イーロン「自動運転車で渋滞悪化する」

自動運転と交通渋滞の関係



テスラのイーロン・マスクCEO=出典:Flickr / Public Domain

電気自動車を開発するTesla(テスラ)のイーロン・マスクCEOが、自動運転車の普及によって交通渋滞がかえって悪化する可能性があるとの見解を自身のX(旧Twitter)で示し、大きな話題を呼んでいる。

マスク氏は、自動運転の利用によって走行距離が大幅に増えたという投稿を引用し、「自分で運転する苦痛が存在しなくなれば、自動運転車によって交通渋滞はもっとひどくなる」とコメントした。


一見すると意外な発言にも思えるが、「自動運転車は本当に渋滞を減らすのか、それとも増やすのか」という議論は、交通工学や都市計画の分野で以前から続いているテーマだ。


実際、自動運転が普及した未来については、渋滞緩和と渋滞悪化の双方を予測する研究が数多く存在する。

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■移動需要を膨らませる「誘発需要」

今回の議論のきっかけとなったのは、投資会社mach33(マッハ33)の創業者アーロン・バーネット氏の「ロボットカーが移動の大部分を担うようになり、年間の走行距離が2倍になった」という投稿だ。

テクノロジー評論家のロバート・スコーブル氏も、以前なら面倒で避けていた遠距離移動を、自動運転なら頻繁に行うようになったと明かしている。

マスク氏が提起した渋滞の問題は、「誘発需要(Induced Demand)」に関連する。


誘発需要のグラフ。供給曲線がS1からS2にシフトすると、均衡価格はP1からP2に低下し、需要量はQ1からQ2に増加する=出典:Wikipedia

誘発需要とは交通においては、道路の拡幅や利便性の向上によって移動のハードルが下がり、結果として利用者が増えて新たな交通量が生まれる現象を指す。

高速道路を広げても、数年後には利用者が増えて再び渋滞が発生するケースと同じ構造だ。「運転の負担がない」という快適さそのものが移動需要を刺激し、遠距離でも自動運転車で移動するようになり、道路上の車両を増やすというのがマスク氏の見解だ。

■技術による渋滞緩和も?

もちろん、すべての研究が渋滞悪化を予測しているわけではない。

自動運転車は人間よりも正確な車間距離を維持でき、急ブレーキや急加速を減らせる。そのため、交通の乱れから生じる「自然渋滞」を抑制できる可能性が指摘されている。一部の車両が自動運転になるだけでも、交通の流れ全体を安定させられるというシミュレーション結果も存在する。

さらに、AIによる最適な経路選択や、将来的に車同士が通信して協調走行するようになれば、信号待ちや合流が効率化され、道路全体の処理能力そのものが向上するという期待も大きい。

■普及の過渡期と空車走行という課題

一方で、近年の研究では普及の「過渡期」におけるリスクが強調されている。

自動運転車と人間が手動で運転する車が混在する段階では、運転特性の違いから交通の流れがかえって不安定になる可能性がある。

また、ロボタクシーのような自動運転サービスが普及した際、「空車走行」が増加することも問題だ。乗客を送迎するために車内に誰も乗っていない状態で移動する車両が増えれば、駐車場需要は減るものの、道路上の交通量そのものは増加する。

■「両立」に向けて…

マスク氏の発言が示したように、「運転しなくてよい」という利便性そのものが新たな移動を生み出し、結果として渋滞を招く可能性は否定できない。

現在の研究において、自動運転車の普及によって「渋滞が減る」あるいは「悪化する」と一概に結論づけることはできない。普及率や交通管理システムの性能、ロボタクシーの運用方法、そして都市全体の設計によって結果は大きく左右される。

今後、自動運転技術の実用化が進むにつれ、「便利な移動」と「渋滞の抑制」 という利便性の向上や交通量の抑制をどのように両立させるかが、各国の政策における重要な課題となっていきそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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