サウジアラビアで「空飛ぶタクシー」の試験飛行が成功したことが、このほど発表された。
サウジアラビアで開発が進められている大規模都市計画「NEOM」と、空飛ぶクルマを開発する独Volocopter(ボロコプター)、サウジアラビア民間航空総局(GACA)が協力して行った。
各国がエアモビリティ開発を進めている中、サウジアラビアで試験飛行が成功した背景には、同国の王室の積極的な後押しがあった。それにより、サウジアラビアでのeVTOLの特別な飛行許可を得て、同国初の試験飛行を行うに至ったという。
【参考】関連記事としては「eVTOLとは?「空飛ぶクルマ」の類型の一つ、開発盛んに」も参照。
■初飛行成功は独Volocopter
NEOM、Volocopter、GACAの3者は、今回の試験飛行のために18カ月にわたる協力関係を築いてきたという。
NEOMは現在サウジアラビア北西部で進められている大規模都市計画のことだ。最新技術を積極的に取り入れた超未来的な都市を目指し建設される予定で、国を挙げての一大プロジェクトとなっている。このエリアでの移動手段として、空飛ぶタクシーの導入が検討されている。
今回の試験飛行は、NEOMの1億7,500万ユーロ(約275億円)の投資と、Volocopterとの合弁事業に基づき実現した。NEOMは将来のモビリティ・ソリューションのリーダーとして位置づけられているという。
試験飛行では、現地の気候や環境条件下でのVolocopter機の飛行性能と、現地の無人航空機システム交通管理(UTM)システムへの統合テストに重点が置かれたという。なおエアタクシーとしてeVTOLが採用されたのは、ヘリコプターより静かで適応しやすく、運用コストが低いこと、地上でのインフラ設置面積が小さいこと、運用上の制約が少ないといった理由からのようだ。
■NEOMと民間航空総局の両トップが自信示す
試験飛行成功に関し、NEOMのCEO(最高経営責任者)であるNadhmi Al-Nasr氏は「今回の成功は、NEOMの革新的で持続可能な複合交通システムの構築に向けてのマイルストーンとなった」とし、「NEOMが世界で最も差し迫った課題に対する解決策の世界的なアクセラレーターでありインキュベーターであることを具体的に示すものだ」とコメントしている。ここでいう「課題」とは、都市の居住性や連携性の向上や、CO2排出量を削減することを指す。
またGACAの総裁であるAbdulaziz A. Al-Duailej閣下は、「より多くの雇用を創出する新産業を生み出すという航空セクターの戦略達成に向けた着実な一歩となった」と語っている。
■Volocopter、中東における地位がさらに向上
2011年設立のVolocopterは、世界初でいち早くeVTOLの有人飛行を成功させたことで知られ、2019年に最新のエアタクシーモデルとなる第4世代のeVTOL「VoloCity」のデザインを発表している。2024年にVoloCityの型式証明を取得し、将来的に商業運航を行う予定だ。
また同社は最近、ドイツの創業地である独ブルッフザールにある施設でVoloCityの連続生産を開始し、年間50機以上の納入能力を持つことを発表した。
なお同社は2017年にドバイの道路交通局(RTA)と、自律型エアタクシーのテストに向け5年間取り組んでいく契約を交わしている。今回のサウジアラビアでの試験飛行成功で、中東での同社の地位はさらに高まったと言えそうだ。
▼Volocopter公式サイト
https://www.volocopter.com/
【参考】関連記事としては「ドイツ企業VolocopterのEVエアタクシー、万博で日本の空を飛ぶ!?」も参照。