は右折専用レーンを含め3車線の信号のない交差点となっている。高架下のため見通しが悪く、自動運転バスの車載カメラでは歩行者や対向車が死角に入ってしまうことが課題となっていた。
そこで、バスセンター付近の道路に路側センサーを2カ所設置し、自動運転バスと路側センサーの情報をリアルタイムで連携し、安全に右折できるよう検証を進めた。
②の輻輳時における実証は、5日間で延べ83万人が来場した「2025佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」に合わせて実施した。
輻輳に対し自動運転車両からの通信品質指標を集約し、それらを踏まえた通信の輻輳の度合いを基地局のカバーエリアごとに定量評価する。これにより、輻輳下においても情報伝送を安定的に継続・維持することを目指す内容だ。
バス内外の監視カメラ映像を遠隔監視システムへ送信し、通信環境に応じてデータサイズなどを最適化することで、映像を安定して送信できるか、また、映像の画質を落とした状態でも状況を正確に認識できるかなど検証したという。
③の条件不利地域における通信安定性の確保に関しては、電波が届きにくく通信が困難なトンネル区間を含む通信条件不利地域の中山間地域において、LTEレピーターを用いた安価な通信環境整備により既存の通信環境を延伸することで、自動運転車両が安定接続できる通信環境の構築を目指した。
具体的には、佐賀市内のトンネルに基地局よりも低コストで導入可能なレピーターという中継局を設置し、基地局の電波を中継・増幅することで自動運転バスがトンネル走行中も安定して映像を伝送できるか、モバイル通信環境を検証した。
▼楽天モバイルプレスリリース
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2025/0617_01/
これまでは自動配送ロボットに注力
楽天グループとしては、モバイル事業者として車道を走行する自動運転車に関わっていくのはこれが初めてと思われる。
これまでは、自動配送ロボットやドローンといった事業で動きを見せていたが、これは看板であるEC事業者として、新たな小売配送やプラットフォーマーを目指す色が強いように感じる。
しかし、ここにきてモバイル事業者としての顔を前面に出し、自動運転分野に参入したのだ。
グループとして通年黒字化が見えてきたタイミング
NTTドコモやKDDI、ソフトバンクに次ぐ通信キャリアとして2018年に移動体通信事業者となった楽天モバイル。寡占が続く3強に対し、料金面などで刺激する存在として期待が寄せられる一方、基地局整備などの巨額投資がグループ全体の経営に大きな影響を与えている。
モバイル事業に本格参入した2020年12月期には、営業利益-938億円、親会社の所有者に帰属する当期利益-1,142億円を計上した。
2021年12月期は営業利益-1,947億円、会社の所有者に帰属する当期利益-1,338億円、ピークの2022年12月期には営業利益-3,716億円、会社の所有者に帰属する当期利益-3,772億円まで赤字が膨らんだ。
2023年12月期は営業利益-2,129億円、会社の所有者に帰属する当期利益-3,395億円、2024年12月期は営業利益530億円、会社の所有者に帰属する当期利益-1,624億円、2025年12月期は営業利益-144億円、会社の所有者に帰属する当期利益-1,779億円となっている。
依然として赤字が続いているが、最新の2026年度第2四半期(4~6月)決算では、インターネットサービス、フィンテック、モバイルの全セグメントで前年同期比増収となり、当期連結売上収益は第2四半期として過去最高の6,655億円を計上した。モバイルセグメントの損失改善も継続し、連結Non-GAAP営業利益は420億円(前年同期比109.6%増)、IFRS営業利益は200億円(前年同期比126.9%増)を計上している。

EBITDAにおいては第2四半期として過去最高額の1,153億円(前年同期比11.7%増)を計上し、そして税引前四半期利益は8年ぶり、税引後四半期利益は6年ぶりの四半期黒字化を達成した。親会社の所有者に帰属する四半期利益も6年ぶりの黒字となる77億円となった。

ついに通期黒字化が見えてきたこのタイミングで、自動運転分野に本格参入するのだろうか。多くの方がご存じのように、自動運転は膨大な投資を必要とする分野であり、投資局面はまだまだ続いている。業界をリードするWaymoでさえ、いまだ赤字と言われているほどだ。
堅実なEC事業と利上げに沸くフィンテック事業があるとは言え、楽天グループにそこまでの余力があるのか。再度赤字が膨らむことも懸念されるところだ。
通信事業者として参入するため投資額は限定される?
もちろん、楽天モバイルが自動運転技術を一から開発するわけではない。モバイル通信網や技術を生かし、自動運転分野におけるビジネスを模索していく――といった形と思われる。
移動体である自動運転車において、モバイル通信は必須の技術となる。自社サーバーやクラウド、あるいは他車両や路側インフラなどと、膨大なデータのやり取りをリアルタイムで行いながら走行するためだ。高速かつ低遅延で、途切れることなく安定した通信環境が求められる。
現時点においては、実装されている自動運転車はごく一部に限られるが、中長期的には、現在稼働しているバスやタクシーの大半が自動運転化される可能性を秘めている。数十万台規模、事業数でみても数千~数万クラスのビジネスチャンスが眠っていると考えれば、今のうちにベットしておくことが非常に重要となる。
巨大市場化してから参入しても、すでに多くのシェアを他社に握られ、技術も経験も段違いとなってしまうためだ。
正直なところ、現時点で後塵を拝しているのも事実だ。大手3社は自動運転開発の黎明初期から携わっており、アドバンテージは揺るぎない。企業としての信頼性やネットワークもずば抜けている。
モバイル事業同様、先行する3社に追い付き肩を並べるのは至難の業となる。通信という同じ土俵で、その優位性を覆すのは難しいのだ。
楽天グループは今後、どのような戦略で巻き返しを狙っていく算段なのか。通信サービスを提供しつつ、運行事業者や乗客向けに楽天経済圏と結び付けた付加サービスを提供する――など、新たな価値を見出していくのか。今後の動向に注目が集まるところだ。
【参考】関連記事「楽天・三木谷氏が狙う「超ドル箱ビジネス」!自動運転ロボ配送、実証実験次々」も参照。
■通信事業者×自動運転
NTTグループはNTTモビリティ設立
NTTグループは、各社が積極的に自動運転実証に参画し、多面的にその事業性や関わり方を模索してきた。その成果の一端がNTTモビリティの設立だ。
同社は、自動運転技術で日本の地域交通を支えることを目的に2025年12月に設立された。自動運転車両の提供・管理サービス、自動運転導入・運用支援サービス、遠隔監視モニタリングシステム提供サービス、その他自動運転に関連する周辺サービスを手掛ける。
2026年5月には、NTT武蔵野研究開発センタ近辺に自動運転実証フィールド「Co-Creation Hub」を稼働し、自動運転技術や運行実証をNTTグループが通年で実施すると発表している。運行車両は、トヨタのe-Paletteとシエナをベースに改造した車両を予定している。具体名は出されていないが、協業するMay Mobilityの技術が活用されている可能性がありそうだ。
同年7月には、バス・タクシーのレベル4を実現する遠隔運行支援ソリューション「NTTモビリティ 運行アシスト」の提供を開始したと発表した。少人数で複数車両を運行管理するN対M型運用による遠隔運行を実現するほか、通信安定化技術などを活用した高い安定性・信頼性を備えた遠隔運行、国内法制度を踏まえた運行管理体制の確立を支援する。
同年9月には、NTTドコモビジネス、NTTドコモとともに、愛知県からの受託事業として名古屋市都心部で自動運転とオンデマンド配車システムを組み合わせた実証を開始する予定としている。
KDDIもKDDIスマートモビリティ設立
KDDIは、2018年にティアフォーと業務資本提携を交わし、5Gを活用した遠隔制御型自動運転システムの実証や公道走行実証などを通じ、自動運転社会の実現に向けた技術開発と環境整備を進めてきた。
2022年には、WILLERとの合弁Community Mobilityが事業開始し、AIオンデマンド交通「mobi」などを手掛けてきた。
同社は2026年にKDDIが全株式を取得し、KDDIスマートモビリティとして新たなスタートを切った。mobiに加え、自動運転を含む次世代モビリティサービスの企画・開発・運営を担う。
自動運転車両の遠隔監視に必要不可欠な自社の通信基盤とインフラオペレーション力と、Community Mobilityで培ったモビリティの運営知見を融合し、「mobi」の自動運転化をも目指す方針としている。
同年8月には、「堺市自動運転タクシー実装コンソーシアム」に参画し、newmoなどとともに自動運転タクシー事業化を進めていく。
SBGは多方面から自動運転分野に関与
多くの顔を持つソフトバンクグループは、ソフトバンクによる通信関連実証のほか、自動運転車の運行管理事業に向け2016年にSBドライブ(現BOLDLY)を立ち上げるなど、いち早くビジネス化を推し進めてきた。
BOLDLYは、旧NavyaのARMAをはじめとする海外の先行モデルを積極的に導入し、運行管理プラットフォーム「Dispatcher」を武器に国内の数々の実証を手掛けてきた。
ソフトバンクグループとしては、英Wayveや米Nuroなどへの投資で存在感を発揮している。トヨタともMONET Technologiesを通じて結びついており、戦略の自由度が非常に高い。
3社(グループ)とも、通信領域を超えて自動運転市場に注力していることがよくわかる。
■【まとめ】楽天経済圏×モビリティサービスでビジネス拡大?
後進の楽天は、これら3巨頭に割って入らねばならないのだ。その困難さは筆舌に尽くし難いところだが、手をこまねいていてはみすみす巨大市場を逃すこととなる。
前進するからには勝算が必要となるが、そのカギはやはり楽天経済圏にあるように思える。通信事業に関わらず、各種モビリティサービスとグループのサービスを結びつけることは非常に有用で、ビジネス拡大につながる大きなポテンシャルを秘めている。
通信事業を足掛かりに、自動運転分野にどのように食い込んでいくのか。楽天グループの動向に改めて注目したい。
【参考】関連記事としては「日本ではいつから完全自動運転になる?レベル5の実現時期は?」も参照。













